「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

戦前昭和 1930年代の東京の活気

2018-10-08 05:47:04 | 2012・1・1
都民の台所として親しまれてきた築地水産物市場が先日、最後の営業を終えて83年の歴史の幕を閉じた。築地市場は1935年(昭和10年)、江戸時代から日本橋の魚河岸にあった市場が、23年の関東大震災で壊滅の被害を受け、海軍御用地であった築地の地へ移転してきた。31年生まれの僕には、直接の記憶はないが、戦前昭和のあの頃が何故か愛おしい。

戦前昭和というが、いつからいつまでという、はっきりした定義はないが、だいたい1930年(昭和5年)から40年までの10年間と一致する。満州事変(31年)から大東亜戦争(41年)勃発の前年までの期間である。40年前半が激動しすぎたため、忘れがちだが、日本の近代化への跳躍台のピリオドであった。

関東大震災の帝都復興記念祭が、復興を祝って1930年3月、賑々しく開催されている。震災から6年6か月後である。復興事業のシンボルとして都心部には、幅広の昭和道路が走り、コンクリート建て学校が建った。”踊り踊るなら”の東京音頭が街々に響いた。紀元二千六百年と東京五輪開催に向かって街は活気に満ちていた。銀座の柳の下では、夜店が出ていた。軍靴の足音は、まだ聞こえてこなかった。

歴史に”レバタラ”はないのだが、戦火が太平洋にまで拡大しなかったなら、世界はどう変っていただろうか。映画にうとい僕でさえ、1930年代のハリウッド女優スター、シャリ―テンプルの名前をいまだに覚えている。戦前昭和とは、こんな時代であった。