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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

IT

2017年11月16日 13時06分27秒 | 洋画1981~1990年

 ◇IT(1990年 アメリカ 187分)

 原題 IT

 監督 トミー・リー・ウォーレス

 出演 オリビア・ハッセー、アネット・オトゥール、エミリー・パーキンス、リチャード・トーマス

 

 ◇27年も経ってしまった

 この間、ぼくはなにをしていたんだろう?

 1990年当時、ぼくはとにかくスティーブン・キングが大好きで、普段から本を読まない僕にしてはほんとうに珍しいことに、出る本出る本つぎつぎに買い込んでは読んでた。どれもこれもおもしろくて、でも、どうしても読めない本があった。それが『IT』だった。まあとにかく分厚くて、あ、キングはいつもどれも分厚いけどね、その中でもこの本はかくべつに厚かった。

 まあそんなことはいいし『水晶島奇譚』も似たようなものだとおもうんだけど、とにかく『IT』は読み終えることができなかった。このテレビ映画がレンタルビデオ屋に列んだのはそんなころだ。テレビでも『スティーブン・キングのイット』とかってタイトルで放送されたらしいけどそちらは観てない。それはともかく『IT』が読めなくなって、でもなんとかこの作品は観たものの、それ以来、ぼくはキングの読者ではなくなった。

 で、それから27年経っちゃった。ペニー・ワイズが蠢き出す頃だ。

 さて、こちらのピエロ=ペニー・ワイズはティム・カリーだ。う~ん、当時もおもったことなんだけど、テレビというのは照明がベタなんだよな。だから怖さよりも滑稽さの方が先走っちゃってて、マクドナルドにでも行こうかしらって気になったりもした。ただ、給水塔はどっちもどっちながら、大井戸はリメイクされた映画よりも断然こちらの1990年版が好い。ロケーションで、あ、こっちの方が雰囲気あるじゃんってところは随処にある。あるものの、どうしても平板で、ぼくの個人的な感覚からすると187分観続けるのはちょいと辛いかな。

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ゴーストバスターズ

2017年11月12日 22時37分24秒 | 洋画1981~1990年

 ◇ゴーストバスターズ(1984年 アメリカ 105分)

 原題 Ghostbusters

 監督 アイヴァン・ライトマン

 出演 ビル・マーレイ、シガニー・ウィーバー、リック・モラニス、アニー・ポッツ、スラビトザ・ジャバン

 

 ◇マシュマロマン

 結局のところ、この作品の最大の功労者はダン・エイクロイドとハロルド・ライミスのふたりなんだろうね。ふたりの脚本の秀逸さがなにより勝ってる感じがするわ。スラビトザ・ジャバンも忘れがたいけど。でもまあ、このあたりのヒット作についてはなにもあらすじをメモっておく必要もないし、実をいえば観直すこともあんまり必要ないかもしれない。ほんと、若い頃に観たものはなんでか知らないけどすみからすみまでよく憶えてるもんだわ。

 で、どうでもいいことながら、ぼくの記憶ではマシュマロマンが現れるのはクリスマス商戦の真っ最中だったような気がする。っていうか、ずっとそうおもってた。ところがそうじゃなかった。この映画がアメリカで封切られたのは1984年の6月で、日本での公開は半年遅れの12月だった。この映画は今でもよく憶えてるけど、有楽町のマリオンの日本劇場で観た。で、数寄屋橋に出たとき、町はクリスマス一色だった。たぶん、ぼくはそのとき銀座のビル街の向こう側にマシュマロマンのまぼろしを観たんだろうね。

 ところが、厚物のコートは羽織っているものの、季節感はほとんど感じられないっていうか排除されたような映画の中で、そのマシュマロマンや破壊神ゴーザことスラビトザ・ジャバンが登場する前、門の神ズールと鍵の神ビンツとかいう狛犬みたいなものを見上げる群衆の中に、たったひとり、サンタクロースの赤い帽子をかぶった女の人が映るんだよね。ていうことは、クリスマスに近い季節っていう暗黙の設定があったのかもしれないな。もしかしたら、だけど。

 さらに気になって調べてみれば『ゴーストバスターズ』とクリスマスの関係は、 宣伝によるものだったってことがわかった。ネットで検索すると、ゴーストバスターズとクリスマスはまるで一対のようにヒットする。けど、1の日本公開が1984年12月2日。2の日本公開が1989年11月25日。2のゲーム発売が1990年12月26日。1&2のブルーレイ発売が2014年12月3日。どれもクリスマス商戦にひっかけて宣伝され、リメイクされた『ゴーストバスターズ2016』のDVD発売が 2016年12月21日。このDVDの「発売記念クリスマス・ フェイスツリー点灯式」が東京・としまえんで開催されたのが2016年12月16日。つまり、映画『ゴーストバスターズ』の中身とクリスマスは、いっさい、 みじんも関係ないのに、なんでか知らないけどクリスマスにつながってる。ということは、ぼくみたいに妙なおもいこみをしている人間(世界でも日本人だけだとおもうけど)は他にも少なからずいるかもしれないってことで、いやあ、宣伝っていうか、ネットって怖いね。

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フラッシュダンス

2017年08月12日 01時49分35秒 | 洋画1981~1990年

 ◇フラッシュダンス(1983年 アメリカ 95分)

 原題 Flashdance

 監督 エイドリアン・ライン

 出演 ジェニファー・ビールス、マイケル・ヌーリー

 

 ◇ピッツバーグの夢物語

 懐かしい。絵はやっぱりかっこよく撮られてるんだけど、やっぱりスタンドインはわかっちゃうんだね。ジェニファー・ビールスはほんとあの時代の、つまり、80年代前半の女の子なんだな~。

 あ、今おもったんだけど、製鉄所の溶接工たちの真ん前で喧嘩して仲直りしたときに、まわりの連中がはやし立てて拍手が起こるっていういかにもあざとい演出、あれってこの作品からなのかしら?ありがちなんだけど、あまりにもあざとくて誰もしてこなかったんじゃないかっていうくらいなんともおとぎ話的な演出だったんだけど、この時代からこういう少女趣味が流行り出したんだよね。

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炎のランナー

2016年04月09日 19時28分35秒 | 洋画1981~1990年

 ◎炎のランナー(1981年 イギリス 124分)

 原題 Chariots of Fire

 監督 ヒュー・ハドソン

 

 ◎1924年、パリ

 5月4日~7月27日にかけて、パリ五輪が行われた。その陸上競技100メートルと400メートルの物語だ。

 もちろん、この映画でいちばん有名になったのはイギリスの陸上選手たちが波打ち際を走っていくところだけど、なんといっても、ぼくらがおぼえていて、何度観直しても鳥肌が立っちゃうのは、そこで掛けられてたヴァンゲリスの「タイトルズ」だ。

 この映画が封切られた頃、ぼくは大学に入ったばかりで、世の中はヴァンゲリスに満ち溢れていた。ほんと、ところかまわず鳴り響いてた。この作品だけじゃなく『ブレード・ランナー』やら『南極物語』やら、もうつぎつぎに音楽が書かれ、演奏されてた。だから、まったくこの映画の場合、音楽が独り歩きし、先行してた。むろん、ぼくも音楽から入った口だ。

 映画そのものは地味だ。映像は美しいんだけど、やっぱり地味だ。それと、ぼくら日本人には少しばかり理解しにくいかもしれない宗教に対する敬虔さが大切な要素になってくるもんだから、ちょっとばかり入り込みにくい。とはいえ、そんなものは脇に置いといても十分に見応えはあるだけどね。

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インディ・ジョーンズ 最後の聖戦

2016年04月08日 20時16分45秒 | 洋画1981~1990年

 ◎インディ・ジョーンズ 最後の聖戦(1989年 アメリカ 127分)

 原題 Indiana Jones and the Last Crusade

 監督 スティーヴン・スピルバーグ

 

 ◎1938年、ベニス

 封切られた頃、ショーン・コネリーが出るのか~と驚き、かなり喜んで観に行ったっていう覚えがある。

 ただ、なんだかやけに絵柄が堂々としすぎちゃってて超大作っぽさが全面に出てるな~って感じてた。そしたら、なんとそれもそのはずで、インディ・ジョーンズは前3作が70ミリなんだね。くわえてカメラマンがダグラス・スローカム。第二次世界大戦の報道カメラマンだった人で、インディアナ・ジョーンズのシリーズは3作やってて、この作品が遺作になったらしい。とはいえ、今年2016年に103歳で亡くなったんだけどね。そりゃ絵作りが凄いはずさ。

 ショーン・コネリーもこの作品がやけにお気に入りだそうで、そりゃそうだろ、007の伝奇版なんだから。でもさ、ほんとならインディ・ジョーンズは全5作のはずなんで、スター・ウォーズも復活したことだし、もしかしたらハリソン・フォードもその気になってるかもしれないよね。観たいな、ほんとの最終回。

 

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グレムリン

2016年04月07日 19時47分13秒 | 洋画1981~1990年

 ◎グレムリン(1984年 アメリカ 106分)

