Kinema DENBEY since January 1. 2007

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▽=☆

日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里

2007年05月31日 01時04分46秒 | 邦画1951~1960年

 ◇日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里(1957年 日本 86分)

 監督/森一生 音楽/鈴木静一

 出演/菅原謙二 高松英郎 根上淳 品川隆二 川崎敬三 船越英二 伊達三郎

 

 ◇山中峯太郎『敵中横断三百里』より

 

 建川美次を知っている日本人は、現在、どれくらいいるんだろう?

 日露戦争の最中、明治38年1月。

 建川はその戦功により、明治38年2月、第2軍司令官の奥保鞏から感状を受けて一躍有名になり、これを山中峯太郎が小説化し、昭和37年に映画化されたのが、この作品ってことになる。

 だから、日露戦争について知ってる人間しか、たぶん、観ないんだろう。

 まあ、なんもわからんっていう人にもわかるように、始まって10分は、当時の事情について事細かに語ってくれてるんだけど、実をいうと、これが余分だ。黒澤明と小国英雄が共作している脚本とはおもえないような冗漫さで、建川美次がいきなり児玉源太郎に呼び出されるところから始まればいいのにね。

 あ、ちなみに、この筋立てが『隠し砦の三悪人』に昇華してるわけだから、そういうことからいえば『スター・ウォーズ』の原点ってことにもなる。

 それにしても、柳永二郎の大山巌は似過ぎだろ!って叫んじゃうくらい、よく似てる。似てるといえば、中村伸郎の児玉源太郎も、うん、よく似てる。

 それと、ロケ地は北海道だと想われるんだけど、鉄道といい、ロケセットといい、馬の群れといい、なにからなにまで予算が掛かってる。どこから見ても、超大作だ。

 問題は、良い役者が揃っているのに、さっき書いたふたりの他には、主役の菅原謙二と高松英郎しか見分けられないことだ。

 そのあたり、時代が違うのを痛感しちゃうわ~。

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続・宮本武蔵 一乗寺の決闘

2007年05月16日 00時54分30秒 | 邦画1951~1960年

 △続・宮本武蔵 一乗寺の決闘(1955年 日本 103分)

 英題/Duel of Ichijoji Temple/Master Swordsman: Duel at Ichijoji

 監督/稲垣浩 音楽/団伊玖磨

 出演/三船敏郎 鶴田浩二 岡田茉莉子 八千草薫 木暮実千代 平田昭彦 加東大介

 

 △巌流島までもたない

 観たとき、もしかしたら、ぼくは体調が悪かったのかもしれない。

 稲垣浩は、ぼくのとっても好きな監督で、ことに『無法松の一生』と『風林火山』は大好きで、この2本さえあれば、稲垣浩の名は永久に不滅だとおもったりもするんだけど、どういうわけだろう、なんだか悲しくなる出来栄えだった。

 いや、まじな話、三船敏郎でなければ評価するのも辛くなってしまうくらいの印象だった。

 稲垣浩はいったいどういうつもりで演出についていたんだろうっていうくらい、観客の要望に答えて、大掛かりな立ち回りばかり、させられたんじゃないかな。もしかしたら、撮りたいものを撮ろうとおもったんじゃないのかもしれない。

 ただ、ずっと前に、この時代の稲垣浩の時代劇も何本か観たとき、似たような印象を持ったことをおもいだした。

 完結篇は鶴田浩二の小次郎に焦点があたるそうで、余計にちぐはぐになるような印象になるような気がしてならないんだよな~。

 いったい、ぼくはどうすればいいんだろう?

 ていうより、なんで又八の役が変わってんだよ?!

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宮本武蔵(1954)

2007年05月15日 00時55分36秒 | 邦画1951~1960年

 ◇宮本武蔵(1954年 日本 94分)

 英題/Samurai I: Musashi Miyamoto

 監督/稲垣浩 音楽/団伊玖磨

 出演/三船敏郎 三國連太郎 八千草薫 岡田茉莉子 小沢栄太郎 加東大介

 

 ◇稲垣・三船版、3部作の1

 たしかに、アカデミー外国語映画賞特別賞を受賞した記念すべき作品なんだけど、なんだか、三船敏郎がかわいそうになっちゃったような気がするのは、ぼくだけ?

 イーストマンカラーはこの時代の流行なんで仕方ないんだけど、とってつけたような色彩な感じがして。とはいえ、富士フィルムの東映の錦之助版の色も似たような感じだけどね。

 あ、ちなみに錦之助の武蔵はとっても好きで、求道的な人間を演じするのは三船さんはあんまり得意じゃないのかも。そういうことからいうと、武蔵はちょっと似合ってない気がしないでもない。

 襤褸を纏って吼えているのは好いんだけどな~。殻に押し込めてしまうっていうか、時代的の様式に合わせようとすると、かえって大人しくなっちゃうんだよね。稲垣浩はどうしても綺麗な演技と立ち回りの美しさを考えちゃうんで、そういうところが三船さんの場合は、裏目に出ることがある。

『風林火山』と『宮本武蔵』の差はそのあたりにあるんじゃないだろうか。

 一方で、八千草さんのお通は適役だとおもうんだけどね。ただ、すこしばかり気の強さが出すぎるきらいはある。入江若葉さんのような初々しさやなよなよした女々しさはないから、どっちがいいかっていうのは、もはや、趣味の領域だわ。

 三國連太郎の又八は、木村功の又八よりも好い感じだけど、三國さんの場合、吐夢版の沢庵が適役だったから、なんともいえない。

 てなことを観てくると、これだけ映画化されすぎた宮本武蔵は、どうしても役者や演出をくらべちゃう。中身は、とくに第一部は筋立てがほとんどおんなじだから、余計そうなる。時代っていうんだろうか、東宝も東映も日活も、みんな、映画化した。だから監督や役者で見分けるしかない。

 いずれにせよ、好い時代だったんだろうな~。

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決闘鍵屋の辻

2007年05月13日 13時32分19秒 | 邦画1951~1960年

 ☆決闘鍵屋の辻(1952年 日本 81分)

 監督/森一生 音楽/西梧郎

 出演/三船敏郎 加藤大介 志村喬 千秋実 徳大寺伸 左卜全 浜田百合子

 

 ☆森一生の解釈による傑作

 こういう映画が見たい。

 三船敏郎の一番油が乗ってる時期だったんだろう。役者は東宝の面々なんだけど、これがまたみんな見事だ。

 画面はまるで記録映画のようで、実際、貴重なフィルムだとおもうんだけど、なんでこの作品が埋もれてるんだろう?

 ていうか、この頃の人達は荒木又右衛門っていっても知らないんだろうなぁ。

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戦国無頼

2007年05月11日 01時15分50秒 | 邦画1951~1960年

 ◎戦国無頼(1952年 日本 135分)

 英題/Sword for Hire

 監督/稲垣浩 音楽/団伊玖磨

 出演/三船敏郎 三國連太郎 市川段四郎 山口淑子 浅茅しのぶ 志村喬 東野英治郎

 

 ◎井上靖『戦国無頼』より

 天正元年、琵琶湖のほとり。

 自由自在の戦国活劇、秀作。

 井上靖の原作を、稲垣と黒澤が共同執筆してるなんて、なんてまあ、豪華なんだ。

 いちおう、浅井長政の家来っていう設定にはなってるけど、佐々木疾風之介、立花十郎太、鏡弥平次の3人はたぶん架空の侍で、もちろん、疾風之介の許嫁にして十郎太が横恋慕して信濃へ逃げ連れる加乃も、疾風之介に惚れてしまう野武士娘おりょうも、たぶん架空。

 だから、3人が小谷城から焼け出され、3年後に丹波の八上城で守り方に疾風之介、攻め方に十郎太、さらに湖賊となって、おりょうに惚れてしまう弥平次とかいう設定になっても、なんにも歴史年表には関係ないし、こういう戦国時代劇は、いまはなくなっちゃった。

 なんでなんだろう、こんなにおもしろいのに。

 悲しい所だ。

 ちなみに、この映画、セットがどうにも多すぎるんで、迫力の面ではすこしばかり物足りない。

 ま、ゆるそう。

 だって、ほんとにおもしろかったし。

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血槍富士

2007年04月10日 19時58分14秒 | 邦画1951~1960年

 ◎血槍富士(1955年 日本 94分)

 監督/内田吐夢 音楽/小杉太一郎

 出演/片岡千恵蔵、月形龍之介、加藤大介、植木基晴、植木千恵、喜多川千鶴、赤木春恵、進藤英太郎

 

 ◎『道中悲記』のリメイク

 いやまあ東映が戦後おもいっきりちからをこめて撮り上げた作品のひとつなんだけど、とにかく当時、内田吐夢の復員第一作をどうするかっていうのはもう大変な悩み事だったんじゃなかろうか。

 そうしたことからいえば、マキノ満男、伊藤大輔、小津安二郎、清水宏らの尽力による映像化といっていいし、千恵蔵御大としても一肌脱がなくちゃいけないってことで植木家も総動員で協力したって感じがひしひしと伝わってくる。

 ただ、実際にこの作品はおもしろんだよね。

 酒乱のあるじのために決して強くもない鑓持ちが腕っこきの武士たちを相手になりふりかまわぬ仇討を挑むっていう、そこへ行くまでに紆余曲折あるものの単純にいってしまえばそういう物語なんだけど、いやまじ、千恵蔵御大、凄いわ。

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隠し砦の三悪人

2007年04月01日 11時46分08秒 | 邦画1951~1960年

 ☆隠し砦の三悪人(1957年 日本 139分)

 英題 The Hidden Fortress

 監督/黒澤明 音楽/佐藤勝

 出演/三船敏郎 上原美佐 藤田進 千秋実 藤原釜足 中丸忠雄 加藤武 土屋嘉男

 

 ☆敵中突破三百里・戦国版

 実は、長短のバージョンがあるのだ。

 劇場では短い方が主に公開されてきたんだけど、いくつかカットされて短くなってる場面がある。

 まあ、あんまり違いはないものの、秋月領から山名領へ入るというところを砂の上に丁寧に書いて説明してくれるところとか、雪姫が謡を口ずさむところとか、間壁六郎太と田所兵衛が鑓の決闘をしたりするときとか、ちょっとずつ、劇場公開のときにつまんだところをもとに戻してる部分がそれだ。

 ま、実をいえば、短い方がおもしろい。

 この映画を初めて観たのは、大学1年のときだ。銀座の並木座で、満員の観客で観た。三船さんが、馬上、両足をふんばって刀を八双に構え、敵を追う場面。

「いや――っ」

 っていう三船さんの叫びがそのまま、劇場の中で「うおっ」という叫びになった。

 いや、ほんと。あのときほど、劇場の中で声が上がったことはなかった。すげーおもしろい映画があるもんだとおもった。以来、何度、名画座に足を運んだことだろう。今回も、久しぶりに銀幕で見ると、馬上の三船さんはやっぱり感動的ですらある。雪姫の上原美佐も、相変わらず甲高い声だ。でも、最後に敷居を踏むのだけはいかんね。

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蜘蛛巣城

2007年03月31日 11時43分15秒 | 邦画1951~1960年

 ☆蜘蛛巣城(1957年 日本 105分)

 英題 Throne of Blood

 監督/黒澤明 音楽/佐藤勝

 出演/三船敏郎 山田五十鈴 千秋実 土屋嘉男 木村功 宮口精二 中村伸郎

 

 ☆ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』

 資金不足が悔しい。、なおさら悔しい。

 さぞかし、北の舘の叛乱鎮圧を描きたかった…妖姥の糸巻き館も建てたかった…本丸御殿も実際に建てたかった…んだろうなあ。他の城についても、セットを組んで物語をわかりやすくしたかったんだろう。ほんと、その辺りが口惜しい。

 ま、この映画について、なんだかんだいったところで始まらないんだけどね。

 ちなみに、ぼくは、黒澤明の全作品とも「最初に観るのは劇場で」と、大学1年生のとき、かたく誓った。だから、どれだけ古い作品でも、劇場で公開されない内は観ないと決めてた。でも、そのせいで、この作品だけはずいぶんと後まで観られなかった。

 他の作品は『並木座』か『八重洲スター座』あたりで観られたんだけど、どういうわけか『蜘蛛巣城』には縁がなかった。だから、これが観られたときの感激たるや、大変なものだった。いや、ほんと、目を皿のようにして観るってのは、そのときの僕みたいな状態をいうんだろね。

 それにしても、ひさしぶりに観てみると、こんなに単純で場面も少なくしかしおもしろいとは。

 記憶とは妙なものだ。いやぶっとんだ。江崎孝坪の美術考証によって作り上げた村木与四郎の美術は凄いし、東宝特殊技術部による円谷英二の特殊技術は目を瞠るものがある。

 美術てのはここまでこだわるのかと。

 蜘蛛巣城跡の柱がそうで、墨書きしてそれが木材に十分染み込んだ後、徹底的に乾かして、表面の年輪だけが浮き出て残るまで磨き込まないとこうはならない。尋常じゃない手間だ。その柱の建てられた城跡が砂嵐のカット繋がりで現役の城によみがえってゆくのがまた凄い。ラストもおんなじ撮り方だけど、いや、三船敏郎の首を矢がつらぬくカット繋ぎといい、この映像はまじ凄すぎる。

 ちなみに、流鏑馬指導は大日本弓馬会範士金子家教と大日本弓馬会教士の遠藤武だったそうな。

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丹下左膳 こけ猿の壷

2007年03月23日 12時43分09秒 | 邦画1951~1960年

 ◇丹下左膳 こけ猿の壷(1954年 日本 87分)

 監督/三隅研次 音楽/服部正

 出演/大河内傳次郎 高峰三枝子 三田登喜子 高堂國典 香川良介 伊達三郎

 

 ◇山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』のリメイク

 けど、山中版を凌ぐのは難しいね。

 でも衣笠貞之助の贈り物の脚本として三隅研次の第一回作品となったそうで、なんだか昔の黄金時代の音色が聞こえてきそうだ。

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続丹下左膳

2007年03月22日 12時40分37秒 | 邦画1951~1960年

 ◇丹下左膳・続丹下左膳(1953 日本 82分/89分)

 監督/マキノ雅弘 音楽/鈴木静一

 出演/大河内傳次郎 水戸水子 山本富士子 沢村昌子 市川小太夫 澤村國太郎

 

 ◇林不忘『丹下左膳 乾雲坤竜の巻』

「しぇいは丹下、名はしゃぜん。およよ」

 ていう名台詞を知ってる人は、もう少なくなってきたのかもしれない。

 ま、それも仕方のないことなんだけど、この2本は、合わせて1本の物語になってる。

 なんたって、前篇の橋の上の立ち回りは凄い。

 たしかに、この頃は大河内傳次郎も年をとって、貫禄ばかりが前面に出てしまってるもので、左膳の凄みのある魁偉さは影を潜めてる。けど、二役の大岡越前の方は、その分、かなり好い。御用堤燈が押し寄せる佳境はなかなか見せる。映画の醍醐味ってやつだろう。

 監督が乗らないまま撮った物だって話も聞いたけど、物語性は充分すぎるくらいある。

 この後、左膳は魁偉さだけが面白がられ、なんだか正義漢のように扱われるようになってくるけど、そんなことないのは、これを観ればよくわかる。

 過去の姿も観ていけば、際立った悪党だという事もわかるんだよね。

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曽我兄弟 富士の夜襲

2007年03月19日 15時31分07秒 | 邦画1951~1960年

 ◇曽我兄弟 富士の夜襲(1956年 日本 110分)

 監督/佐々木康 音楽/万城目正

 出演/東千代之介 中村錦之介 高千穂ひづる 北大路欣也 植木基晴 植木千恵

 

 ◇建久4年(1193年)5月28日、曾我兄弟、仇討ち

 これぞ、東映イーストマン。

 往年の東映時代劇の骨頂って感じなんだけど、錦之助の前髪はちょいと戸惑うわ~。

 高千穂ひづるはとっても綺麗で好い感じ。こういう女優さんは現代ではちょっといなくない?

 なにより、源頼家を演じてるのは、北大路欣也なんだけど、もしかしたら、この作品がデビュー?

 同じ年に『父子鷹』があるから、そっちがデビューか。

 ま、それにしても、曾我兄弟の仇討ちは姿を消して久しいけど、なんでなんだろ?

 忠臣蔵より曾我物語の方が知名度が低いからかな?

 やっぱり時代が遠すぎるのかな?

 そうなってくると、どんどん歴史劇や時代劇の幅が狭くなっていくような気がして、とってもいやな感じなんだけど、まあ、観客の質が変わってきたってことがいちばん辛いところかもしれないね。

 堂々とした時代劇はもう新作ではありえないんだろか…。

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あすなろ物語

2007年02月21日 01時46分37秒 | 邦画1951~1960年

 ◎あすなろ物語(1955年 日本 108分)

 監督/堀川弘通 音楽/早坂文雄

 出演/久我美子 久保明 浦辺粂子 岡田茉莉子 木村功 根岸明美 小山田宗徳

 

 ◎井上靖『あすなろ物語』

 無駄のない脚本と安定したカメラが印象的な良品って感じ。

 脚本が黒澤明っていうところが、なんだか堀川弘通との絆をおもわせるね。

 黒澤作品よりも自然な感じがするんだけど、どうかな。

 黒さん、肩を張らない方が好いよ!

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ブンガワンソロ

2007年01月19日 12時34分59秒 | 邦画1951~1960年

 ◇ブンガワンソロ(1951年 日本 92分)

 監督/市川崑 音楽/飯田信夫

 出演/池部良 森繁久彌 藤田進 久慈あさみ 若山セツ子 東野英治郎 伊藤雄之助

 

 ◇Bengawan Solo

 インドネシアの音楽にクロンチョン(Kroncong)っていうジャンルがある。

 昔からある大衆音楽なんだけど、その有名な作曲者にグサン・マルトハルトノって人がいて、この人が『ブンガワンソロ』を作詞作曲した。戦前のことだったみたいで、ジャワ戦線ではよく知られてたみたいだ。戦後、日本に輸入されて歌手で声楽家の松田トシが訳詞して大ヒットした。

 で、それを映画化したのがこの作品なんだけど、原曲の『ブンガワンソロ』に出遭っていく日本兵の話かとおもってたら、そうじゃなくて、脱走兵の話だった。ちょっと肩透かしを食らった感じではあったけど、役者は好い。なんつっても、現地人のような若山セツ子が愛らしいしね。

 ただ、まあ、勝手にこちらが想像してたのがいけなかったかもしれないけど、やっぱり、ブンガワンソロについて語ってほしかった。

 それと、脱走兵物語にしてはリアルさにちょい欠けな感じがするのは、なんでだろ?

 戦後たったの6年しか経ってないのに、これは不思議だ。

 とはいえ、美術は相当に好い。

 ただ、市川崑のこの時期は、まだ職人技のようなカッティングがないんだね。

 いったい、いつから崑さんは自分の画を見つけたんだろう?

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眼の壁

2007年01月10日 14時21分59秒 | 邦画1951~1960年

 ◇眼の壁(1958年 日本 95分)

 監督/大庭秀雄 音楽/池田正義

 出演/佐田啓二 鳳八千代 朝丘雪路 織田政雄 宇佐美淳也 渡辺文雄 左卜全

 

 ◇清張好みの題名

 未だに題名の意味がよく理解できていないのかもしれないんだけど『眼の壁』ってのは、なにを意味してるんだろう?

 中学高校と、ぼくの読む小説はたいがい探偵小説で、それも戦前から戦後まもない頃に世に出た作品で、簡単にいってしまえば、江戸川乱歩、横溝正史、小栗虫太郎、浜尾四郎、夢野久作とかで、松本清張は古代史物は手に取ったけど、社会派推理小説とかいわれてて、どうも学生のぼくには関係のない世界みたいで、触手が動かなかった。

 やっぱりサラリーマンが読み手だったんだろね。だから、この原作を読んだのは、社会に出て随分経ってからだ。でも、ほとんど忘れちゃった。これはほかのどんな小説でもそうで、読んだ数も少ないくせに、恥ずかしながらまるで憶えてない。そんな人間が題名の意味とかいってるんだから、駄目だよね。

 ちなみに、清張の小説は『眼の壁』みたいに抽象的なものが多い。当時の流行だったのかもしれないんだけど、なんだか文学的っていうんだろうか、よく考えないとわからない。そういう感じの題名でいちばんわかりやすいのは『砂の器』だけど、これについては、いつか触れる機会もあるだろう。

 あ、でも、ひとつだけ。ぼくは『砂の器』がかなり好きで、それを観て以来、カメラマンの川又昂のことが気になってきた。で、この作品だ。撮影チーフ川又昂!おお、とおもった。撮影は当時の松竹をしょって立ってるような厚田雄春で、小津の作品では無くてはならない存在だけど、ぼくにとっては「おお、川又昂!」なんだよね。

「この時代から清張物で地方ロケをしてたのね~」

 とかおもうだけで、なんとなく嬉しかったりするんだ。

 瑞波ロケの雰囲気も良で、病院や郵便局の雰囲気もよく、もはや、この時代の映画は、映像資料としての価値が出てきたんじゃないかな。それと松竹といえば、やっぱり佐田啓二で、これは大庭秀雄との「君の名は・コンビ」で考えられていたのかしら?ちょい根暗だけど、それが上司の仇を討つ役柄にあってたのかな?

 あと、役者でいえば、宇佐美淳也と左卜全は好演。音楽も、不気味で好い。脚本も、強引なところはあるけど、ぎっしり詰め込んだ印象は充分ある。死体処理のトリックについてなんだけど、濃硫酸と重クローム酸ソーダを混合した溶液でほんとに死体が溶けるのかどうか、ぼくにはさっぱりわからない。

 ただ、松本清張は、実際にあった事件にヒントを得たようで、足立区にあるの日本皮革(現:ニッピ)の工場で起こったらしい。被害者の死体を、今も触れた混合溶液であらかた溶かし、さらに塩酸と硫酸の混合液で全部溶かしてしまう計画が練られたとか。なんともおぞましい話で、こうして書いていても気味が悪い。でも、この溶液が、映画では重要な道具になってんだよね。

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黒い画集 あるサラリーマンの証言

2007年01月08日 12時51分31秒 | 邦画1951~1960年

 ◎黒い画集 あるサラリーマンの証言(1960年 日本 95分)

 監督/堀川弘道 音楽/池野成

 出演/小林桂樹 中北千枝子 原知佐子 織田政雄 西村晃 平田昭彦 中丸忠雄

 

 ◎さすが橋本忍

 回想が始まった時、おもわず、お得意の展開だな~とおもったけど、ほんと、物語作りの上手さは流石だ。

 若き日の西村晃がいかにも刑事臭くて、ぎらぎらしてて好い感じだし。とはいえ、なんとも内臓をえぐられるような話の中身。ほんとに松本清張という人は、人間の裏側をとらえることに卓越してる。

 高度成長期、中堅企業に勤め、ようやく課長になったサラリーマンにとって、ようやく買い求めた一戸建てと糟糠の妻、そして可愛い愛人は、なにものにも替え難いものだ、というのが映画の前提になる。1960年代の日本は、まさしくそうだろう。

 愛人のアパートがある新大久保に通い詰め、たまさか、近所に住んでいる保険外交員とすれちがい、会釈してしまったことで、外交員がとある殺人事件の容疑者になったとき、アリバイの証人に立たされるんだけど、新大久保で出くわしてしまったため、証言すれば身の破滅だとおもいこみ、会っていないと嘘をついたことから、雪崩が起きるような転落が始まる。

 誰もが自己防衛に走り、おのれの利益だけをわがままに追い求める。それが重なり合うように衝突して、なにもかも失くしてゆくという構成は、胃が痛くなるほど現実味を帯びてる。松本清張は短編が映像化されたこの作品を絶賛したそうだけど、それはなんといっても橋本忍の手腕だよね、きっと。

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