【主張②・12.19】:仮装身分捜査 闇バイト根絶の切り札に
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【主張②・12.19】:仮装身分捜査 闇バイト根絶の切り札に
闇バイトが絡む強盗などの事件への緊急対策が、犯罪対策閣僚会議で決定された。
バイト募集者の氏名や業務内容などの記載がない求人を違法と明確化し、これを掲載するSNS事業者らに削除の徹底を求めた。アカウント開設時の本人確認も厳格化させる。
目玉は「仮装身分捜査」の導入だ。架空の身分証を持つ捜査員が闇バイトに応募し、潜入捜査する新手法だ。通信アプリの匿名性に隠れる犯罪集団を摘発し壊滅すべく、期待したい。
犯罪対策閣僚会議で発言する石破首相
闇バイト犯罪は、メンバーが固定しない「匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)」と呼ばれる集団が起こしている。犯罪を企てる上層部がSNSや求人サイトで実行犯を募り、強盗や特殊詐欺などを指示、強要する。メンバーは匿名性の高い通信アプリで結び付き、事件ごと人員が入れ替えられるため、組織や実態の解明が難しい。
実行犯は逮捕できても、指示犯ら上位者に捜査が及んでいない。実行犯は上が誰かを知らず、連絡手段の通信アプリは解析が困難だからだ。この現状を打開するには潜入捜査が有効とみられ、警察は仮装身分捜査の導入を訴えていた。
架空身分証の使用は形式上違法だが、捜査のための正当行為であるという法解釈が政府としてほぼ合意され、来年には本格実施されることになった。
この手法は効果が見込まれる。犯罪組織が疑心を抱き、瓦解(がかい)する可能性も考えられる。
一方で課題も残る。第一に、捜査員の安全確保だ。潜入中に捜査員であることが発覚し、本人や家族に危険が及ぶ事態は回避しなければならない。
摘発タイミングの見極めも課題だ。捜査員は実行犯になりすまし組織に近づくが、犯行より早い時点で摘発すると、罪は軽くなりがちだ。既遂のぎりぎりまで待てば、被害者の危険が強まる。その判断とノウハウの練度を上げる必要がある。
日本では初めての捜査手法である。政府は国民に説明し、理解を得る努力も必要だ。法的な安定性を確保するため、法制化の検討も今後の課題だろう。
その上でこの手法をフルに生かしたい。捜査の有用な武器だ。末端だけでなく、首謀者を検挙してほしい。警察が一致して組織に立ち向かい、根絶することを国民が期待している。
元稿:産経新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【主張】 2024年12月19日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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