以下のNHKニュースを視ていて面白いことに気づきました。いずれも12月30日と1月1日の記事です。しかも内容も両国の首脳の動向・言動や安全保障や支配体制について、経済政策を紹介するものです。金第一書記の動向を報道する北朝鮮のマスコミについて、NHKが評価しながら、北朝鮮の国営メディアの報道内容を報道しているのです。また安倍首相の言動をNHKが、同じ視点で公平に報道しているかのように装いながら、実は、北朝鮮に対しては、批判的に、日本については、北朝鮮と同じような批判的にではなく、応援団的に、報道しているのです。そこが最大のポイントです。
安倍首相と金第一書記の発言を意味づけるNHKの内容は、「敵対」している立場なのに、奇妙に一致しているのです。そのようなことはNHKにしてみれば、全く預かり知らないことでしょう。しかし、NHKが金正恩第一書記の言動を批判的に報道すればするほど、安倍首相の反民主主義的体質が浮き彫りになるのです。
ポイントは、安倍首相の憲法改悪に向けた発言とそれを評価した報道と金正恩第一書記の叔父で後見人を「粛清」したことを「正当化」と「評価」したことは、実は、非常に似通っているのです。安倍氏と金氏を取り替えてみると、いっそうハッキリしてくるのです。
まず、「粛清」の「正当化」は、朝鮮国内問題です。日本の民主主義のレベルからすると、問題アリですが、それでも朝鮮の国内法上の問題です。かつては秘密裏に行われていた「処刑」が、法的根拠を明らかに、連行写真まで掲載しているのです。勿論北朝鮮国内の事情があったことも事実でしょう。しかし、あの会議中から連行されるまでは、日本における報道は、行方不明的、消息不明的な報道でした。これも極めて不信感を抱かせるための報道でした。この問題は、日本における死刑制度の温存が、国際社会からみれば、極めて後進国的なのですが、北朝鮮を批判的にみる多くの国民は、死刑制度を採用している日本の後進性については、北朝鮮を見る目を使って視てはいないのです。ここがポイントです。
安全保障問題については、「『戦争が再び起きれば、途方もない核の災難を招く』として、アメリカや韓国をけん制」と「脅し」と言っていませんが、日米韓の挑発的軍事訓練などについては不問にしながら、相変わらず北朝鮮不信を煽っているのです。
さて、安倍首相の靖国参拝と「特定」「秘密」「保護」法の強行、弾薬供与・貸与事件について、どうでしょうか。「粛清」はありませんが、民主的運営に反する政権・国会「運営」を「正当化」しているのです。NHKは「これまで以上に世界の平和と安定に積極的な役割を果たす。『積極的平和主義』こそがわが国が背負うべき『21世紀の看板』であると確信している」「『国のかたち』を表す憲法についても、制定から68年になろうとする今、時代の変化を捉えた改正に向けて、国民的な議論をさらに深めていくべきだ」と安倍首相の言葉をそのまま伝え、「憲法改正に向けた意欲」と安倍首相の「正当化」を「評価」しているのです。憲法改悪は、安倍自公政権「独裁」体制への布石なのに・・・。
経済問題、安倍氏と金氏の動向を報道するスタンスはどうでしょうか。「北朝鮮のメディアは、キム第1書記の下への結集を呼びかけ、内部の引き締めを一段と強めています」「経済の立て直しを進めて生活の向上を図る姿勢を強調」したと北朝鮮のメディアは金氏をもち上げているとの「評価」をしています。
では安倍首相はどうでしょうか。金氏と同じ視点、安倍氏をもち上げる視点で報道しているのです。しかも経済政策についても、「景気回復の実感」が「全国津々浦々にまで」届いていないことを指摘するのではなく「必ずや届ける」と安倍首相を激励しているのです。更に具体的に指摘して、安倍首相を応援しているのです。
特に東京証券取引所の発言と安倍政権の株価・経済対策の実態は大いに矛盾していますが、批判もせず、応援しているのです。
安倍首相は、「新しい経済政策で日本経済はプラスに転じた。景気がよい循環に入るよう頑張るので、来年もアベノミクスは買いです」と述べました。しかも「東証1部に上場している株式の時価総額は、1年で162兆円余り増えて458兆4842億円となり、およそ5年11か月ぶりの高い水準」としています。日本資本主義の株式の時価総額の凄さと同時に、庶民の貧困の矛盾が浮き彫りになりましたが、そのような視点での報道はしていません。
しかも、株価上昇で儲かっているのは、「海外の投資家」と、これだけでは意味不明の「投資家」が日本経済を操っていることが判明しましたが、これについても、不問です。
東証と名証で海外の投資家がことし初めから今月20日までに購入した株式の金額は、売却した額を14兆6100億円上回る「買い越し」平成17年の「買い越し」の額、10兆3218億円を大幅に上回り、過去最高となる見通しです。(引用ここまで)
更にいえば、「個人投資家」については、「買い越し」ではなく、「売り越し」と、反対の対応を行っているのです。これこそが「新しい経済政策で日本経済はプラスに転じた」というアベノミクスの実態と本質です。庶民の懐まで、全国津々浦々まで浸透しない最大の理由が、ここにあることが浮き彫りになりました。しかし、HNKはいっさい不問です。
反対に、日本の個人投資家は値上がりした株式を売って利益を確定しようという動きを強め、売却した額が購入額を8兆円余り上回る「売り越し」となりました。このように、ことしの株価上昇は海外投資家がけん引した形で、来年は個人投資家を対象とする新たな優遇税制「NISA」が始まり、個人による投資をどれだけ呼び込めるかが課題となります。(引用ここまで)
偽りのアベノミクス成長戦略の実態が明らかになったにもかかわらず、NHKは、あたかも庶民の声を代表しているかのような印象操作を行っています。48歳の会社員の男性、79歳の会社顧問の男性、67歳の会社員の男性に「賃金上昇」「企業業績」「株価の上昇」などについて「政府には成長戦略をしっかり実行に移してほしい」と語らせているのです。
ということは、逆に言えば、実態のない、虚構のアベノミクス成長戦略であることが鮮明になってくるのです。しかし、安倍首相の応援団であるNHKは、そのような視点では報道していないのです。金第一書記を批判的に報道する視点は、安倍氏には使わないのです。ここに、北朝鮮「脅威」論を煽り、安倍首相の日米軍事同盟深化論にもとづく「積極的平和主義」の推進とその延長線上に位置する憲法改悪に手を貸している日本のマスコミの本質があります。
以下、それぞれの記事を掲載しておきます。検証してみてください。愛国者の邪論は北朝鮮を弁護するつもりではないことを繰り返し強調しておきます。日本が批判する北朝鮮は、安倍首相がめざす国家と似通っていること、北朝鮮を批判する日本のマスコミはそれを覆い隠して、「北朝鮮脅威」論を煽って、安倍首相の暴走、北朝鮮のような国家づくりを応援しているのです。このことを強調しておきます。
首相が年頭所感 経済再生と憲法改正に意欲 1月1日 0時13分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140101/k10014219721000.html
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安倍総理大臣は、平成26年の年頭にあたって「所感」を発表し、デフレからの脱却と経済再生に引き続き、全力で取り組む決意を強調するとともに「『国のかたち』を表す憲法についても国民的な議論をさらに深めていくべきだ」として、憲法改正に向けた意欲を示しています。この中で安倍総理大臣は年頭にあたって、「『強い日本』を取り戻す戦いは始まったばかりだ。今後も長く厳しい道のりを緊張感を持って進んで行く覚悟を新たにしている」としています。そのうえで安倍総理大臣は、「20年近くにわたってこびりついた『デフレ』からの脱却はいまだ道半ばだ。『強い経済』を取り戻すべく、引き続き全力で取り組んでいく。景気回復の実感を全国津々浦々にまで必ずや届ける」として、デフレからの脱却と経済再生に引き続き全力で取り組む決意を強調しています。また、安倍総理大臣は、外交・安全保障政策について、「これまで以上に世界の平和と安定に積極的な役割を果たす。『積極的平和主義』こそがわが国が背負うべき『21世紀の看板』であると確信している」としています。