「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

ある日本人革命家の一生

2006-12-20 07:01:00 | Weblog
1945年8月17日のインドネシア独立宣言起草に関与した最後の日本人
N氏が12月9日逝去された。95歳であった。N氏は「証言 インドネシア
独立革命 ある日本人革命家の半生」(1975年 人物往来社)という本
を出版されているが、彼の一生はまさに明治、大正、昭和、平成四代を
生きた大往生であった。

1911年生れのN氏は故郷の中学校を出て旧制一高に入学したが、31年20
歳の時「治安維持法」で警察に逮捕され学校を追放された。そのあと地下
運動に入ったが、再度逮捕されて懲役二年(執行猶予五年)の判決を受け
たあと、転向を条件に蘭印(インドネシア)に事実上追放された。

蘭印では日本人経営の商店で店員として働きながら、オランダ語とインド
ネシア語を学び現地人の独立運動を支援した、41年12月8日大戦勃発と
ともにN氏は他の日本人と共に逮捕され、オランダによって豪州の砂漠
の収容所に送られた。1年後捕虜交換船でジャワに戻り海軍武官府に勤
務して現地人のための「独立塾」を作った。

インドネシアの独立宣言はN氏の勤務していた海軍武官府の上司、前田
少将宅で起草されたが、これに関与した日本人は前田少将、N氏ほか数
名であった。N氏はこの時の模様を刻銘に上記「革命家の半生」の中で書
いている。N氏が若いとき夢見た日本の共産革命は頓挫したが、他の形
をとって他国で結実した。彼の葬儀は彼の希望で15日、家族だけで密か
に行われた。