《余録・01.11》:大勢の人が雑然と部屋などで寝る様子は…
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《余録・01.11》:大勢の人が雑然と部屋などで寝る様子は…
大勢の人が雑然と部屋などで寝る様子は「雑魚寝(ざこね)」と呼ばれる。かつては近畿地方の遊郭などで使われた言葉という。今や災害時の避難所生活を表す言葉として定着してしまった。昨年1月に起きた能登半島地震の際も被災した人たちが施設の冷たい床の上に段ボールを敷き、仕切りのない狭いスペースでの寝泊まりや暮らしを強いられた
▲災害で繰り返される避難所の劣悪な環境を改善しようと政府が遅ればせながら、自治体向け指針を改定した。「スフィア基準」という国際指標を反映した内容だ。避難所や難民キャンプで「1人あたりの居住面積は最低3・5平方メートル」「トイレは20人に1基」などの最低ラインを定めた指標である
▲避難所については石破茂首相が年末の報道番組で「関東大震災の時とほとんど変わらない」「『一番つらい人たちに一番厚い手当てを』という考えがずっと無かった」と語っていた
▲行政の長がそこまで認識しているのなら、手をこまねいてはならない。小紙の調査によると、市町村の避難所運営を支援する班の設置を定めているのは14都道県どまりだ。体制構築は急を要する
▲1995年の阪神大震災の際、避難所での雑魚寝やトイレ不足が批判を呼んだ。一方でボランティアの力と役割が注目される契機ともなった
▲能登の避難所の様子や、歯車がうまくかみ合わないボランティアの受け入れ状況を見ると、経過した時の長さに比べて歩みの遅さにもどかしさを感じてしまう。雑魚寝との決別を急ぎたい。
元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【余録】 2025年01月11日 02:02:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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