 原題 Gremlins

 監督 ジョー・ダンテ

 

 ◎ギズモという名のモグワイ

 寓話というにふさわしい映画だったような気がするけど、なんとなく当時をおもいだしちゃうよね。

 なんで中国人が宇宙人のつくりあげた生物を飼ってるんだってな話だけど、そういうあたりはあんまり考えちゃいけない。設定した側としては宇宙生物にしておきたかったのかもしれないってだけで、まあぼくとしては台湾あたりの秘境で古代から飼われてきた地球の生物っておもいたいところだけどさ。

 今更この作品についてあれこれ考えても仕方ないことで、あ~懐かしいな~とだけおもえばそれでいい。

 けど、あれだね。主役のザック・キャリガンって人はほんとにぽけたんとしたおぼっちゃんな感じだったけど、やっぱりあれだろうか、フィビー・ケイツにいちばん似合う相手役ってことだったんだろうか。

 そうそう、この映画の頃、ぼくはレーザーディスクを買ってて、もちろん、この作品も買った。何回も繰り返して観たような気がするけど、当時はそれほど映画をつぎつぎに観たいっていう意識がなかったんだろうか。よく憶えてないけど、それだけ作品に対する愛着みたいなものがあった時代だったのかもしれないね。

 (2021-12-24 ↓)

 グレムリンどもが映画館を占拠して白雪姫を観るのは憶えてたけど、まさかガス爆発させて群れごとぶっ飛ばすとは。忘れてたな~。レーザーディスクも持ってるのに。

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ランボー3 怒りのアフガン

2016年03月28日 22時13分22秒 | 洋画1981~1990年

 ◇ランボー3 怒りのアフガン(1988年 アメリカ 101分)

 原題 Rambo III

 監督 ピーター・マクドナルド

 

 ◇108人の死者

 煩悩の数と一緒っていうのは単なる偶然なんだろうけど、よくもまあそれだけ戦ったもんだっていうくらい、よく戦ってる。でも、なんでだろう、スタローンが戦ってる場面よりも矢で受けた傷を焼いて治療するところの方が鮮明だ。

 この映画はどうやら前作の3分の1くらいしか興行収入が上がらなかったらしいんだけど、それもありなんって感じだ。だって、そもそもランボーっていう人間は、アメリカ合衆国に認められなかったベトナム帰還兵を代表する立場にいるわけで、ロッキーみたいに星条旗を背負っちゃったらなんだか違うんじゃない?って気もするもんね。

 だからだろうか、この映画が公開された後、今度は「怒りのパナマ運河」とかになるんじゃないかって噂がどっからともなく聞こえてきたり、アジアの国でもまだまだ行かないといけないところがあるだろ、みたいな話もあった。結局のところ、ソ連もこの映画が世に出たあたりに崩壊したし、強烈な仮想敵国がなくなっていったことでランボーもその戦いの場がなくなっていったっていったんだね。

 ただまあ、前作よりも物語そのものが求心力を失くしてきたような観があるし、いたずらにアクションに重点が置かれていったんだな~ってのが垣間見えるのはちょっと辛い。そうなってくるとせっかくの音楽も色褪せて聞こえちゃうんだから、やっぱり筋立てって大切なんだね。

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ランボー 怒りの脱出

2016年03月27日 21時33分46秒 | 洋画1981~1990年

 ☆ランボー 怒りの脱出(1985年 アメリカ 94分)

 原題 Rambo:First Blood Part II

 監督 ジョージ・P・コスマトス

 

 ☆まだ大勢残ってる

 ランボーが最後にいう台詞だけど、なんでか説明できないんだけど僕はこの台詞が無性に好きだ。

 ベトナム戦時行方不明者MIAを奪還するっていうアクション作品はほかにもいくつか観てるけど、この作品よりもおもしろいものはなかったような気がする。でも、評判も悪いんだよね。大学のとき、知り合いの半分以上はこの映画に否定的だった。ていうより、鼻で嗤って、ばかにされてた。なんでかな~とぼくはおもってた。だって、おもしろいじゃんね。ジェリー・ゴールドスミスの音楽も出色の出来栄えだとおもうしさ。

 まあ、いまさらこの物語について書いても仕方ないし、実をいえば書くことはなんにもない。スタローンっていう人は自分でもそういっているからか、脳味噌が筋肉で出来ているってことになってるけど(まじか?)実はとっても勤勉な人で、物語のつぼもちゃんと押さえてるっておもうんだよね。特にこの作品の場合、ジェームズ・キャメロンと共同執筆してるし、うまく作ってあるっておもうんだけどな。

