【社説・12.20】:降下訓練嘉手納常態化 日米合意違反 黙認するな
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説・12.20】:降下訓練嘉手納常態化 日米合意違反 黙認するな
在沖米軍が18日、嘉手納基地でパラシュート降下訓練を実施した。県や嘉手納飛行場に関する三市町連絡協議会(三連協)の再三にわたる中止要請を無視して訓練を強行した米軍に強く抗議する。
伊江島補助飛行場の滑走路が補修中という理由で、米軍は昨年12月から嘉手納基地でパラシュート降下訓練を実施している。今回で通算10回目だ。来年11月までかかるとされる伊江島補助飛行場の改修完了まで、嘉手納基地での訓練を続ける可能性が高い。
はっきりさせておくが、嘉手納基地でのパラシュート降下訓練は、訓練を伊江島へ移転するとした1996年の日米特別行動委員会(SACO)合意に反している。米空軍第18航空団は「訓練は作戦即応性の確保のために必要で、嘉手納基地の降下帯使用が必要と判断された。訓練の際には安全が最優先される」との声明を発表したが、日米間の約束を反故(ほご)にし、県民の安全を軽視した対応と言わざるを得ない。
訓練の根拠は、日米両政府が2007年に交わした「嘉手納基地を例外的な場合に限って使用」との追加合意だ。この「例外」が常態化し、日本政府もお墨付きを与えてしまっている。
中谷元・防衛相は今年10月の会見で「基地負担の実情を踏まえると伊江島の滑走路が早期に使用再開されるよう取り組むことは重要だ。改修工事の早期完了に向け可能な限り支援・協力する」と述べ、早期改修に言及するだけで訓練中止には触れなかった。
なし崩し的に訓練を強行する米軍の横柄さはもちろん、それを許す日本政府も許されない。日米合意違反を黙認してはならない。
パラシュート降下訓練の危険性は米側も認識している。米会計検査院(GAO)はパラシュート訓練を「高リスク訓練分野」の一つに位置づける報告書を発表した。
GAOが11月にまとめた報告書によると、12~22年度に発生した米4軍の各特殊作戦部隊が関わった事故3624件のうち、パラシュート訓練関連が972件あった。訓練中の死亡者48人のうち、3分の1にあたる16人をパラシュート訓練が占めている。
特殊作戦部隊に関連して米国外で発生した事故は、パラシュート訓練だけには限らないが、発生国別では22カ国のうち日本が最も多く、約23%に上る。
米兵だけでなく、民間人が巻き込まれる事故が県内で発生している。1965年6月、米軍が読谷村の読谷補助飛行場で訓練実施中に、投下されたトレーラーで少女が圧死する事件が発生している。人命に関わる危険な訓練が民間地域のすぐ近くで続いていること自体異常なのだ。
米軍の度を越した横暴を放置してはならない。日本政府は、国民の生命と財産の安全を優先し、強い姿勢で訓練中止を求めるべきだ。
元稿:琉球新報社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月20日 04:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます