「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

老人は閑居して不善ばかりしているか

2014-12-01 05:43:56 | Weblog
産経新聞のコラム(首都圏版)「古典個展}に中国哲学史が専門の加地伸行先生(78)が不平不満の老人に必要なのは社会保障より道徳教育だと書かれていた。先生によれば、世には老人エゴが横行し、たいした病気でもないのに、病院通いして、このために社会保障費における医療費が増大、年金では生活できないと不満をいっている。本来、自分の老後は自力で用意するのが筋である。こういった遊んでいて不平不満の老人たちには小学校に再入学させて道徳教育を学ばすべきである、と極論している。

加地先生は自分がバスの中で体験した、老女性の無作法な態度を引用して、この論を展開してるが、確かに僕も60歳代の戦後生まれの”若年寄り”の中には、エゴの塊のような日本人が出てきたように思われる。僕ら昭和1ケタ世代から上の、戦前修身教育を受けた世代とは違う日本人である。見た目は白髪で僕らと変らぬ老人だが、まだ元気そうな男たちで、電車の老人専用席で、股を広げ漫画本を読みふけり、杖をついた僕らが前にきても席を譲ろうとはしない。たしかにこの世代の”若年寄り”には、加地先生の論は当たる。

しかし、どうだろうかー。加地先生は原稿の最後に、ご専門の中国の「礼記」大学編から「小人閑居して不善を成す」を引用結んでいるが、老人はすべて小人であろうか。確かに多くの老人は閑居しているが、不善の生活を送っているとは限らない。戦前、日本の公道徳は、中国古来の儒教を基調としたものであった。この教えは老人は大切にせよと、教えてきた。加地先生の説は理解できなくはないが、とかく老人を蔑視している、今の日本の風潮に媚びているようにも見える。