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☆=☆☆☆☆☆
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◇=☆☆☆
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▽=☆

ダブルフェイス 秘めた女

2013年06月30日 00時41分51秒 | 洋画2009年

 ◎ダブルフェイス 秘めた女(2009年 フランス 110分)

 英題 DON'T LOOK BACK

 原題 NE TE RETOURNE PAS

 staff 監督/マリナ・ド・ヴァン 脚本/ジャック・アコティ マリナ・ド・ヴァン

     撮影/ドミニク・コラン 美術/ヴェロニク・サクレ

     衣裳/マグダレーナ・ラビューズ 音楽/リュック・ロランジェ

 cast ソフィー・マルソー モニカ・ベルッチ アンドレア・ディ・ステファノ

 

 ◎豪華な二人一役

 実におもしろい映画なのに、どうして日本では公開されなかったんだろう?

 一般受けしないかもしれないけど、

 ソフィー・マルソーとモニカ・ベルッチの二人一役なんて、

 おそらく、最初で最後だとおもうんだけどな。

 ただ、ほんのちょっと、話がややこしい。

 こんな話だ。

 ソフィー・マルソーには8歳までの記憶がない。

 だから、自伝的小説を書き始めたものの、どうしても感情面が物足りない。

 その内、異変が起きる。

 違和感といってもいいんだけど、

 家族の顔の変化、家の調度の場所が変化、自分であって自分でない感覚、

 そう、いってみれば、自分の趣味どおりに生きているはずなのに、

 まるで別な誰かの趣味に、生活のすべてがすり替えられていく気分、

 それも、夫や子どもまでもが、

 まちがいなく夫や子どもなのに、自分の夫や子どもではなくなっていく気分、

 自分すら、自分であるはずなのに、自分ではなくなっていくような気がし始める。

 ところが、家族は誰ひとりとして違和感がなく、いつもと同じだと断言する。

 このあたり、良質なスリラーかSFでも始まった観がある。

 鍵は、失われた記憶にあると、ソフィーはおもい、

 たったひとつの手掛かりといえる8歳の頃の写真を頼りに、旅に出る。

 イタリアへ。

 旅の途中から、さらに変化は強まる。

 ソフィー・マルソーからモニカ・ベルッチへ、顔も身体も変化してゆく。

 すると、イタリアのその地には、モニカを知っている人々がいた。

 やがてわかった事実は、ソフィーは8歳のときに死んでいたということだった。

 モニカは、母の連れ子で、養父と折り合いが悪く、フランスへ養子に出された。

 ところが、

 養父母とその娘ソフィーとの4人で交通事故に遭い、

 養母と自分だけが助かっていた。

 このとき、モニカの体内で、

 母に捨てられた事実と、養父とその娘ソフィーを失ってしまった事実の否定が始まり、

 以後、

 モニカの精神はソフィーになり、養母とふたりで暮らし、育ち、夫と子どもを得た。

 ところが、自伝を書く段になり、昔の事実をおもいだそうとしたため、

 思い出したくないことを思い出さざるを得なくなってしまったってわけだ。

 けれど、事実はわかったものの、

 これから先は、

 8歳から今までソフィーとして生きてきたモニカの心には、

 ソフィーとモニカというふたりの自分が同居していくしかないのだろう。

 っていう話なんだけど、あらま、書いてみると単純な話だわね。

 ソフィー・マルソーとモニカ・ベルッチが二人一役をしてるだけじゃなくて、

 ほかの家族も一人二役をしてたり、

 自分だけが違和感というか幻想というか要するに変化してしまい、

 それを一人称の映像で追い駆けていくから、小難しそうに見えるんだね、きっと。

 でも、そうやって描かなかったから、

 単に「妙なことを口走ってる女がいる」てなふうに見えちゃうのかな?

 ま、自分探しの旅の好きなぼくとしては、非常に好みの映画でした。 

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G.I.ジョー

2013年06月10日 00時58分46秒 | 洋画2009年

 ◇G.I.ジョー(2009年 アメリカ 118分)

 原題 G.I. Joe: The Rise of Cobra

 staff 監督/スティーヴン・ソマーズ

     脚本/スチュアート・ビーティー デヴィッド・エリオット ポール・ラヴェット

     原案/マイケル・B・ゴードン スチュアート・ビーティー スティーヴン・ソマーズ

     撮影/ミッチェル・アムンドセン 美術/エド・バリュー

     衣装デザイン/エレン・マイロニック 音楽/アラン・シルヴェストリ

 cast チャニング・テイタム レイチェル・ニコルズ イ・ビョンホン シエナ・ミラー

 