そして、安倍総理大臣は「『国のかたち』を表す憲法についても、制定から68年になろうとする今、時代の変化を捉えた改正に向けて、国民的な議論をさらに深めていくべきだ」として、憲法改正に向けた意欲を示しています。さらに安倍総理大臣は、「東日本大震災から3度目の元旦を、避難生活の中で迎える方がいらっしゃる。次の元旦こそは、できるだけ多くの方に新たな住まいで迎えていただきたい。原発事故により避難生活を余儀なくされている福島の皆さんにも、1日も早く普通の生活に戻っていただきたい」として、震災復興を加速させる考えを示しています。(引用ここまで)
東証 記録的上昇相場を手締め 12月30日 17時22分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131230/t10014208761000.html
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東京証券取引所で、記録的な上昇相場となったことし1年の取り引きを締めくくる「大納会」が行われました。歴代の総理大臣で初めて安倍総理大臣が出席し、景気がよい循環に入るよう、経済政策に力を入れる考えを強調しました。ことしの大納会には、安倍総理大臣や東京オリンピックとパラリンピックの招致活動でプレゼンターを務めたパラリンピック陸上の佐藤真海選手、それに証券業界の関係者などおよそ1000人が出席しました。
東証を傘下に持つ日本取引所グループの斉藤惇最高経営責任者は「東京市場の株価の上昇幅は世界の取引所で最大になった。日本経済はデフレから成長へと向かう入り口に達した」とこの1年を振り返りました。続いて、安倍総理大臣があいさつに立ち、「新しい経済政策で日本経済はプラスに転じた。景気がよい循環に入るよう頑張るので、来年もアベノミクスは買いです」と述べました。このあと、出席者全員で手締めを行って、ことしの取り引きを締めくくりました。30日の東京株式市場は日経平均株価が先週末に比べて112円37銭値上がりして1万6291円31銭と、ことしの最高値を更新して取り引きを終えました。去年の終値、1万395円18銭と比べますと、この1年で56.7%と、41年ぶりの高い上昇率となりました。また、東証1部に上場している株式の時価総額は、1年で162兆円余り増えて458兆4842億円となり、およそ5年11か月ぶりの高い水準になりました。年明けの取引は、来月6日から行われます。
海外投資家がけん引 浮き彫りに
東京証券取引所によりますと、東証と名証で海外の投資家がことし初めから今月20日までに購入した株式の金額は、売却した額を14兆6100億円上回る「買い越し」となりました。これは、平成17年の「買い越し」の額、10兆3218億円を大幅に上回り、過去最高となる見通しです。反対に、日本の個人投資家は値上がりした株式を売って利益を確定しようという動きを強め、売却した額が購入額を8兆円余り上回る「売り越し」となりました。このように、ことしの株価上昇は海外投資家がけん引した形で、来年は個人投資家を対象とする新たな優遇税制「NISA」が始まり、個人による投資をどれだけ呼び込めるかが課題となります。
賃金上昇や成長戦略の実行求める声
48歳の会社員の男性は「株価は適正な価格に上昇したと思う。来年は株価だけでなく、景気も回復して、賃金の上昇につながってほしい」と話していました。また、79歳の会社顧問の男性は「株価が上がれば気持ちも明るくなるのでよいことだが、アベノミクスに引っ張られ、どこか実態のない株価の上昇にも感じられた。来年は企業業績の一段の回復を伴った株価の上昇を期待したい」と話していました。67歳の会社員の男性は「来年は消費税率の引き上げで株価が一気に下がってしまうおそれもあるので安心はできない。政府には成長戦略をしっかり実行に移してほしい」と話していました。
「1万7000円台をターゲットに」
