【社説①】:北ミサイル失敗 再発射阻止へ国際圧力強めよ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:北ミサイル失敗 再発射阻止へ国際圧力強めよ
北朝鮮が、日米韓の自制要求を無視し、「軍事偵察衛星の打ち上げ」と称して、事実上の弾道ミサイル発射を強行した。国際法違反の暴挙を断じて許してはならない。
ミサイルは、北朝鮮西岸から南方向に向けて発射され、韓国西方の黄海に落下した。
北朝鮮の発表によると、軍事偵察衛星を載せた「新型衛星運搬ロケット」が、1段目の分離後、2段目のエンジンに異常が生じ、推進力を失って墜落したという。北朝鮮当局は失敗を認めた。
北朝鮮は、5月31日から6月11日の間に人工衛星を打ち上げると通告していた。日本政府は中止を要求したが、通告期間の初日に強行したことになる。
北朝鮮による弾道ミサイル技術を使った打ち上げは国連安全保障理事会の決議で禁じられている。ロケットと弾道ミサイルの技術は基本的に同じであり、決議違反は明白だ。「衛星打ち上げ」の主張で正当化することはできない。
今回の発射は、北朝鮮から米国本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の技術開発と密接に関係している。ロケットのエンジン、燃料の性能向上や、宇宙軌道への衛星の投入技術は、ICBMにも応用できるからだ。
北朝鮮が2016年までに計5回、「衛星打ち上げ」と称して発射した際は、民生目的を掲げていた。今回は「米国などの軍事行動をリアルタイムで追跡する」と、軍事目的を明言している。
ICBMでも、軍事偵察衛星でも、北朝鮮の行動が成功すれば、日米韓にとって大きな脅威だ。
北朝鮮は、早い時期に再度、衛星打ち上げを実施するとしている。阻止するために、国際圧力を強化する必要がある。
安保理は、今回の発射を非難し、対北朝鮮制裁の強化へ動かねばならない。安保理常任理事国の中国とロシアがこれまで追加制裁を阻んできたことが、北朝鮮を増長させているのではないか。中露は認識を改めるべきだ。
政府は今回の発射の直後、沖縄県を対象に、全国瞬時警報システム「Jアラート」を発令した。過去の発射時のような大きな混乱はなく、おおむね順調に機能したことは評価できる。
北朝鮮ミサイルのデータを迅速かつ的確に把握し、ミサイル防衛や国民への情報発信の能力を高めるため、日本は米国を通じて韓国と情報を即時共有する方針だ。早期に運用を開始できるよう、協議を加速させてもらいたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年06月01日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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