 ◇因縁話の舞台は日本

 その昔、『W3』っていう漫画があった。

 手塚治虫のSF漫画なんだけど、そこにとある秘密機関が出てくる。

『フェニックス』っていうんだけど、

 要するに007みたいな人達が機関員になって正義のために闘うんだね。

 そのフェニックスに主人公の兄さんが入るところから始まるのが、少年マガジン版。

 ところが、こちらの『W3』はいきなり打ち切りになり、少年サンデー版が始まった。

 どちらかといえばマガジン版の方が青年向けな感じがして、ぼくは好きだ。

 で、なんでこんな話をしているかというと、

 この映画を観てる間中、フェニックスがおもいだされていたからだ。

 もちろん全然ちがうんだけど、

 ぼくの思考回路は昭和の漫画で出来ているから仕方がない。

 ただ、映画の中で描かれている日本は、まさしく昭和だった。

 それも中期、もしかしたら初期。

「あんな日本、もうないから」

 といいたかったけど、変なこといったらイ・ビョンホンのファンに怒られるよね。

 なんで因縁話が日本で、日本刀を2本も肩にさしてるのか知らないけど、

 刀の背負い方が逆だよって、誰も教えてあげなかったんだろうか?

 実は、この背負い方は日本人も多くの人が間違えてて、

 映画やテレビでも、逆に背負ってるものが多い。

 少なくとも、ぼくが知ってる「ちゃんとした肩かけ方」をしてる映画は1本だけだ。

 ま、そんなことはともかく、

 なんでも破壊しちゃうナノマイトっていう新薬の奪い合いが話のへそだ。

 ところが、登場人物が多いもんだから、話が妙にこんがらかり、

 アクション主体に進んでく分、ま、いいかとおもってしまった。

 だって、物語の中身を追うより、アクション観てる方が楽なんだもん。

 ただな~、イ・ビョンホンは日本人っていう設定だよね?

 なんで、日本なんだろ?

 やっぱり、忍者ってのはそんなに凄いのかな?

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君を想って海をゆく

2013年05月03日 20時02分51秒 | 洋画2009年

 ☆君を想って海をゆく(2009年 フランス 110分)

 原題 Welcome

 staff 監督/フィリップ・リオレ

     脚本/フィリップ・リオレ エマニュエル・クールコル オリヴィエ・アダム

     撮影/ローラン・ダイアン 美術/イヴ・ブロヴェ

     音楽/ニコラ・ピオヴァーニ ヴォイチェフ・キラール アルマンド・アマール

 cast ヴァンサン・ランドン フィラ・エヴェルディ オドレイ・ダナ デリヤ・エヴェルディ

 

