「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

北アルプスが展望できる”終いの棲家”

2014-08-12 05:35:28 | Weblog
71年前の昭和18年、同じ学窓を巣立った国民学校の級友夫人から暑中見舞いをかねて近況を知らせる手紙が届いた。今年の年賀状が届かず消息を心配していたのだが、級友ともども信州の北アルプスの山々が展望できる老人ホームに入居されたとのこと。級友は数年来軽い認知症だったが、足腰も弱って車イスの生活。夫人も今年に入って胃がんと診断され、級友の介護が出来なくなり、思い切って入居を決断したという。

今年になって、この級友夫妻と同じように長年住み慣れた自宅を処分して老人ホームの世話になる友人知人がふえてきた。数年前に御主人を亡くした大正生まれの知人の女性が四百字詰原稿用紙4枚に「終いの棲み家」という題で、老人ホームに入居したエッセーを送ってくれた。独り住まいの彼女が長年家族と一緒に住み慣れた家を手放し、緑で囲まれた今のホームで快適な老後を送っている喜びが書かれてある。

旧友夫人の手紙の終りに”私たちの住まいは、インターネットで検索できます”とあった。早速拝見させて貰ったが、確かにアルプスが展望できる13階の立派な建物で、ホームには医療機関はもちろん、老人用のレクリエーション施設、保育園、地元名産の塩尻ワインが飲める立派なレストランまである。入居費その他から誰でもが入居できるものではないが、東京首都圏では考えられない立派なものだ。

信州生まれの老妻は多少冗談まじりに家を処分して引越ししましょうと言った。たしかに狭い一室で熱中症を気にしながら生活するよりは快適で夢もある。しかし、いざ決断するとなると、もう80歳も半ば近くになった老夫婦には、もうそのエネルギーはない。幸い二人とも介護1の認定は受けてはいるが元気で他人のお世話にならず健康で生活できている。このまま自宅が”終いの棲家”がなればと望んでいるのだが。