【社説②】:トルコ大統領 再選で真価問われる仲介外交
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:トルコ大統領 再選で真価問われる仲介外交
ロシアとウクライナ双方の首脳から祝意が寄せられたことは、トルコのエルドアン大統領の独特の立ち位置を象徴している。強みを生かし、和平実現で成果を上げてほしい。
トルコ大統領選の決選投票で、現職のエルドアン氏が野党統一候補を退け、再選を決めた。首相時代を含めて計20年に及ぶ長期政権がさらに5年続くことになる。
今後の焦点は、ウクライナ情勢を巡り、エルドアン氏がどのような外交政策をとるかだ。
トルコは、米欧同盟の北大西洋条約機構(NATO)に加盟している。その意味では「西側」の一員であり、ウクライナにも無人機を供与して支援してきた。
一方で、エルドアン氏はロシアや中国との良好な関係を誇示している。ロシアからはエネルギーの輸入に加え、米国の反対を押し切って防空システムまで導入した。ウクライナ侵略に関する対露制裁にも加わっていない。
米欧と中露の間でしたたかに立ち回り、自国の存在感を高めるのがエルドアン外交の特質だ。
ロシアの妨害によって、ウクライナ産穀物の黒海経由の輸出が途絶えていたのを、国連と共に両国を仲介して再開させたのは、その最大の成果である。
エルドアン氏は今回の選挙戦でも、仲介者としてのトルコの役割を強調し、和平交渉に乗り出す意欲を示していた。そうであるなら、ロシア軍の攻撃停止と撤収が和平の前提であることをプーチン露大統領に説いてもらいたい。
トルコと米欧の今後の関係を占ううえで、スウェーデンのNATO加盟問題は試金石となる。
スウェーデンはロシアの脅威増大を受けてNATOに加盟申請したが、トルコは承認せず、加盟は先送りにされてきた。英仏独などすでに承認した国との温度差は大きい。エルドアン氏はNATOの結束維持に気を配るべきだ。
エルドアン氏はこれまでの選挙では大差で勝利していたが、今回は接戦に持ち込まれた。強権的な統治や言論弾圧への批判は強く、野党候補の善戦は国内の分断ぶりを浮き彫りにした。
急激な物価高や通貨安、2月の大地震からの復興など、国内の課題は山積している。エルドアン氏は、反対派の批判にも耳を傾け、国民融和に努めねばならない。
トルコは伝統的な親日国だ。エルドアン氏が中露のような権威主義に傾斜せず、米欧との協調を保つよう、日本も積極的に働きかける必要がある。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年06月01日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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