 ☆2008年2月、カレー

 いまでこそ、

 英国ドーバーと仏国カレーはユーロスターで繋がってるけど、

 その昔は、船がたったひとつの移動手段だった。

 昔といっても、そんなに前の話じゃない。

 20世紀の終わり、1990年代の半ばまで、

 直接、列車や車でロンドンからパリへの移動はできなかった。

 ぼくの時代、船はフェリーで、

 ロンドンのヴィクトリア駅からドーバーの桟橋近くまで列車に乗り、

 税関を通って出国、船で海峡を渡り、カレーの桟橋で入国した後、

 すぐにまた列車に乗ってパリのノルテ駅まで向かったものだ。

 都合、8時間。

 ロンドンを朝経っても、パリに着くのは夕方ちかくになった。

 夜行列車で英仏海峡を越えるとき、

 1980年までは、たしか、そのまま車輛搬送されるフェリーがあって、

 こちらはカレーじゃなくてダンケルクに行ったような気がする。

 いま、ドーバー海峡をフェリーで超えるには、

 数社あるフェリー会社の中でも歩行者が乗れる船を選び、

 さらにドーバーでもカレーでも、

 駅と港は鉄道で繋がっていないから、バスで移動しなくちゃいけない。

 貧乏旅行をする者にとっては、まことに恨めしい仕打ちだ。

 ともかく、

 ドーバー海峡を越えていくのは旅のひとつの骨頂で、

 ことに、

 ドーバーの白い壁が遠ざかっていったり近づいてきたりするのを眺めるのは、

 えもいわれぬ感慨があった。

 旅をする者にしてそうなんだから、

 はるばる中近東あたりからイギリスをめざしてきた難民にとって、

 カレーに辿り着いたとき、34キロ彼方のドーバーの白い壁は、

 生きるために到達しなくちゃいけない遠い遠い目印なんだろう。

 難民がイギリスをめざすのは、就労しやすいからにほかならないんだけど、

 なかなか入国できない。

 だから、少なくない難民が密入国することになる。

 この映画に出てくるイラク難民のクルド人の少年もそうで、

 兄貴はすでにロンドンに行っているようなんだけど、それはあまり関係なく、

 つきあって数カ月になる彼女が家族とともに移民してて、

 その恋人に逢いたいがために泳いでいこうとするんだけど、

『ル・アーヴルの靴磨き』とはほぼ正反対で、

 カウリスマキのようなほのぼのとした幸せさは微塵もなく、

 海峡の流れは兎が飛ぶほど速く、うねりもまた高く、

 佳境にいたるまで現実感が色濃く漂ってる。

 少年を泊まらせ、世話を焼いてやる中年男も、

 かつて水泳選手ながら挫折して引退し、

 難民の世話をするボランティアに懸命な妻とは離婚したばかりという、

 これまたどうしようもない閉塞感に包まれてる。

 後味も決していいとはいえない話だけど、

 現時点のヨーロッパはたぶんこんな感じなんだろな~て気がするんだよね。

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青髭

2013年04月12日 17時06分43秒 | 洋画2009年

 △青髭(2009年 フランス 80分)

 原題 BARBE BLEUE

 staff 原作/シャルル・ペロー『青髭』 監督・脚本/カトリーヌ・ブレイヤ

     撮影/ヴィルコ・フィラチ 美術/オリヴィエ・ジャケット 衣装/ローズ=マリー・メルカ

 cast ローラ・クレトン ダフネ・ベヴィール マリールゥ・ロペス=ベニテス ローラ・ジョバンネッティ

 

 △青髭のモデルは、ジル・ド・レイ

 青髭をあつかったベローの小説も、グリム童話も読んだことはない。

 なんでこんなに本を読まないんだろうっていうくらい、恥ずかしい話だ。

 もしも漫画になってたら読んだかもしれないんだけど、活字って読むのめんどくさいんだよ~。

 で、そんな怠惰なぼくは、映画を観て、わかったつもりになる。

 この映画も、そうだ。

 耽美的な映像は非常に好みなんだけど、青髭が花嫁を見つけようとする宴は、

 ちょっとしょぼい感じがしてしまうのは、予算のせいなのかしら?

 映画の構成として興味をひくのは、姉妹が2組出てくることだ。

 童話を読んでいる幼い姉妹と、青髭の見合い相手になる姉妹なんだけど、

 童話の世界が現実だとすれば、青髭の世界は15世紀の幻想に近い。

 原作だと童話を読んでいる姉妹の部分はないらしいから、かなり手が入ってるんだろう。

 なんだかまったく独立したふたつの世界っていう印象なので、

 どうして現実部分が撮られたのかは、ちょっとよくわからない。

 映画の佳境、青髭の首が皿に乗せられているくだりでは、

 多くの人達が『サロメ』を指摘してる。

『サロメ』がモチーフになっているかどうかってことは、

 なるほど、たしかに『サロメ』の絵を観るかぎり納得はするんだけど、

 青髭の妻になる妹が、サロメに見立てられるのかといえば、

 ちょっと人間関係が違うような気もするんだよな~。

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スペル

2013年02月22日 15時56分20秒 | 洋画2009年

 ◇スペル(2009年 アメリカ 99分)

 原題 Drag Me to Hell

 監督 サム・ライミ

 出演 アリソン・ローマン

 

 ◇お年寄りは大切に

「自分では大した事ないって思ってる事でも逆恨みされちゃうんだぜ」

 とかいう標語か教訓が出てきそうな寓話で、良くも悪くもサムライミって感じだけど、怪奇現象の根源を求めてゆく探偵劇要素の濃い方が好かったような気がするんだけど、そんなことないんだろうか。

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96時間

2012年11月21日 16時06分26秒 | 洋画2009年

 ☆96時間(2009年 フランス 93分)

 原題 Taken

 監督 ピエール・モレル

 出演 リーアム・ニーソン、マギー・グレイス、ファムケ・ヤンセン

 

 ☆父親はこうでなければ

 肌が合う合わないってのはあるもので、ぼくはリュック・ベッソンの作品はどうもいまひとつ肌が合わなかった。だから、ベッソンが絡んでると知って、彼の面白さがよくわからない僕としては観るまで眉を顰めてたんだけど、いや、どうしてどうして、おもしろかった。それも凄まじくおもしろかった。

