Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

ママの遺したラヴソング

2014年06月03日 00時10分54秒 | 洋画2004年

 ◎ママの遺したラヴソング(A Love Song for Bobby Long 2004年 アメリカ)

 スカーレット・ヨハンソンはよほどハリウッドで可愛がられているようだ。

 そんな気にさせる話だったし、

 彼女を子役の頃から見てると、

 着実に良い作品に巡り合ってるような気がしてくる。

 ここでも、ジョン・トラボルタに胸を借りた感じだけど、

 なんでこんなに愛されるんだろうって、ちょっとふしぎな気にもなる。

 トラボルタが有能ながらも小説家として大成できず、

 それが嵩じて大学教授の職も追われ、うだつのあがらない暮らしをしながら、

 自分よりも未知の才能を秘めた青年を同居させ、

 かたくなに小説を書かせようとしているうらぶれたインテリ中年を演じるっていうのは、

 ちょっとばかり意外ではあったけれども、

 まあ、なんとかこなしてるあたりはさすがだ。

 好かったのは、トラボルタのかぶってる帽子で、

 麦わら帽子なんだけどちょっぴりウエスタンだったりするところがまたいい。

 ただ、自分に自信のない者の常として、

 なにかを引き合いに出すか、あるいは古典や定款に頼りたがるものだ。

 ここでのトラボルタも例外ではなく、故人の言葉をしきりに口にする。

 自分自身のことばを出すことに勇気がなくなってしまった証だ。

 でも、冒頭に掲げられる、

『人は冒険をやめてはならぬ

 長い冒険の果てに

 出発点へ辿り着くのだから

 そして 初めて居場所を知るのだ』

 っていう、T・S・エリオットの『四つの四重奏』なる詩は、

 この映画のすべてを語っているわけだから、

 あながち、かつての名言は、

 単なる言葉遊びってわけでもないんだね。

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あるいは裏切りという名の犬

2013年10月24日 16時07分16秒 | 洋画2004年

 ◎あるいは裏切りという名の犬(2004年 フランス 110分)

 原題 36 Quai des Orfevres

 staff 監督・脚色・台詞/オリヴィエ・マルシャル

     演出/フレデリック・テリエ

     脚本/オリヴィエ・マルシャル フランク・マンクーゾ ジュリアン・ラプノー

     共同脚本/ドミニク・ロワゾー 撮影/ドゥニ・ルーダン

     美術/アンブル・フェルナンデーズ 衣装/ナタリー・デュ・ロスコー

     音楽/エルワン・クルモルヴァン アクセル・ルノワール

 cast ダニエル・オートゥイユ ジェラール・ドパルデュー ヴァレリア・ゴリノ

 

 ◎オルフェーヴル河岸36番地

 パリ警視庁の所在地の番号なんだけど、

 この看板を盗み出して、先輩の刑事の定年を祝うってのは、

 なんとも洒落てるのかどうかわからないけど、

 ともかくその場面だけで、ダニエル・オートゥイユの人望が察せられる。

 ま、そんな小技はさておき、実によくできてる。

 いや、まじ、ひさしぶりに、

 こんなけ込み入った話なのに上手に作った脚本に出会ったわ~。

 ダニエル・オートゥイユもジェラール・ドパルデューも、

 とてもじゃないけど、美男とはいえない。

 ふたりとも特徴的な鼻をして、アラン・ドロンみたいな美しさは欠片もない。

 フランス人は美意識と芸術性の塊みたいなものなんだけど、

 それ以上に人間性っていうか、個性を愛する。

 人間味の豊かな人間を好んで、作品やその内容を愛する。

 ちょっと日本に対してはえこ贔屓みたいなものがあって、

 そういうときは目が曇りがちになるんだけど、

 それ以外では、文化や芸術に対して実に感性が高い。

 てなことで、このふたりの演技が好いんだ。

 結局のところは、恋人をめぐる三角関係がこうじて、

 庁内でもライバルになり、出世争いをし、罠に嵌め、

 あるいは裏切るっていう関係になっちゃうんだけど、

 そのあたりの筋の運び方が、どうにもうまい。

 画面も落ち着いた渋さで、これまたうまい。

 音楽がなんといってもしみじみと渋くて、まったくうまい。

 フレンチ・ノワールは見事に復活してるよね。

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ラヴェンダーの咲く庭で

2013年10月10日 22時51分46秒 | 洋画2004年

 ◎ラヴェンダーの咲く庭で(2004年 イギリス 105分)

 原題 Ladies in Lavender

 staff 原作/ウィリアム・J・ロック『Ladies in Lavender』

     監督・脚本/チャールズ・ダンス 撮影/ピーター・ビジウ

     美術/キャロライン・エイミス 衣裳デザイン/バーバラ・キッド

     音楽/ナイジェル・ヘス ヴァイオリン演奏/ジョシュア・ベル

 cast ジュディ・デンチ マギー・スミス ナターシャ・マケルホーン ダニエル・ブリュール

 

 ◎1936年、大英帝国コーンウォール

 話が前後しちゃうようで嫌なんだけど、

 2005年の春、やっぱりイギリスの海岸で、

 全身ずぶぬれの黒服の青年が発見されたっていうニュースが流れた。

 青年は病院に収容されたんだけど記憶喪失になってて、

 ただ、グランドピアノの絵を上手に描いて、ピアノも上手に弾いたもんだから、

 ピアノマンと呼ばれて、その正体が何者なのか色んな憶測がなされた。

 へ~、そんなロマンチックなことがあるんだ~と、そのとき、ぼくはおもった。

 結局、後になって、

 この青年が20歳のドイツ人だったってことが判明したんだけど、

 その名前とかが日本で公表されたのは、それからさらに後のことだ。

 で、このニュースが流れてまもなく、この映画が公開された。

 びっくりするほど、ピアノマンのニュースとよくにた内容だった。

 コンウォールの海岸に漂着したポーランド人の若者が、

 実はヴァイオリニストで、しかも相当な腕前で、

 かれを助けた老姉妹が胸をときめかせるんだけど、

 たまさかコンウォールに滞在していた、

 ドイツ人の若く美しい女性画家と知り合い、

 くわえて彼女の兄が世界的なヴァイオリニストだったものだから、

 彼女は彼の才能を開花させるために村からロンドンに連れ出してしまい、

 老姉妹は傷心のためで心が塞がれてしまうんだけど、

 やがて彼と彼女から手紙が届き、コンサートに招待されるって話。

 結局、ピアノマンの事件はあいまいなまま終わったんだけど、

 真実はなんだったんだろうね。

 ま、そんなこともあって、この映画は印象深いものになっちゃったけど、

 そうでなくても、とっても情緒的な作品に仕上がってて、

 ぼくとしては好きな部類の映画なんだよね~。

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11:14

2013年10月03日 00時24分11秒 | 洋画2004年

 ◇11:14(2004年 アメリカ、カナダ 88分)

 原題 11:14

 staff 監督・脚本/グレッグ・マルクス

     製作総指揮/サミー・リー デヴィッド・ルービン

              ヒラリー・スワンク スチュワート・ホール

     撮影/シェーン・ハールバット 美術/メイシー・ベナー

     特殊メイク/ジョエル・ハーロウ 音楽/クリント・マンセル

 cast ヒラリー・スワンク パトリック・スウェイジ レイチェル・リー・クック

 

 ◇5つの因果

 午後11時14分、疾走する車のフロントガラスに人間が降ってくる。

 という出だしは悪いものではないんだけど、

 おもな展開はこの後どうなるかっていうことではなくて、

 ここにいたるまで、どうなっていたかっていう話になってる。

 5つの筋立てがあって、

 それぞれの登場人物が友達だったり家族だったり浮気相手だったりして、

 各人物が、自分あるいは大切な人間が罪を犯したかもしれないと焦り、

 その隠蔽工作を自分なりにやっていく内に、

 事件や工作が数珠つなぎになっていって、

 やがて陸橋から放り投げた死体が、フロントガラスに激突するっていう、

 いわば、ウロボロスの蛇のような筋立てになってる。

 決して嫌いな構成じゃない。

 でも、なんか話が小さいのは、予算のせいなんだろうか?

 だから、

 田舎町のかなりどうしようもない人間たちの周辺で事件を起こすしか、

 ドラマとして作るのが難しかったんだろうか?

 てなことを、観てておもっちゃったわ。

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ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月

2013年10月01日 00時49分48秒 | 洋画2004年

 ◎ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月(2004年 アメリカ 107分)

 原題 Bridget Jones: The Edge of Reason

 staff 原作/ヘレン・フィールディング

          『ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月』

     監督/ビーバン・キドロン

     脚本/ヘレン・フィールディング アンドリュー・デイヴィス

         リチャード・カーティス アダム・ブルックス

     撮影/エイドリアン・ビドル 美術/ジェンマ・ジャクソン

     衣裳デザイン/ジャイニー・テマイム 音楽/ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

 cast レニー・ゼルウィガー コリン・ファース ヒュー・グラント ジャシンダ・バレット

 

 ◎題名、長っ

 なぜか、ヒットした映画の続編はタイにならない?

 ていうか、コメディの場合、

 タイやインドのような混沌とした印象のある不思議な土地が魅力的に見えるのかな?

 てなわけで、この作品もご多分に漏れず、東南アジアだ。

 ただ、さすがに続編になって予算が多くなったのか、

 けっこうロマンチックな特撮のワンカットが入れられてたりする。

 アパートメントからちょっと離れたアパートメントまでのワンカットとかがそうで、

 ダブル・ネガティブ社が視覚効果を担当してたりする。

 まあ、アメリカ国内だけでラブコメを展開するのは派手さがないし、

 どうしても大掛かりな設定と舞台にぶちこんで、

 ブリジットを追い込んでいかないと、結婚まで持ち込めないから、

 これはもう仕方がないんだけどね。

 にしても、

 いつもながら感心するのはコリン・ファースとヒュー・グラントだ。

 英国王や首相の役まで演じるふたりが、徹底した妙な男を演じるのが、

 いかにも楽しい。

 ところで、タイとかが舞台になると、なんで麻薬の話がよく絡むんだろう?

 いまだに東南アジアは麻薬の密輸の温床になってるんだろか?

 ぼくにはまるで縁のない世界だから、よくわからないんだけど、

 もしも麻薬の密輸に巻き込まれたりしたら、えらいことだ。

 ま、そんなことはともかく、

 男も女も恋愛中に共通してるのは、

 相手が、仕事にしても収入にしても、格上だとかおもってると、

 ついつい、その不釣り合いさに歪な劣等感を抱いてしまい、

 悩まなくてもいいことを悩んだりしちゃうことだ。

 これはまあ全世界に共通してるんだけど、

 実は、劣等感を抱いてるのは自分だけで、相手はあんまり考えてない。

 だって恋愛は、身分やお金を対象にしてするもんじゃないしね。

 とはいえ、

 そりゃあ、人も羨むような仕事をしてたり、

 お金がいっぱいあるに越したことはないけど、

 世の中、バイタリティがあれば、多少のことはすっとばせるものさ、

 ってなことを、ブリジットが証明してみせるのがテーマなんだろね。

 実際、そうであってほしいもんだわ。

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セルラー

2013年09月26日 12時35分36秒 | 洋画2004年

 ◇セルラー(2004年 アメリカ 95分)

 原題 Cellular

 staff 監督/デイヴィッド・リチャード・エリス

     原案/ラリー・コーエン 脚本/クリス・モーガン 撮影/ゲイリー・カポ

     美術/ドメニク・シルヴェストリ ロバート・グールド ジェームズ・ヒンクル

     衣装デザイン/クリストファー・ローレンス 音楽/ジョン・オットマン

 cast キム・ベイシンガー クリス・エヴァンス ジェイソン・ステイサム ジェシカ・ビール

 

 ◇邦題が原題のままなわけ

 ぼくの教養が足りないせいなんだろうけど、

 最初、セルラーって聞いても、ピンとこなかった。

 だって、なんとなくサスペンス風味な音感だし、

 ミニスカートから足をむき出したキム・ベイシンガーが、

 どこかに捉えられて焦りまくってるポスターだったし、

 こりゃあ、スリラーにちがいないとおもいこみ、

 それをもじってセルラーとかって題名にしたんだろなと。

 ところが、そうじゃなかった。

 なんのことはない、セルラーってのは携帯電話のことだ。

 実際、日本でもセルラーは一般名詞として扱われてるし、

 auの前身は、DDIセルラーグループだった。

 で、誘拐されたベイシンガーが、

 固定電話から誰ともしれない人間のケータイにアクセスして、

 その電池が続くかぎりなんとか繋ぎ続けて、救出を待つって話だった。

 どうやら、アメリカではセルラーは、ぼくらがケータイっていう感覚らしい。

(なるほど、セルラーでいいんだわ~)

 てなことをおもったんだけど、

 もしかしたら、邦題をつけるときに、

 ぼくみたいな発想をする人間を念頭に入れたのかもしれないね。

 ま、そんなことはさておき、

 話の発想はきわめて好きな部類だ。

 映画の中の時間と実際の時間とがほぼ同じっていう形式も好きだ。

 けど、こういう映画は、どちらかといえば自主製作的な匂いがして、

 スターダムの役者が出演することはないんじゃないかって、

 なんとも日本人的な発想をしちゃうんだけど、

 さすがにハリウッドはそんなことはなくて、

 しっかり、役者を揃えてくる。

 こうしたところ、スカッとしてていいよね。

 おもしろい映画には、規模なんて関係ないし、

 おもしろいとおもえば、なんのこだわりもなく出ればいいじゃん、

 ってのが、なんともアメリカ人らしくていいわ~。

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トリコロールに燃えて

2013年07月29日 12時59分11秒 | 洋画2004年

 ◎トリコロールに燃えて(2004年 アメリカ、イギリス、スペイン、カナダ 121分)

 原題 Head in the Clouds

 staff 監督・脚本/ジョン・ダイガン

     撮影/ポール・サロシー 美術/ジョナサン・リー

     衣裳デザイン/マリオ・ダビグノン 音楽/テリー・フルーワー

 cast シャーリーズ・セロン ペネロペ・クルス スチュアート・タウンゼント

 

 ◎1944年8月、パリ解放

 シャンゼリゼのパレードの際、丸刈りにされて、

 その上、ドイツ軍を相手にした娼婦だったと札まで下げられ、

 行進させられた女性たちは、しばしば映像化される。

 ところが、シャーリーズ・セロンが演じたのは、

 それすらもさせてもらえずに濡れ衣を着せられたまま殺される役だ。

 けど、実際のところ、

 ドイツ軍の内情をさぐるために娼婦になりすましていた女性はいたろうし、

 人間の人生を左右してしまうのが戦争ってやつなんだろう。

 で、そんな彼女だけど、

 芸術家であるという前提からも想像できるように、

 常に、肉体的な快楽と精神的な至福を追い求めていた。

 ただ、平時だったらそれでよかったろうし、

 ふつうに男も好きだし、レズビアンの対象とする女もいるという両刀使いも、

 それはそれで何の問題もないんだけど、戦時だったことが悲劇になる。

 ペネロペ・クルスの死と共にセロンに芽生えたものは戦争への嫌悪で、

 セロンはおのれの肉体を利用して戦争を滅ぼそうと考え、行動する。

 ちょっと前にも書いたとおり、

 肉体的な快楽はセロンにとっては、ごくふつうの当たり前のことで、

 精神的な至福により重きを置いているため、

 彼女が情報を得るために肉体を惜しげもなくナチスに差し出すのは、

 一般人に置き換えれば、美味しい食事を共にするという程度のものでしかなかった。

 と考えれば、戦争が勃発する前の爛れた日々についても合点がいくけど、

 そうした性質が生来のものか、わざと自分を追い込んだものかはよくわからない。

 けど、奔放な女性という括りでいえば、たしかにそうだったろう。

 ただ、

 こうした女性に観客が共感、あるいは感情移入するかどうかは、よくわからない。

 パリの解放をめざして身体を捧げた女性に訪れる悲劇という点では、

 多少の同情を禁じ得ないという感想はあるかもしれないけど、難しいところだ。

 前半で、セロンは占い師に「34歳から先が見えない」といわれる。

 それがトラウマになって34歳が近づくにつれて自暴自棄になり、

 ドイツ軍を相手に娼婦になりすましたのかどうか。

 となれば、彼女の運命を決めてしまったのは占いということになっちゃう。

 占いが当たったんじゃなく、それに引き摺られちゃったってことにならないかしら?

 なんにしても、セロンの感情がうまく見えてこない分、

 ぼくらは想像するしかないんだよね。

 でも、30年代から40年代にかけてのデカダンスな雰囲気は実に好かった。

 むろん、セロンとペネロペの美貌に負うところは大きいけどね。

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カレンダー・ガールズ

2013年06月29日 16時28分58秒 | 洋画2004年

 ☆ カレンダー・ガールズ (2004年 イギリス 108分)

 原題 Calendar Girls

 staff 監督/ナイジェル・コール 脚本/ジュリエット・トウィディ

     撮影/アシュレイ・ロウ 美術/マーティン・チャイルズ 音楽/パトリック・ドイル

 cast ヘレン・ミレン ペネロープ・ウィルトン シーリア・イムリー リンダ・バセット

 

 ☆1999年、カレンダー発売

 偶然にも、ぼくはこのニュースをテレビで見た。

 イギリスでおばあちゃんたちが、

 白血病の研究に寄付するため、

 自分たちのヌードでカレンダーを作り、

 しかも、それがすごく売れてるっていうニュースだった。

 初刷り500部が30万部になったっていうんだから、たいしたものだ。

 ただ、そのときは、

「すごいこと考えるな~」

 と素朴におもったけど、

 そのカレンダーを見てみたいとは、あんまりおもわなかった。

 ましてや、買おうなんていう衝動はいっさい起きなかった。

 ぼくは慈善活動には向いていないらしい。

 ま、それは性格上、仕方のないことで、そんなことはいい。

 実際に、45~65歳の女性のヌード・カレンダーを発案したのは、

 ヨークシャー在住のトリシア・スチュワートとアンジェラ・ベイカーという婦人らしい。

 彼女らを演じるのが、ヘレン・ミレンたち芸達者なご婦人方なんだけど、

 徹底して実物のカレンダーに似せようとしたらしい。

 さすがに女優さんだけあって肌は綺麗だし、

 スタイルも、多少くずれてきてはいるけど、やっぱり綺麗だ。

 というより、彼女らが人生を踏み外しそうになる瞬間も含めて、

 単なるコメディにしていなくて、

 人生の岐路に立った女性の生き方に迫っているのが脚本の上手いところだ。

 イギリスっていう国は、

 どうしても紳士と淑女の印象があって、どちらかといえば堅苦しそうなんだけど、

 快進撃を続けているコメディを見たり、

 この映画の元になってる実話を知ったりすると、

「いやほんと、余裕に満ちたセンスってのはこんなことをいうんだろな~」

 とかって、おもっちゃうんだよね。

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天国の青い蝶

2013年04月11日 23時47分04秒 | 洋画2004年

 ◎天国の青い蝶(2004年 カナダ、イギリス 94分)

 原題 The Blue Butterfly

 staff 監督/レア・プール 脚本/ピート・マコーマック 撮影/ピエール・ミニョー

     美術/イェイム・フェルナンデス 音楽/スティーヴン・エンデルマン

 cast ウィリアム・ハート マーク・ドネイト パスカル・ビュシエール ラオール・トゥルヒージョ

 

 ◎1987年、カナダからメキシコへ

 カナダの昆虫館モントリオール・インセクタリュウムにある巨大コレクションは、

 昆虫学者ジョルジュ・ブロッサールのもので、映画はここから始まる。

 この映画は、かれの体験した不思議な実話らしいんけど、

 環境が劇的に変わることで、ほんとに末期の脳腫瘍が快癒するんだろか?

 でも、当時6歳(映画では10歳ね)だったダヴィッド・マランジェが来日して、

 自分の体験についてインタビューに答えてるんだから、ほんとなんだよね?

 てな疑問を観る前には浮かべていたんだけど、それは無駄な時間だったかも。

 洋画のいいところは、病気を悲劇だと捉え切らないことだ。

 重篤な病気になって病人が苦しんだり、それを見守る家族や関係者が狼狽したり、

 ともかく、

 死を迎えることで、悲しみにひたる映画が感動作だとかいうことに、

 ぼくは、首をかしげちゃう。

 悲しみを見て涙するのは同情で、喜びを見て涙するのが感動だとおもうから。

 この映画も、そういう類いのものだ。

 もちろん、病気と蝶、そして学者と母親の恋愛を媒介にして、

 人間の肉体と心の再生を主題にしている。

 ロケ地は、中米コスタリカの熱帯雨林、トルトゥゲーロ国立公園あたりだそうな。

 実際に蝶を捕まえに行ったのは、アカプルコらしいから、ちょっと雰囲気がちがう。

 より神秘的なロケーションを持っていることがロケハンでわかったからだろう。

 その雰囲気は、この映画には欠かせないもんね。

 ちなみに、モルフォ蝶の美しさといったら、ない。

 ブルーモルフォっていう蝶は、モルフォ蝶の中でも青いやつの総称なんだろうけど、

 その中でも、ぼくは、

 キプリスモルフォとヘレナモルフォっていうやつがお気に入りだ。

 ブローチとかが手に入ったら帽子にでもつけるんだけどな~。

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オーシャン・オブ・ファイヤー

2013年03月26日 18時36分32秒 | 洋画2004年

 △オーシャン・オブ・ファイヤー(2004年 アメリカ 136分)

 原題 Hidalgo

 staff 監督/ジョー・ジョンストン 脚本/ジョン・フスコ 撮影/シェリー・ジョンソン

     美術/バリー・ロビソン 音楽/ジェームズ・ニュートン・ハワード

 cast ヴィゴ・モーテンセン オマー・シャリフ ズレイカ・ロビンソン ルイーズ・ロンバート

 

 △19世紀末、アメリカ西部からアラビア砂漠

 混血とかハーフとかいう言い方はあまり好きじゃないけれど、

 ほかに表現する言葉を、ぼくは知らない。

 けど、この映画の場合、なにより重要な鍵になっているのが、この混血という単語だ。

 主人公のフランク・ホプキンスというカウボーイは、白人とスー族の混血だったらしい。

 また、フランクの愛馬のヒダルゴも、野生の中で育った雑種らしい。

 もともとはスペイン人が放牧していた小型の馬だったらしいけど、それが野生化したのかな。

 ともかく、この男と馬は純血ではなく、そのために差別され、

 さらに自分のせいでインディアンが虐殺されるという呪縛を抱えているんだけど、

 こういう設定が、事実だったのかどうかはわからない。

 けど、この男が、純血アラビア馬の長距離レースで勝利することで、

 呪縛から解放されるまでが主題になっているわけで、

 決して「オーシャン・オブ・ファイヤー」とかいう英語名のレースが主題じゃない。

 アメリカという人種の坩堝のようなところから、

 アラビアという人も馬も濃厚な血脈を伝えたところにやってきて、

 さまざまな不測の事態に遭遇しながらも、おのれの度胸と技術でそれを克服し、

 最後には混血という蔑視をのりこえて勝利と栄光をつかむ。

 単純な構成ながらも、それが、主題に直結してる。

 人にはいろんな呪縛があって、

 それから解き放たれたとき、ようやく、おもいのままに生きていくことができる。

 立つ位置が決まるというのか、なにものにも束縛されない人生を手に入れることができる。

 でも、大小の呪縛を抱えた身では、そんなに簡単なものじゃない。

 この映画は、レースに出て勝利をつかむという象徴によって、それを表現してる。

 だから、フランク・ホプキンスの実際の腕前や、

 劇中のレースがほんとうにあったものなのかどうかという議論は、瑣末なことだ。

 そんなことより、馬が好い。

 よく、走ってる。

 砂嵐はCGなんだろうけど、これもまた充分に迫力があったし、

 佳境、賞金によって土地を手に入れ、そこに無数のマスタングを解き放つ場面も圧巻だ。

 砂漠の撮影もこれまた美しく、酷暑の中に立つ陽炎も、たとえCGだとしても好かった。

 あ、それと、

 個人的には、オマー・シャリフが健在だったことがなんだか嬉しかった。

 旧い知人に再会したような嬉しさがあったけど、この人、ほんとにテントが似合う。

 ちょっと驚いたのは、ヒダルゴの演技だ。

 5頭ほど使い回したみたいで、モーテンセンも撮影の後で1頭買い取ったらしいけど、

 最後の別れの場面では、ヒダルゴがちゃんと演技をしてる。

「おれ、行っちゃうぞ。いいのか。ほんとに野生に帰っちゃうぞ。もう、レースとか出ないぞ」

 とかいう台詞が聞こえてきそうだった。

 ところで、ぼくは、競馬に行ったことがない。

 だから、馬が群れをなして疾走している光景を実際に観た事がない。

 当然、その際の蹄の響きとか、振動とか、体感したことがない。

 一度くらいは府中競馬場とかに足を運んでもいいんだけど、

 なかなか行けずにいるんだよね~。

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理想の女

2012年03月29日 00時12分48秒 | 洋画2004年

 ◎理想の女(2004年 スペイン、イギリス、イタリア、ルクセンブルク、アメリカ 93分)

 原題 A Good Woman

 監督 マイク・バーカー

 出演 ヘレン・ハント、スカーレット・ヨハンソン、トム・ウィルキンソン

 

 ◎1930年、アマルフィ

 オスカー・ワイルドの戯曲『ウィンダミア卿夫人の扇』をもとにしてて、舞台をロンドンからアマルフィに変えたってことなんだけど、なにしろいつものように不勉強な僕はその戯曲を読んだことがないから違いがわからない。でも、アマルフィで好かったんじゃないかって気がする。浮名を流し続けるヘレン・ハントがニューヨークからアマルフィへ流れてくるってのがなんとなく退廃的でいいじゃないか。

 まあ、スカーレット・ヨハンソンの印象として貞淑な新妻というのがどうしてもしっくりこないのは僕だけなんだろうか。ハリウッドではずいぶんと可愛がられてるっていう印象があるんだけど、どうしても肉感的なくちびると姿態だから、なんか貞淑な人妻って気がしない。とはいえ、だからこそ、今回のような不倫を汚らわしいとおもうがゆえに夫が裏切っているとおもいこんで夫の親友と不倫に走りかけてしまうという不安定な貞淑を演じたのかもしれないね。

 20年前にスカーレット・ヨハンソンを産み落としながらもその場を去り社交界を流れていたヘレン・ハントの最後の相手になるトム・ウィルキンソンは、あいかわらず好い演技だ。おしころした感情を上手に表現できるし、好い役者だな。ゴシップ好きな有閑マダムどもの興味の対象になる二度の離婚を経験した財産家ってのがいいね。

 ちなみに、アマルフィを舞台にした邦画とはまるで別な町のようにしっとりと撮られているのは、やっぱり作り手の感性の差なんだろな。あ、邦題の『理想の女』は『りそうのひと』と読ませるらしい。もうちょっとほかにないんかいな?

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バイオハザードII アポカリプス

2009年07月16日 14時31分31秒 | 洋画2004年

 ◇バイオハザードII アポカリプス(2004年 イギリス、カナダ、アメリカ 94分)

 原題/Resident Evil:Apocalypse

 監督/アレクサンダー・ウィット 音楽/ジェフ・ダナ

 出演/ミラ・ジョヴォヴィッチ シエンナ・ギロリー ソフィー・ヴァヴァサー  サンドリーヌ・ホルト

 

 ◇3へのつなぎ

 1が完成度は高かったから3の予告的な印象だ。少女ソフィ・ヴァヴァサーの登場は、正に『エイリアン2』だし。つっても、贔屓の映画を引き合いに出すのはよくないね。

 ゲームを知らないのでわからないんだけど、シエンナ・ギロリーの登場は上々の評判だったのかもしれないね。たしかに彼女が入ることによって女物のアクションはますます派手になった気もしないではない。

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エクソシスト ビギニング

2009年01月22日 16時55分18秒 | 洋画2004年

 ◇エクソシスト ビギニング(2004年 アメリカ 114分)

 原題/Exorcist:The Beginning

 監督/レニー・ハーリン 音楽/トレヴァー・ラビン

 出演/ステラン・スカルスガルド ジェームズ・ダーシー イザベラ・スコルプコ ラルフ・ブラウン

 

 ◇ようやく完結

 内容の繋がる1と2の過去に遡ることで、やっと繋がったとおもえば、なんのことはない。これはこれで独立した物語だった。

 まあ、第1作の『エクソシスト』が傑作として名を残しているかぎり、いつかは誰かが作らないといけない状況になるのは予測はついていたものの、なんでアクション専門のレニー・ハーリンが監督をしないといけないのかって話だ。

 けど、これはややこしい事情があって、もともとジョン・フランケンハイマーが監督するはずだったらしい。ところが亡くなってしまったために代役を立てねばならなくなり、それがポール・シュレイダーだったそうなんだけど、シュレイダーの撮った作品はあまりにも社会的な単調映画で、とても恐怖映画とはいえず、結局のところレニー・ハーリンが起用されてほとんと撮り直ししてこの作品ができたんだそうな。

 シュレイダーの作品は『ドミニオン』っていうまったく別な作品として公開されたらしいんだけど、セットは同じだし、登場人物もほとんど同じだったりして、なんとも奇妙な展開になってる。

 ちょっと、味噌をつけた観があるよね。

 ただまあ、悪魔の為に村が分裂して全滅した上に或る筈のない教会が建てられているという設定だけは良だった。

 それと、やけにカメラが好いんだよね。なんでこんなに色調が黄色っぽくて美しいんだとおもってたら、なんのことはない、大御所ヴィットリオ・ストラーロだった。なるほど、この映画のいちばんいいところは絵かってことにようやく気づいたのであります。

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キル・ビル Vol.2

2008年03月26日 16時15分45秒 | 洋画2004年

 ◇キル・ビル Vol.2(2004年 アメリカ 136分)

 原題/Kill Bill : Vol.2

 監督・脚本/クエンティン・タランティーノ 音楽/RZA ラーズ・ウルリッヒ

 出演/ユマ・サーマン ダリル・ハンナ サミュエル・L・ジャクソン ゴードン・ラウ

 

 ◇エンディングは『怨み節』

 棺桶ってのは、強烈だ。

 子どもとの邂逅も含めて『ダブル・ジョパティ』にも同じような場面があったような。

 西洋人は棺桶に閉じ込められる事に潜在的な恐怖があるらしいけど、実をいえば、ぼくもそうだ。

 棺桶の中はやすらぐとか、癒されるとかいうけど、冗談じゃない。お葬式が終わって火葬場に移動してから蘇生したらどうするんだ。棺桶に入れられたまま火をつけられたらどうするんだ。そんなことを考えると、夜、眠れない。

 究極的な閉所に閉じ込められるようなもので、この恐怖の引き金になったのは、江戸川乱歩の『白髪鬼』だったんじゃないかっておもうんだけど、そういえば『白髪鬼』も復讐の話だったんじゃないかな?

 ま、それはさておき、服部半蔵役のサニー・千葉の出番はちょっとで、物語の上では余計なことかもしれないけど、やっぱりもう少し活躍してほしかったわ。なんだか、おまけ的な印象だったし。

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ミリオンダラー・ベイビー

2008年03月15日 12時49分47秒 | 洋画2004年

 ◇ミリオンダラー・ベイビー(2004年 アメリカ 133分)

 原題/Million Dollar Baby

 監督・音楽・主演/クリント・イーストウッド

 出演/ヒラリー・スワンク モーガン・フリーマン リキ・リンドホーム

 

 ◎Mo Chuisle

 イーストウッドの才能にはいまさらながら敬服するしかない。演出や編集の冴えもそうだけど、音楽までも才能を持ってることに唖然とする。

 けど、ときとして、イーストウッドは、物事に対して突き放した怜悧な見方を取る。そういうことからすれば、この作品は充当な展開と結末だし、アカデミー作品賞を獲得するのもわからないじゃない。

 でもな~。夢物語を現実の嵐が吹き飛ばす構成はわかるにしても、夢や希望を叩き潰す必要はないんじゃないかともおもったりする。主題はいったいなんだったんだろうと、ぼくみたいに事象を深く探求できない人間には、ちょっとばかり見えにくい作品でもあったような気がするんだよね。

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