とうとう細川氏が都知事選挙に参戦を表明しました。マスコミは、ここに集中しました。舛添氏の出馬表明が霞むほどでした。マスコミの動きを察知した二人の会談と発表は、大変意図的でした。ここにメディア戦略に長けた二人、というか、スタッフの存在を視る思いで、各局のニュースを視ていました。
そこで、まず第一に、マスコミが二人の何を報道したか、それに対して自民党がどのように反応したか、検証しながら、これらの動きが、どのような意味をもっているか、検証してみることにしました。そのポイントは、
1.アベノミクス成長戦略の土台をなすエネルギー政策の重要な柱である原発政策を推進する自民党・安倍政権の慌てぶりです。「殿、ご乱心」「ひきょう」発言は、そのことを示しています。
(1)しかし、自民党は細川氏の金権を批判できるでしょうか。
①石原氏の後継者として猪瀬氏を応援したこと、百条委員会設置で脅し辞任させ、真相解明を闇に葬ろうとしました。
②徳田毅氏は自民党公認で当選。第2次安倍内閣の国土交通大臣政務官に就任させ、「自民党のホープ」(安倍首相)とまで持ち上げていました。
③徳田氏の徳州会マネーに石破氏を含めて閣僚などが汚染されているのです。
(2)沖縄の自民党と国会議員などには、辺野古移設と、その公約の変質を迫った自民党本部が、除名した舛添氏の応援は公然とはできないが、自民党都連の決定ということで、舛添氏の応援を正当化したのです。沖縄と東京では全く違った対応をしているのです。
(3)そもそも自民党が舛添氏を候補に上げたのは、「勝てる候補」ということで、根拠の乏しい意味不明な「世論調査」の結果を踏まえたものでした。
(4)脱原発は国政の問題であり、一地方自治体の問題ではないと盛んに弁解、言い訳をしています。
①東京都知事選挙は、一地方の首長選挙とは大きく違っていることは自民党自身が一番知っていることです。
②自民党は、そのことを隠して脱原発は国政上の問題だなどと切り離す作戦に出ています。ここに自らの、これまでの主張に唾を吐きかけること、スリカエです。
2.次は、細川・小泉両氏の脱原発の本気度です。二人は、以下の政治を断行してきた日本の総理大臣でした。
(1)金丸金権など批判が集中した自民党への批判を「政治改革」と称して小選挙区制度と政党助成金制度をつくることでスリカエたのでした。その後の日本の政治の劣化をどのように説明するのでしょうか。
(2)佐川金権にまみれていたため辞任に追い込まれたのでした。
(3)世界の借金王となった小渕首相の急死を受け、密室談合で決められた森首相の失言などに批判が浴びた自民党をぶっ壊すとして劇場型政治の大本をつくったのでした。それが、政治の劣化をつくりだしたのです。
(4)「改革には痛みが伴う」と、自民党内の反対派を抵抗勢力と描くことで自分を改革者に仕立て上げ郵政民営化選挙を断行し新自由主義政策を推進し現在の格差拡大の大本をつくったのです。
(5)国会において共産党に原発の危険性を指摘されながら拒否して原発を推進してきたことはどのように説明するのでしょうか。
(6)誤ったイラク戦争に参戦し、実質的に集団的自衛権行使を規制事実化してきました。
3.いわゆる脱原発を掲げている宇都宮氏の動きです。
(1)前回の都知事選に引き継ぐ参戦であること。
(2)社民党と共産党が、それぞれ応援することになったこと。
(3)参議院選挙で無所属の山本議員、共産党の吉良議員にみるように、都民の中には脱原発への期待票は、根強くあること。
(4)細川氏に公開政策論争を呼びかけたそうです。これは脱原発を願う都民、国民のことを考えれば当然の呼びかけです。
(5)宇都宮氏を応援する、いわゆる無党派の人びとと、どのような都政を創っていくか、その政権構想を発表できるかどうか。
(6)その際には、首都東京と国政との関わりを鮮明に打ち出すことが求められているでしょう。一般的な地方自治体の首長選挙ではないのです。
4.自民党本部の推薦ではなく自民党東京都連が推薦したとされている舛添氏の動きです。
(1)東京五輪を第一番目に掲げている。
(2)脱原発か原発推進か、どちらにも与しないと言っている。
(3)母親の介護の体験を踏まえて社会保障に力を入れると言っている。
5.石原氏が応援している大東亜戦争肯定派・軍国主義信奉者の田母神氏の動きです。
(1)自民党東京都連には、田母神氏を応援しろという意見が多数寄せられたそうです。
(2)保守反動の分裂です。安倍首相の暴走に勢いづいた勢力の錯覚でしょうか。それとも極右の扇動でしょうか。
それでは、次、第二には、自民党や舛添氏、マスコミが脱原発が都知事選挙の重要政策になるか、などと疑問を投げかけている問題について、検証してみます。
1.東日本大震災におけるフクシマを視るまでもなく原発の危険性は繰り返し強調されてきたことです。
2.フクシマの汚染被害は、今後どのような形で現れてくるか、未だ検証されていません。しかも政府も東電も、原発利益共同体は、その補償など、その責任を果たしていないのです。
3.フクシマの汚染水問題はコントロール・ブロックされているどころか、汚染水が垂れ流されているのです。
4.細川・小泉両氏が主張するように、放射性廃棄物の処理についても、見通しはありません。
5.しかし、安倍自公政権は、国民の反対の声を無視して原発の再稼動と輸出に狂奔しているのです。
6.しかも、巨大地震が日本列島全体で予想されているのです。その当該地域に東京が指定されているのです。