 娘のためなら命もいらない凄腕の元諜報員親父が冷静沈着に大奮迅という凄まじくも単純明快な筋立てながら、ていうか、ベッソンはいつでも単純明快か、ともかくもそれが今回は吉と出たとしかおもえないな。

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第9地区

2010年04月14日 21時45分12秒 | 洋画2009年

 ☆第9地区(District 9)

 

 母船がアパルトヘイトの都市の天に現れる事からして主題は重いけど、黒い液が体液なのか燃料なのかもわからず魔法の液みたいでこんなの開発するエビは凄い。CGの見事さはスラムの人間のように異星人が動く所かな。

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グラン・トリノ

2010年03月08日 23時51分06秒 | 洋画2009年

 ◎グラン・トリノ

 

 演出だとしたら、クリント・イーストウッドはやっぱりたいしたものだ。昔はぺっと吐き飛ばしてたんだけど、唾がべぇろ…っと吐かれてしまうのに老いを感じる。そういう演出なんだ。筋は目新しいものではないけど、指拳銃が似合う老人は他にはいないね。けど、自分の命のひきかえとゆうのはどうかな。グラントリノに乗ってほしかったなあ。

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天使と悪魔

2010年02月18日 15時11分22秒 | 洋画2009年

 ◇天使と悪魔(2009年 アメリカ 138分/146分)

 原題/Angels & Demons

 監督/ロン・ハワード 音楽/ハンス・ジマー

 出演/トム・ハンクス アイェレット・ゾラー ユアン・マクレガー ステラン・スカルスガルド

 

 ◇ローマの休日サスペンス版

 京や奈良が舞台だったらどうなるのかな。バチカンでローマ教皇が殺されてつぎつぎに枢機卿が狙われてゆくように、とある宗教の大僧正が殺され、その跡継ぎ候補が順に殺されていくって物語になるのかしら?

 それはまず無理だろう。ていうか、日本では凄い抗議が殺到しそうだ。

 欧米は娯楽と伝統を冷静に分けてるからできるんだろうけど、まあそれはともあれ、ローマの名所めぐりみたいな感じになっちゃうのは仕方ないことなのかもしれないけど、殺される前に着けよってな話だわね。

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2012

2010年01月19日 00時21分27秒 | 洋画2009年

 ◇2012(2009年 アメリカ、カナダ 158分)

 原題/2012

 監督/ローランド・エメリッヒ 音楽/ハラルド・クローサー トマス・ワンダー

 出演/ジョン・キューザック アマンダ・ピート ダニー・グローヴァー ジョージ・シーガル

 

 ◇ノアの方舟

 映像はやっぱりエメリッヒで、まあそれはさておき、ハリウッド映画は大概夫婦が離婚してるか別居してるかで子供を送っていくか見送るかで始まり家族か夫婦が復活して終わる。さすが飽きる。

 で、古代マヤの暦を解釈したものの中に、2012年の冬至あたりに人類が滅亡するとかいう人間がいて、まあそれなりに世界で知られた話題だったんだけど、マヤの伝説をしのぐために考え出されるのが方舟計画ってのが、いかにもキリスト教圏っぽいっておもっちゃうんだけど。

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レッドクリフ PartII -未来への最終決戦-

2009年03月20日 12時21分21秒 | 洋画2009年

 ◎レッドクリフ Part2 未来への最終決戦(2009年 中国、香港、日本、台湾、韓国 145分)

 原題/赤壁2:決戰天下

 監督/呉宇森(ジョン・ウー) 音楽/岩代太郎

 出演/金城武 トニー・レオン リン・チーリン ヴィッキー・チャオ 中村獅童

 

 ◎フランス版が見たい

 ジョン・ウーのことがうらやましくなるくらい、奔放に撮ってる。

 いや、それにしてもリン・チーリンは綺麗だった。映画はこれがデビューなんだね。知らなかった。で、そこであらためておもうのはヴィッキー・チャオの可愛さだ。このときが絶頂で、やっぱり『少林サッカー』のインパクトは強かったんだね。

 ただまあ、なんにしても長いわ。あまりに長尺すぎて戦いに厭きる。

 やっぱりフランス人はそういうところが賢くて、これは長くてだれるから切っちゃおうよっていう姿勢はいいね。1と2を合わせて145分の『レッドクリフ特別版 RED CLIFF INTERNATIONAL VER.』とかいうのを編集しちゃったらしいんだけど、それがいいな。赤壁の戦いについては三国志好きならもう誰もが知ってるわけで、いまさらなにか説明してもらう必要もないような気もするんだけど、そうでもないのかな。

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