【社説①】:半導体戦略 海外企業の協力で産業再興を
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:半導体戦略 海外企業の協力で産業再興を
経済安全保障の観点から、日本で半導体関連の投資に乗り出す海外企業が増えている。この流れを、日本の半導体産業の再興につなげたい。
岸田首相は、米欧や韓国、台湾から半導体企業や研究機関7社の首脳らを招き、日本への積極的な投資や日本企業との連携を要請した。世界的な半導体企業の幹部が一堂に会するのは異例だ。
日本の半導体関連産業への関心の高まりを示すものと言える。
既に、半導体受託製造の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は熊本県で工場を建設している。スマホなどに使われる演算処理用のロジック半導体という先端品の工場だ。今回、TSMCは追加投資の可能性に言及した。
米マイクロン・テクノロジーは日本で新たに最大5000億円を投じると表明した。広島県の工場で、記憶媒体となる次世代メモリーの開発や量産に取り組む。
日本では、国が主導しトヨタ自動車やNTTなどが出資した新会社「ラピダス」が、回路の線幅が微細な最先端半導体の製造を目指している。今回、幹部が来日した米IBMなどは、ラピダスへの協力の拡大を約束した。
韓国のサムスン電子も日本で研究開発拠点の開設を検討する。
海外企業が日本への投資に関心を寄せるのは、半導体の製造装置や部材で優れた技術を有する企業が多いことが一因だろう。
製造装置は東京エレクトロン、部材ではシリコンウェハー大手のSUMCOなどが、世界的に高いシェア(占有率)を持つ。そうした強みを生かし、海外の有力企業と連携を強めることが大切だ。
米中の技術覇権争いなどで、重要物資のサプライチェーン(供給網)強化が求められている。
中でも半導体は、軍需向けも含めて工業製品に欠かせない物資だが、生産能力は台湾や韓国などに集中し、先端半導体に限れば台湾が過半を占めている。中国に生産拠点を持つ企業も多い。
地政学的リスクの高まりで、各社が供給網の分散化を模索し始めた可能性がある。友好関係にある国・地域が協力し、安定的に調達できる体制を作る必要がある。
かつて、日本の半導体は世界で5割のシェアを誇ったが、海外との競争に敗れ、今では先端半導体を製造できる拠点を持たない。
国は、半導体産業の支援のため2兆円の予算を確保した。外資の力を借りて産業の基盤を立て直すとともに、半導体関連の人材育成にも注力しなければならない。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年05月26日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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