【社説①】:災害と心のケア 不調のサイン見逃さぬように
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:災害と心のケア 不調のサイン見逃さぬように
大災害を体験した被災者には、心の不調が表れやすい。能登半島地震の発生から1か月が過ぎ、疲労がたまってくる時期でもある。心のケアに留意した支援が必要だ。
能登半島地震では、240人が亡くなり、住宅の倒壊や損壊も5万棟を超えるなど、甚大な被害があった。被災地外への2次避難を含め、今も1万人以上の被災者が避難生活を送っている。
地震や津波で恐ろしい目に遭ったり、家族を亡くしたりした人の受けた衝撃は大きい。今後の生活への不安も精神的な負担になる。プライバシーが守られにくい避難生活のストレスもあるだろう。
被災者が一日も早く安心して暮らせるよう、仮設住宅の建設など環境の改善を急いでほしい。
被災地には、災害派遣精神医療チーム(DPAT)の精神科医ら、心のケアの専門家も駆けつけている。国や自治体は、医療団体やボランティアらと連携し、避難生活の長期化を見据えた息の長い支援体制を整えることが重要だ。
今の時期は、被災直後の混乱が落ち着き始めた一方、被害の深刻さを一段と強く実感し、気分が落ち込みがちになると言われる。
心の不調が長引くと、恐怖体験を突然思い出すなどの症状がある「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」や、うつ病を発症する人もいる。不調のサインを見逃さないようにしたい。
厚生労働省と石川県は、被災者や支援者向けに、心のケアに関する情報をウェブサイトで発信している。電話相談窓口も開設した。こうした対策を十分に周知し、活用を促してもらいたい。
被災した子どもたちの心のケアも欠かせない。被害の大きかった能登半島北部の小学校がアンケートを実施したところ、注意が必要な児童が1割ほどいたという。
学校現場には、熊本県や兵庫県といった大災害を経験した地域の教員らが派遣され、ケアに当たっている。能登の教員らにもノウハウを伝え、継続的に子どもの心の健康を守る必要がある。
住み慣れた土地を離れ、2次避難した高齢者もいる。避難先で孤立しないよう、支援する自治体職員らがこまめに連絡をとることが重要になる。避難者同士の交流の場を設けることも大事だ。
災害時の心のケアの重要性は、阪神大震災で心の不調を訴える被災者が相次いだことから認識されるようになった。体と心の両面から被災者を支えるという視点を忘れないようにしたい。
元稿:讀賣新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年02月07日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます