《社説①・12.17》:相次ぐ外資開発 ふるさとの青写真を皆で
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:《社説①・12.17》:相次ぐ外資開発 ふるさとの青写真を皆で
海外資本などによる高級リゾート開発の動きが、とくに県北部で目立っている。
新潟県境の斑尾高原や野尻湖、北アルプス山麓の白馬村周辺で先行し、野沢温泉村でも富裕層向けのホテル計画が浮上した。
旺盛なインバウンド(訪日客)需要を背景に、いずれも上質な雪や温泉といった自然環境を高く売り込もうとしている。
大きな投資やさらなる誘客は地域を潤し、税収を上げる可能性がある。ただし外部資本任せにするだけでは、住民生活が圧迫され、その土地らしい環境や文化が損なわれかねない。
経済活動と地域とをつなぐ場づくりが急務だといえる。
歴史的な円安もあり、インバウンドの風は吹き続けている。今年の訪日客は10月までで推計3千万人を超え、年間の過去最多だった2019年を更新する見通しだ。消費額も9月までで5兆8千億円を超え、年間最高だった昨年の額をすでに上回った。
野沢温泉村での計画は、当初の説明では、東京の不動産投資会社が海外投資家らに80億円規模の出資を募り、温泉街の一角に9階建て、高さ約36メートルの宿泊棟などを建てるとしていた。
90年代までのスキーブーム後の低迷をインバウンド誘致で乗り切ってきた地元には、新たな客層に期待する声もある。
一方、建物の高さが農村風景の景観や温泉街の風情を壊さないかと心配する声も強い。高さ18メートル以上の建物を建てる際に村との事前協議を求める条例はあるが、強制力はない。
すでに外国人らによる飲食店や宿泊施設への投資が活発で、物件が埋まったり、不動産価格が上がったりして住宅を求めても手が届かない移住希望者らも出ていた。本年度、村は住宅建設に乗り出した。地域の変化が急だ。
村には、江戸時代から続く地縁組織が山林や用水、温泉源の管理などを担ってきた自治の仕組みがある。それも、域外からの新たな動きに十分対応しきれなくなってきたとの指摘もある。
雪で売る観光自体、地球温暖化で先行きは見通せない。インバウンドの風がもしやんだらどうなるのか。長期的な視点を持ったまちづくりを事業者、地域の幅広い当事者で考えたい。
不動産投資会社は、住民理解のないまま進めるのは不本意として建物の高さを抑える方向で検討中という。対話の場づくりを後押しする行政の役目もまた大きい。
元稿:信濃毎日新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2024年12月17日 09:31:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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