「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

「赤ちゃんポスト」と捨て子の助長

2007-02-24 05:35:07 | Weblog
育児困難の親が乳児を病院に託す制度、「赤ちゃんポスト」について
厚労省は”児童福祉法規に違反しているまでとはいかない”という見
解を示した。この制度の設置の是非を厚労省にお伺いをたてていた
熊本市は同市に申請のあった慈恵病院と協議のうえ、最終的な判断
をすることになった。

このニュースを新聞で知り、思い出したのは終戦直後の昭和23年、東
京で起きた”寿産院”事件であった。戦中戦後の混乱の中でいわゆる”父
なし子”が沢山生まれた。これに目をつけた産院経営の夫婦が、有料で
赤子を預かり、里子に出すといいながら栄養失調で204人中169人も
殺していた悲惨な事件である。

この事件を思い出したので、僕は「赤ちゃんポスト」は名案だと思った。
厚労省の調査だと捨て子は年間200件もあり、2005年度の人口妊娠
中絶は28万件もある。さらに虐待で58人も死んでいる。尊い命が、この
「赤ちゃんポスト」の設置で助かるのなら、こんな好いことはない。しかし、
だがねである。

”寿産院”の頃とは時代が違うのである。あの時代は戦争があってやむを
えず、自分の生んだ子供を手放さざるをえなかったケースもあった。しかし
今は違う。不倫のすえ生んだ子供が”お荷物”になり、簡単に捨て子して
しまう。自分が遊びたいために幼児を一人部屋に置き火事で殺してしまう。
こんな時代である。「赤ちゃんポスト」はキリスト教倫理による崇高な案だ
が、かえって捨て子を助長すようになるのではないだろうか。