日本総合研究所の藤井英彦理事は「アベノミクスによる積極的な経済政策や企業業績の回復といったさまざまな追い風を受けて、市場には大きく浮揚感が広がった。株価の上昇によって企業や消費者が景気の好転を感じ始めている」と評価しています。また「リスクを回避しようという動きからリスクを取っていこうという動きへの変化が広がり、企業の設備投資や個人の住宅購入といった積極的な経済活動に結びついたのではないか」と指摘しています。来年の見通しについては、4月の消費増税が株価を下げる材料になるとしながらも、「消費や設備投資など民間の需要の強さが続き、アメリカの景気回復も続く状況で、政府の経済対策が打たれれば、景気の改善傾向は続く」と話しています。そして来年の株価については「1万7000円台をターゲットとして一段の上値を追う、底堅い展開が期待される」と話しています。(引用ここまで
キム第1書記 粛清を正当化 忠誠求める 1月1日 12時20分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140101/k10014223741000.html
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北朝鮮のキム・ジョンウン第1書記は元日の1日、ことし1年間の国政運営の方針を示す新年の演説を行い、おじのチャン・ソンテク前国防委員会副委員長の粛清を正当化して国民に忠誠を呼びかけるとともに、経済の立て直しを進めて生活の向上を図る姿勢を強調しました。北朝鮮の国営テレビは1日午前9時から、キム・ジョンウン第1書記が事前に収録した「新年の辞」と呼ばれる演説を30分間近くにわたって放送しました。この中でキム第1書記は「去年は党内分派を除去する断固とした措置を取った。これによってわれわれの団結力は100倍に強化された」と述べ、おじで後見人とされたチャン・ソンテク前国防委員会副委員長の粛清を正当化し、国民にみずからへの忠誠と結束を呼びかけました。
そして、「2014年は、強くて盛んな国の建設のため新たに飛躍する、偉大な変革の年だ」と述べ、経済の立て直しを進めて生活の向上を図る姿勢を強調しました。一方でキム第1書記は、軍事力の強化にも取り組む考えを示したうえで、「戦争が再び起きれば、途方もない核の災難を招く」として、アメリカや韓国をけん制しました。「新年の辞」は、キム第1書記が祖父のキム・イルソン主席にならって去年、19年ぶりに復活させたもので、北朝鮮指導部としては、1日の演説によってキム第1書記を頂点とする体制固めを加速するねらいがあるとみられます。
キム第1書記体制2年 引き締め強化 12月30日 14時55分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131230/k10014207211000.html
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北朝鮮のキム・ジョンウン第1書記が軍の最高司令官に就任して2年となる30日、北朝鮮のメディアは、キム第1書記の下への結集を呼びかけ、内部の引き締めを一段と強めています。北朝鮮のキム・ジョンウン第1書記は、父親のキム・ジョンイル総書記の死去を受けて軍の最高司令官に就任してから30日で2年になります。国営テレビは朝から、キム第1書記が各地の軍の部隊を視察した様子をまとめた記録映画を繰り返し放送しています。また、30日付けの朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は1面に社説を掲載し、「キム第1書記は天才的な軍事の資質を持っている」などとたたえたうえで、「キム第1書記を団結の中心としてより強固にまとまらなければならない」として、キム第1書記の下に結集するよう呼びかけました。さらに、キム第1書記の後見人だったチャン・ソンテク前国防委員会副委員長の粛清を踏まえて「誰であろうと党に挑戦しようとする者は断固として懲罰を加えなければならない」として、指導部に対する反発は絶対に許さないという姿勢を強調しました。北朝鮮はチャン氏の粛清後、内部の引き締めを進めており、1月1日に行われるとみられるキム第1書記の新年の演説でもこうした呼びかけを行うものとみられます。(引用ここまで)