7.首都東京は、「巨大な電力消費地」です。しかも東電の有力株主です。納税者である都民は東電の株主なのです。そのような関係を有している「巨大な電力消費地」である東京の地域づくりと原発の関係こそが、解明されなければならないと思います。
(1)舛添氏が第一に主張する東京五輪と原発・エネルギーの関係はどうでしょうか。海外の観光客やアスリートはどちらを選択するのでしょうか。
(2)田母神氏が主張する巨大地震に備える防災都市東京と原発・エネルギー(電力)の関係はどうでしょうか。
(3)高齢化社会に突入した東京における福祉、社会保障と原発・エネルギー(電力)の関係はどうでしょうか。
(4)未来を担う子どもらの子育て・教育と原発・エネルギー(電力)の関係はどうでしょうか。
(5)巨大都市に生きる都民の生活を保障する雇用と食の安全と原発・エネルギー(電力)の関係はどうでしょうか。
(6)以上の諸政策を推進していくために、従来どおり原発に頼るのか、再生可能エネルギーを促進していくのか、中韓はあり得るのか。その選択が都民の肩にかかっているのです。何故か。首都東京の政策選択は、全国に波及していくことは確実だからです。
(7)以上の視点は、後出しジャンケン選挙で勝利した石原氏が具体化していれば、何も問題のないことばかりです。石原都政の負の遺産であることを明記すべきです。
(8)国の存亡に関わる原発問題であることは、以上の諸政策との関係から見れば明瞭です。だからこそ、原発と諸政策の関わりを解明していくことが必要なのです。
以上の視点から、第三には、首都東京の地方自治づくり、まちづくりのうえで、脱原発政策の位置づけを確認したうえで、脱原発を掲げる宇都宮氏と細川・小泉両氏が、都民のために、国民のためにどのように動くか、ということです。
1.細川氏は、脱原発は国の存亡に関わる問題だ、今回の都知事選挙は勝ち負けの問題ではないとしています。ここに都知事として、他の政策をどのように推進していくのか、見えてこない理由が、自民党などが「攻撃」する根拠があります。
2.小泉氏は、首相が脱原発を決めれば、後は知恵が出てくる問題だ。原発推進は自民党と政権だけ、野党は脱原発だと主張しています。トップダウン政治によって脱原発を実現しようとしているのです。
3.細川・小泉両氏に共通することは、都知事選挙を通してフクシマ以降の「危機」を打開していかなければならないということ、それを都知事選挙で突破していこうとする思惑が透けて見えてきます。これそのものは、間違いではないでしょう。
4.しかし、脱原発ではなく、安倍政権の原発再稼動の恩恵を受けようと、その政策を推し進めている財界と細川・小泉両氏の関係はどうでしょうか。この点については、マスコミは触れていません。昨年北欧の視察をした小泉氏に同行した中に財界関係者がいた事実は何を示しているのでしょうか。
5.細川・小泉両氏が、一見すると脱原発では国民の要求を実現するかのように映っています。そこが、国民の脱原発に対する根強い世論を反映していることが示されているのです。それは宇都宮氏を支持していた著名人が、細川・小泉両氏に、その支持を移行させたことにも示されています。宇都宮氏より細川・小泉両氏の方が、その実現性があるからでしょう。
6.細川・小泉両氏が、原発と他の政策との関係をどのように位置づけているか、不明ですが、宇都宮氏の陣営が、公開討論を要請したといことですから、この点について、大いに論争する必要があるということです。
7.この原発政策と他の政策の実現について、その方向について、一致点が確認されるのであれば、「共同候補」、「一本化」も浮かび上がってくるのではないでしょうか。
8.そうすると、脱原発都政政権の樹立ということになります。その中心に誰が座るか、です。細川氏か、宇都宮氏か、です。それも密室で決めるのではなく、公開で決めるべきです。
(1)都知事選挙後の脱原発都政政権のスタッフを含めた政権構想の提示が必要です。ここに都民参加型の選挙戦、政策選挙、その政策にもとづく都政の実現という方向が出てくるのです。
(2)この議論は公開の下で行われるべきです。しかも意見の違いを認め合いながら、一致点で政策をすすめていくのです。宇都宮氏と細川・小泉両氏は、違いがありすぎるからです。しかし、その違いは都民参加の公開討論によって検証しながら、一致した点についてのみ具体化していくのです。こういう粘り強い話し合い政治が必要です。
(3)これは「決まらない政治」と煽ってきたマスコミに対する回答でもあります。都民不参加でもたつくからこそ、「決まらない政治」に対するイライラが醸成されるのです。都民参加型政治が実行されれば、このイライラは解消できるでしょう。何故か、都民のための政策を、都民が自分たちで「決める政治」を担うのです。
(4)この視点は、すでに共産党と創価学会の協定に書かれていることです。この視点を、今具体化するのです。
9.以上の一致点を確認する政治は、日本の政治史においては経験ずみです。これらの経験と教訓を活かした都知事選挙とすべきです。これは実現できれば、日本の民主主義にとって、大きな政治的経験となることでしょう。革命的体験となるでしょう。
10.共産党は、「一点共闘」論、「統一戦線」論を、「民主連合政権」論、「よりまし政権」論を、この都知事選挙に具体化すべきです。これは都民のため、国民のためです。勿論、この方式を細川・小泉両氏が受け入れるかどうか、判りません。明後日に細かい政策を明らかにするということですから、そこで公開討論をすべきです。判断は都民、国民です。
以上の視点をマスコミは候補者に確認すべきでしょう。大いに議論していく必要があります。スリカエとゴマカシは排除していくべきです。