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正月も早や松が明けて成人の日である。この新年、東京は暖かい春めいた日が続いたせいか、わが家の乱雑としたベランダの鉢植えの白梅がほころび始めた。歳をとるとともに、冬の寒さがこたえ、春を待つ心が強くなる。”寒梅や梅の花とは見つれども”(蕪村)であっても、僕にはやはり白梅は梅とは異なる趣があって好きだ。春を告げる使者である。
庭上一寒梅 笑侵風雪開
不争又不力 白占百花魁 (新村穣)
漢詩には門外漢の僕だが、新村穣の終りの二詩、「不争又不力」「白占百花魁」が、なんとはなく理解できる年齢になってきた。しかし、一方では、新成人を迎えた若者が羨ましい。あの活気に満ちていた時代は、もう二度と帰ってこない。