◎利休(1989年 日本 135分)
監督・企画・生花・カメオ出演/勅使河原宏 音楽/武満徹
出演/三國連太郎 山崎努三田佳子 松本幸四郎 中村吉右衛門 山口小夜子 細川護煕
◎野上彌生子『秀吉と利休』より
ドナルド・リチーまで出演してるぞ。
勅使河原宏の人脈の広さをまざまざと見せつけられる。
それと、豪華絢爛ながらも侘び茶をよく心得た演出は、さすがというほかない。
夜明け前の朝露に濡れた椿といい、水盤に散る梅といい、これもまた、さすが、草月流の家元だけあって見事というほかない、てなことを素人のぼくが口にことすら憚られるよね。
ただ、人物描写については、いろいろな批評があるだろう。やけにリアルというか、あまりに生臭すぎる秀吉と利休だったしね。ぼく個人としては、人間臭いところが好きだからいいんだけど。
まあそのあたりは演出家の趣味なわけで、そういう人物設定が気に入るかどうかは観客それぞれだ。
そうしたことは、衣装にも、装飾にも、いえる。絢爛たる桃山時代の頂点といっていい時代と舞台なんだから、豪華にならざるをえないよね。
そんな世界の中に、なまぐさくて仕方のない主役ふたりがいるわけで、このアンバランスさはひととおりじゃない。
やっぱりそのあたりの不均衡ぶりってのは、生け花に通じるのかな?
生け花の芸術性は、不均衡な安定にあるんじゃないかとおもうことがある。ひとつひとつはとんでもなく捻じ曲がっているのに、それが大きなひとつの作品として仕上がったときには、すべての花や茎がふしぎな均衡と調和に包まれている。
この映画も、そんな匂いがあるんだわ~。