【社説①】:ジャニーズ会見 被害者本位の再出発に 10.03
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:ジャニーズ会見 被害者本位の再出発に 10.03
ジャニーズ事務所が2日の記者会見で、故ジャニー喜多川元社長による大規模な性加害を巡り、被害補償窓口に478人から連絡があり、このうち補償を求める被害者が325人に上ることを明らかにした。
驚くべき多さだ。喜多川氏の自宅に少年らを宿泊させる育成方法が日常化していたため、ある程度は予想されたが、性加害のすさまじさがあらためて示された。被害者の救済・補償を最優先に「被害者本位」の再出発とすべきだ。
今後は裁判官経験のある弁護士による被害者救済委員会が窓口となり11月から補償に入る。被害認定に当たり厳格な証拠を求めるのではなく、被害者の申告を尊重して柔軟に認めるよう望みたい。
深刻な心的外傷(トラウマ)を訴える被害者もいる。名乗り出るか否か迷っている被害者もいるだろう。補償を急ぐ一方で、被害の申告には期限を設けず、息長く取り組む必要がある。
現事務所は「スマイルアップ」と改名し、被害者への補償に専念する。喜多川氏の姪(めい)藤島ジュリー景子前社長は100%株主として残るが、補償終了後に廃業する。
一方、喜多川氏側と決別した新会社を立ち上げ、タレントのマネジメントやプロデュースなど芸能業務を担う。社長にタレント東山紀之氏、副社長に同井ノ原快彦氏が就き、出資は役員や従業員が行う。藤島氏は、経営にも資本にも関与しないという。
会見で読み上げられた文書で、藤島氏は「喜多川氏の痕跡をこの世から消し去る」と述べた。
事務所を引き継ぐに当たり、事業承継税制の適用を受けて莫大(ばくだい)な相続税を免除されているが、一転して納税する意思も示した。藤島氏と新会社が、言葉通りに喜多川氏と完全に決別できるのか見定めたい。
テレビ局やスポンサー企業に同事務所のタレント起用を見合わせる動きが出始めている。人権重視の立場からはやむを得まい。
年末のNHK「紅白歌合戦」への出演も白紙という。同事務所のタレントが何組も出演すること自体が不自然ではなかったか。これを機に、番組の在り方自体を見直す必要がある。
メディアやスポンサー企業は今後、補償の進展や被害者の心情を見極めつつ、タレント起用の在り方を考えるべきである。
元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2023年10月03日 07:03:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。
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