「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

大掃除 ”捨て切れない病”

2006-12-28 07:31:24 | Weblog
きのう春みたいな陽気につられ思い切って夫婦で大掃除をした。案の定
夫婦の口喧嘩である。昭和1ケタ生れの老妻は極度の”捨て切れない”病
なのだ。戦中戦争直後の物の足りない時代に育った妻は、すべてが”もっ
たいなくて”捨てられないのだ。僕が”要らない”と捨てたものまで、ゴミ袋
から拾い出す。

あの時代は本当に物がなかった。古新聞がトイレット・ペーパーだった時代
である。母親がお尻の抜けた半ズボンに尻当ての布地を当て、それをはい
ていた。僕らはそれを”猿のオケツ”といっていた。大人も古い背広を裏返し
て着ていた。ポケットが反対なのですぐ判った。衣料不足は戦後まで続いた。
昭和23年のクリスマスのころ、近くの教会で”進駐軍物資の放出”バザーが
あり、茶色の縞模様のオーバーコート”を買った記憶がある。布地がすり切れ
た中古品だったが、得意然と着ていた。

数年前、スリランカの田舎を訪ねたら、村の子供たちが"○○中一年”と名札
を縫い付けた日本製の中古運動着を着ていた。物あまりの日本では、今の若
い世代は簡単に物を捨てる。娘にいわせれば、一シーズン手を通さなかった衣
類は、その後絶対に着ることはないーそうだ。その通りである。それよりは開発
途上国の子供に寄贈したほうがよいのだが。

しかし、あの時代を経験した世代にはそれが出来ない。また、あのような時代
が来るとは思ってはいないのだが、困ったものだ。一種の業のようなものだ。