「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

故別役実氏との一期一会とその時代

2020-03-14 06:12:02 | 2012・1・1
劇作家の別役実氏(82)が先日亡くなられた。演劇とはまったく縁がない僕だが、氏とは氏が高校生時代”一期一会“の出会いがあり、当時を偲びながら弔文を書かせて頂いた。別役氏は昭和12年旧満州の新京生れだが、敗戦の年の3月、父上が病気で亡くなられたため母上と一緒に帰国、僕がお会いした時は母上と一緒に長野の善光寺近くに住まわれていた。

僕は昭和29年の正月、やはり満州からの引揚者の上司と一緒に別役宅を訪れおせち料理をご馳走になっている。別役氏の母上は当時,善光寺下岩石にあった引揚者飲食街「憩いの町」で餃子屋さんを開いていた。まだ、餃子が今のように一般に食べられていない時代だ。別役さんの店の蒸し餃子は美味しく何時も客で一杯だった。しかし、今思えば戦後のそれでなくとも大変な時代、引揚者の別役氏の母上は女手一つで大変だったであろう。

戦後、海外から一斉に日本人が「かえり舩」に乘って引き揚げてきた時代である。ラジオでは毎日引揚者便りが流れていた。 僕が今住む目黒通りは一部まだ未完成で、その空き地にはバラック建ての「引揚者マーケット」が建っていた。 別役氏は苦学して早稲田大学を卒業、演劇の道で一家をなしている。作品に時代が反映しているかどうかは知らないが”一期一会”のご縁から弔文を書かせて頂いた。合掌。