路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

 路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

【社説①】:週のはじめに考える 「ぐうたらの日」だけど

2024-06-04 07:34:50 | 【国家安全保障戦略・国家防衛戦略・防衛力整備計画・アメリカの戦略文書との整合性】

【社説①】:週のはじめに考える 「ぐうたらの日」だけど

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:週のはじめに考える 「ぐうたらの日」だけど

 元日の能登半島地震で始まった今年も、もはや6月です。国民の祝日が一日もないくせに夏休みはまだ遠く、子どもは学校、大人は仕事で粛々と過ぎる月ですね。

 この6月を「いちばんきらい」と嘆く小学生がいます。名作漫画「ドラえもん」の野比のび太さん。当然、それを聞いたドラえもんが秘密の道具を出します。
 
 「日本標準カレンダー」です。一年のどの日も祝日に変えられる優れもの。そこでのび太さんは、6月2日を新しい祝日「ぐうたら感謝の日」と定めました。決して働いてはならない日です。これは「ドラえもん」14巻(てんとう虫コミックス)にあるお話です。
 
 だから今日はこの欄もぐうたら-とは参りません。読者とともに考えたいことがあるからです。

 ◆自衛隊誕生と国会決議

 1954年6月2日。参議院で「防衛2法」が可決・成立して、陸海空の自衛隊が誕生することになりました。第2次世界大戦での大敗からまだ9年で、再軍備には強い反対の意見が上がりますが、当時の吉田茂首相ら政府・与党はそれを押し切り、70年後の現在は世界で有数の軍事力を持つに至る自衛隊を発足させたのです。
 
 ですが。参議院では防衛2法の可決に続き「自衛隊の海外出動を為(な)さざることに関する決議」が、与党も含めてほぼ全会一致で可決されました。こんな内容です。
 
 本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈(しれつ)なる平和愛好精神に照(てら)し、海外出動はこれを行わないことを、茲(ここ)に更(あらた)めて確認する。
 
 当時の国会議員は戦争の惨禍を身をもって知る人たちで、戦前のように外国を侵略する軍隊を持つことは認めませんでした。
 決議の提案者の中に、鶴見祐輔議員がいます=写真。社会学者の鶴見和子さん、哲学者の鶴見俊輔さん(いずれも故人)の父親で、防衛2法には賛成の立場でした。けれども、決議案の趣旨の説明で鶴見議員はこう訴えます。
 
 「我が国が再び、戦前のごとき武装国家となる危険すら全然ないとは申せない(中略)故に自衛隊出発の初めに当(あた)り、その内容と使途を慎重に検討して、我々が過去において犯したるごとき過ちを繰返(くりかえ)さないようにすることは国民に対し、我々の担う厳粛なる義務であると思うのであります」
 
 軍備の拡大を懸念する一方で、国民に対して国会議員が負うべき重い責務の自覚を示す言葉です。今の議員にも聞かせたいですが、決議とは裏腹に、自衛隊はやがて海外にも派遣され始めます。
 
 さらには戦争を知らない世代の政治家が、軍拡の歯止めを次々になくします。最たる例が、武器の輸出ルールの大転換です。
 
 2014年。安倍晋三内閣は、それまでの「武器輸出三原則」を「防衛装備移転三原則」と改め、輸出を認めました。「武器→防衛装備」「輸出→移転」という言い換えは、戦時中の「撤退→転進」というごまかしみたいです。
 
 そして今年。岸田文雄内閣は、殺傷能力のある武器の輸出までも容認しました。この措置に賛成の人々からは「ウクライナの戦争を見ろ、現実を見ろ」「軍需産業を育てなければ自国を守れないのが現実だ」という声が聞かれます。

 ◆私たちが見るべき現実

 しかし、21世紀の世界に生きる私たちが、ウクライナでの戦争に見るべき「現実」の一つは「戦時には原発さえ攻撃される」という冷徹な事実ではないでしょうか。
 
 もし将来、日本が他国と戦争を始め、相手国の放ったミサイルが日本の各地の原発に落ちたら…。仮に戦いに勝てても、狭い国土は収拾不能な惨状に陥り「国勝って山河なし」となりかねません。
 
 さて、先に紹介した鶴見議員は当時、こんなことも訴えました。「原爆と水爆との時代において、戦争は時代錯誤である」と。この一言を伝えたく、今日6月2日にこの記事を書いたのです。
 
 現代は世界各国が「気候変動」という共通の大敵を抱えるのに、まるで生産性のない戦争などしている場合でしょうか。戦闘により地球の温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を大量に排出したり大気や土を汚染したりするのは、まさに時代錯誤です。人類と地球全体への犯罪でしょう。
 
 一分、一秒でも早くロシアに、またイスラエルにも軍をひかせ、さらには、あらゆる「次の諍(いさか)いの火種」を消す-そのための知恵や行動が必要になります。
 
 のび太さんが設けた休日を無にするようですが、戦乱をなくす、そんな理想を実現させるために、私たちは決して「ぐうたら」などしてはいられないようです。

 元稿:東京新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2024年06月02日  06:51:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。


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