「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

義士の討入りと日本人の世界

2006-12-15 05:54:14 | Weblog
赤穂義士討ち入り記念の昨14日、高輪泉岳寺へお参りした。地下鉄駅
からお寺までの参道はご同様の高齢者ばかり、ぞろりぞろり相変わらず
すごい人気である。本堂横の四十七士のお墓へ詣でるには長い行列を
並ばなければならない。僕は年に免じて失礼させて貰った。

60数年前、戦前の義士祭を思い出した。子供心に参道が人、人、人で
埋まっていたのを覚えている。墓地内は参詣者のたくお線香が煙り息苦
しかった。帰途、セルロイド製の陣太鼓と木刀を買ってもらい、帰宅後、早
速、近所の悪童連を集めて"チャンバラ”ごっこをした記憶がある。

戦後”チャンバラ”物の昔話があまり好まれなくなった。大正時代の立川
文庫、戦前の講談社の絵本に描かれた雲隠才蔵、真田十勇士、猿飛佐助
岩見重蔵といった講談話は消えた。多分、今の子供は、この世界を知らな
いに違いない。これも戦後の進駐軍の占領政策の影響なのだろうか。その
中にあって”仇討話”と、一番占領軍が好まないと思われる「忠臣蔵}だけが
いぜん庶民に好かれ人気である。芝居や映画の影響だけとは思えない。

昔から義士の討ち入りにはゆかりの甘酒を茶店に腰掛けて飲んだ。一杯二
百円であった。甘酒は何か江戸時代を偲ばせる。知らない江戸時代と戦前
の子供時代の想い出が渾然となって頭の中をめぐった。義士の討入りは理
屈を抜きにして日本人の世界である。