「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

墨で塗られ消された73年前の「マレー電撃作戦」

2014-12-27 07:05:28 | Weblog

歳末で書庫を整理していたら大東亜戦争下の国定文部省国民学校国語教科書初等科(巻八)が出てきた。この教科書は今流にいえば小学校六年生用後期のもので、国定だから当時の小学生は全員これで学んだ。その中の一項に「マライを進む」があった。”密林とゴム林が無限に続くマライ(マレーシア)にただ一筋の舗装道路が北から南に発している”-という書き出しで73年前の今頃、マレー半島をシンガポールに向けて進軍中の日本軍の奮闘ぶりを記してある。

昭和7年生まれの石原慎太郎さんは当時、国民学校6年生だったから、この教科書で勉強した。しかし、戦後すぐ進駐してきた連合軍の命令で、占領政策に反する教科書の記述はすべて抹殺するよう命じられた。学校によっては生徒に墨で消させたところもあった。以来、この「マライを進む」のような戦争に関するものは、日本の教科書から消え、日本人の記憶からも薄れていった。

日本人の八割が戦後生まれである。しかも実際に戦争を体験した世代は、このうちの何割だろうか。僕ら昭和1ケタ世代がおそらく最後の世代であろう。来年は敗戦から70年の節目の年である。当時の国語教科書には「不沈艦の最後」という題で、当時世界に冠たる英国の”不沈艦「プリンス.オブ.ウェルズ」を日本軍の航空機が襲い撃沈した模様を15ページにわたって紹介している。

世界史上初めて軍艦よりは航空機が優位であることを示した画期的なことだ。当時、「ハワイ.マレー沖海戦」という映画にもなって日本人の誰でもが知っていたが、当時の史実は教科書から抹殺されただけでない。歴史の表舞台からも消えようとしている。