【社説②】:適性評価制度 経済情報の安全をどう守るか
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説②】:適性評価制度 経済情報の安全をどう守るか
日本の安全保障に関する先端技術などの情報が外国に窃取されたり、流出したりするような事態は防がねばならない。
政府は経済安全保障を強化する観点から、公務員や企業の社員を対象に、機密情報を扱う資格として「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度を設ける方針だ。その創設に向けた法案を近く国会に提出する。
欧米では、サイバーやAI(人工知能)など民間の先端技術を軍事でも活用している。各国は、重要な情報に接することのできる政府職員や民間人を特定し、機微な情報の 漏洩 を防いでいる。
日本は2013年に特定秘密保護法を制定し、防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野については機密を保護したが、経済情報を保全する制度はなかった。
新法は、欧米と同様の制度を整えて対象者に守秘義務を課す。実現すれば、日本企業の信頼度は高まり、関係国との情報共有も円滑に進むだろう。
政府は機微な情報を守るため、適性評価制度で公務員や民間人の犯罪歴や経済状況などを調べ、問題がない人に限って資格を与える予定だ。身辺調査をする際には本人の同意を義務付ける。
機微な情報には重要度の高い順に「機密」「極秘」「秘」がある。機密や極秘にあたる情報を扱えるのは、特定秘密保護法で資格が認められた公務員や一部の民間人だ。一方、秘の情報を扱う新法では大半が民間人になるという。
情報漏洩をした人への罰則が、特定秘密保護法の場合は「懲役10年以下」であるのに対し、新法の場合は「懲役5年以下」などと差がついているのは、情報の重要度を反映したものと言えよう。
一方で、新法の策定にあたっては留意すべき点も多い。
政府の身辺調査に対しては、プライバシーが侵害されるのではないか、と不安に感じる人も多いだろう。調査の結果、情報を扱う資格が認められなかった人が職場に居づらくなる恐れもある。
そうした事態に陥らぬよう政府は新法で、不当な扱いを受けた従業員が異議申し立てを行える措置を設ける予定だ。単に法律に明記するだけでなく、企業側の理解を深める努力を続けるべきだ。
また、資格を得た民間人が必要以上に 萎 縮 し、機微にあたらない情報の取材に応じなくなる恐れがある。政府は新法に報道や取材の自由に関する規定を明記する方針だが、国民の知る権利を阻害しないよう十分な配慮が必要だ。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月07日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます