Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

クラッシュ(2004)

2007年12月07日 16時53分20秒 | 洋画2004年

 ◎クラッシュ(2004年 アメリカ 112分/114分)

 原題/Crash

 監督/ポール・ハギス 音楽/マーク・アイシャム

 出演/サンドラ・ブロック ドン・チードル マット・ディロン ウィリアム・フィクナー

 

 ◎上手な回り舞台

 グランドホテル形式の人物が複雑に絡み合って、ひとつの物語を構築していきつつ、現実味には欠けながらも観客を納得させなければならない、という演出を要求される話にも拘らず、人種の坩堝ロスを描いてみせた手腕は、いや、ほんと、見事だった。

 ま、それともうひとつ、つまんないことをいうんだけど。

 警官のような民間人に対してある意味絶対的な権力を持った立場に立ったとき、尋問した相手がどうにも高慢で気に入らない女だった場合、しかも、どうしようもなく挑発的な恰好だったりした場合、やっぱり男というつまらない生き物は、眼の前のミニスカートの中に手を入れて、ボディチェックをするふりをして指を下着の中に入れてしまうものなんだろうか?

 それとも、映画の中だけの話なんだろうか?

「そんなことできるわけないし、するわけないじゃん」

 ていうのが、一般的な答えだとおもうんだけど、観ていて納得しちゃうのが、リアリティってやつなんだろね。

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ヴィレッジ

2007年03月25日 12時49分51秒 | 洋画2004年

 ◇ヴィレッジ(2004年 アメリカ 108分)

 原題/The Village

 監督・脚本/M・ナイト・シャマラン 音楽/ジェームズ・ニュートン・ハワード

 出演/ブライス・ダラス・ハワード ウィリアム・ハート シガニー・ウィーヴァー

 

 ◇人間牧場

 なぜか、とっても期待してた。

 ナイト・シャマランの世界は常に箱庭が意識されてる。登場人物たちの置かれている世界と外界とは完全に区別され、それがどんでん返しの形をとって示されることで、ある種のカタストロフを迎えるわけだけど、今回の話くらいは「1897年という設定のまま終わってほしかったな~」っておもうんだよね。

 まあ、納得できたからいいんだけど、でも、この作品は大作だし、衣装デザインをはじめ村そのものを作り上げた部分が評価できるだけに、最後まで19世紀の雰囲気をおしとおしてほしかったわ。

 そうでないと、実をいうと、いろんなところで破綻が生じる。

 いったい、国立公園の中に村を作るということが許されるのかとか、村人のどういう人間だけが事実を知る権利を与えられるのかとか、この共同体は国が作っているのだとしたら募集はあるのかとか、村が19世紀の村でないという現実をなにも知らない村人たちは知る日が来るのかとか、人権とか自由とかそういう最低限度の保障はありえるのかとか、外界と接触しないでいられることは不可能なのではないかとか、自分たちが外界に出なくても国立公園に立ち寄る外部の人間はいるだろうしそういう外界からの侵入に関しては武器を手に闘うのかとか。

 いあまあ、ほんと、挙げればきりがなくなる。

 だから、シャラマンには悪いんだけど、今回ばかりは、箱庭主義を棄てて、純粋な「ヴィレッジ」を作ってほしかった。

 全体的な雰囲気がとても好かった分、そう感じるわ。

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記憶の棘

2007年03月18日 15時29分15秒 | 洋画2004年

 ◇記憶の棘(2004年 アメリカ 100分)

 原題/Birth

 監督/ジョナサン・グレイザー 音楽/アレクサンドル・デスプラ

 出演/ニコール・キッドマン ローレン・バコール ピーター・ストーメア

 

 ◇期待と裏切り

 転生を扱った神秘的な恋愛讃歌かと思いきや、それなりの推理劇で、少年と三十代寡婦の思い込みの恐怖と自己崩壊を扱ったエキセントリックな物語だった。

 ただ、なんていうのかな~、もうすこし上手に作れなかったんだろうか…。

 ニコール・キッドマンの夫が死ぬ。10年後、キッドマンはダニー・ヒューストンから結婚をせがまれている。ところが、ある日、夫の生まれ変わりだと主張する少年キャメロン・ブライトが現れる。キッドマンはキャメロンの言葉を信じ、夫が生まれ変わったとおもう。

 恐ろしいのは、このふたりが恋をし始めることだ。

 けど、これには裏があって、夫は、彼の花婿付添人だった親友ピーター・ストーメアの妻アン・ヘッシュと浮気をしていた。まあ、ややこしい関係なんだけど、この夫の愛人アンはやや異常なところがあって、キッドマンが夫に出していた手紙を全部持っていた。愛人であるキッドマンの夫のすべてを知っていたいという願望からだろう。

 このアンの持っていた手紙を、キャメロンは読んでおり、自分の憧れている未亡人に近づく手段として、誰も知らないはずのキッドマンと夫の過去を口にするわけだ。

 まあ、いびつながらも、キャメロンの純粋な恋心の為せる嘘っぱちだったわけだけど、このキャメロンの嘘に、おとなたちはみんな、狼狽する。ていうより、10年経って現れてしまった夫の亡霊に悩まされることになるんだね。

 それにしても夫はまったく罪な男で、死んでからもキッドマンを10年間束縛していたし、愛人のアンも同じように束縛し、親友のピーターを裏切らせていた。それどころか、キャメロンに詐欺罪にあたるような嘘までつかせたわけだし、ピーターが疑い始めなければ、キッドマンはキャメロンと結婚したかもしれない。

 そんなことになったら空恐ろしい嘘っぱちの将来になってしまうわけだけど、さすがにキッドマンの母ローレン・バコールが、押さえるところは押さえてる。

「わたしは、あの人が好きじゃなかった」

 キッドマンの夫のいかがわしさを見抜いていたってことになるんだけど、こうした関係をつづるだけでもややこしい。

 ただ、映画は、キッドマンの揺れ動きつつ崩れてゆく精神を描いているわけで、そういう点だけでいえば、いかにもキッドマンの演じたがる役どころだったのかもしれないね。

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ソウ

2007年03月14日 15時19分31秒 | 洋画2004年

 ◎ソウ(2004年 アメリカ 103分)

 原題/Saw

 監督/ジェームズ・ワン 音楽/チャーリー・クロウザー 

 出演/リー・ワネル ケアリー・エルウィス ダニー・グローヴァー モニカ・ポッター

 

 ◎グロながら秀逸

 映画でもドラマでも、ときどき、がんっとヒットするものがある。

 ひと昔前に『ツインピークス』が話題になったときもそうだった。

 この『ソウ』のシリーズも同じなんだけど、ちがいは、ひとつひとつの物語が基本的には独立していることだ。

 それはそれとして、どうしても不条理さよりもグロな恐怖が先行してしまい、なんだか興味本位に語られてしまってるような気もしなくはないけど、この一本目についていえば、そんな事はなかった。

 かなり面白い密室劇だった。

 便器の中を映したり、手を突っ込んだりするのは生理的に受けつけないんだけど、舞台劇にしてもいけるんじゃない?てなことまで観ながらおもった。

 ただ、ヒットするに従って、猟奇的連続殺人犯のジグソウが徐々に形成されていった気もするし、殺人と贖罪の儀式である「ゲーム」よりも、ジグソウその人に興味が移っていき、なんだか精神の大河ドラマ化していった観があるのは否めないんじゃないかなと。

 そんなこともあったりして、気がつけば7作目はとうとう3Dだそうで、いやまあ、映画はヒットするにかぎるってことは、このシリーズを観てて感じるわ。

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