 それに、この時代のスタローンは肉体もいちばん美しく仕上がってるんじゃないかって気がする。どんな具合にあの肉体をつくり上げたのかは知らないし、知ったところでどうなるものでもないし、それを真似しようともおもわないけど、でも、なんとなく憧れちゃったりもしたのだ、少しは。

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恋におちて

2016年03月19日 19時13分46秒 | 洋画1981~1990年

 ◎恋におちて(1984年 アメリカ 106分)

 原題 Falling in Love

 監督 ウール・グロスバード

 

 ◎ダイヤル回して手を止めろ

 世の中、ずっと純粋な不倫映画はヒットしてきた。

 不倫が文化かどうかは知らないけど、世の中の老若男女すべてがなんだかんだいっても不倫に興味がないってことはないんじゃないかっておもうんだ、ほんとのところ。けど、インターネットが普及して、この21世紀の初頭、もうなんか不貞行為をしでかした人間は次から次へと凄まじい勢いで否定され、いったい誰に対してのものかはわからないけど晒し者のような状態で謝罪させられる時代になっちゃった。

 でも、かといってこの先、こういう純粋な不倫をあつかった映画が撮られなくなるかっていえば、たぶん、そうじゃない。世の中の人達のエキセントリックな不倫否定はわからないじゃないんだけど、もしも不倫をちょっとでも肯定するような作品が世に出てきたとき、デモ行進とか起きて、上映反対運動とか始まっちゃうんだろうか?まじに、そんな時代が来てるんだろうか?

 だとしたら、たとえば、デヴィッド・リーンの『逢びき』とか、ステファヌ・ブリゼの『シャンボンの背中』とかが名画座で上映されたりしても、卵とかぶつけられちゃうことになるんだろうか?そんな時代にぼくは生きてるんだろか?う~ん。どうしたもんだろね?

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バベットの晩餐会

2016年01月03日 17時09分16秒 | 洋画1981~1990年

 ☆バベットの晩餐会(1987年 デンマーク 102分)

 原題 Babettes gæstebud

 英題 Babette's Feast

 監督・脚本 ガブリエル・アクセル

 

 ☆1870年代、ノルウェー、フィヨルドの町ベアレヴォー

 ぼくは文学的な素養がないから想像することそのものが困難なんだけど、この1987年のアカデミー外国語映画賞に輝いた物語はやっぱり小説とかで描かれてもいまひとつ昂揚しなかったんじゃないかしら?

 だってそこにはどうしてもふたつの要素が必要になってくる。ひとつは、ものすごく重苦しく垂れ込めた雲に覆われた海辺の町の風景とそこに生きる人々の素朴さはやっぱり映像で観た方がよくわかるし、その情感がひしひしと伝わってくるんじゃないかっておもうからだ。もうひとつは、パリ・コミューンの蜂起に身を投じてしまったことでフランスから亡命せざるを得なくなってしまった高級店「カフェ・アングレ」のシェフだったバベットが宝くじに当たった100万ドルで食材を買い込み、お世話になった人々へのお礼として大盤振る舞いをするんだけど、そこで出される料理についてあれこれ描写されたところで想像力の乏しいぼくにはなんのことやらさっぱりわからないんじゃないかっておもえるからだ。

 ところが、この映画にはれっきとした原作がある。それもちょいといわくありげな感じで。というのも、原作者の名前はイサク・ディーネセンっていって、これ、男性名なんだよね。てことは男がこんなに優しい料理の物語を描いたのかってことになるんだけど、ちがうんだな、実は女性の覆面作家でカレン・ブリクセンっていう。カレン・ブリクセンは1985年のアカデミー作品賞・監督賞の映画『愛と哀しみの果て』の原作『アフリカの日々』を書いた人で、な~んだって話なんだけどね。で、ぼくはっていうと、その物語をふたつとも読んだことがないから、そこにどれだけ美味しそうな表現が散りばめられているかはまじ知らない。威張れるような話じゃないけどさ。

 

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プロヴァンス物語 マルセルの夏

2016年01月02日 19時17分25秒 | 洋画1981~1990年

 ◇プロヴァンス物語 マルセルの夏(1990年 フランス 111分)

 原題 La Gloire de mon père

 監督 イヴ・ロベール

 

 ◇マルセル・パニョルの思い出

 おそらく幸せな時代を過ごしたんだろうな~って印象の劇作家・小説家かつ映像作家だ。

 マルセル・パニョルの生きた時代はふたつの世界大戦があったり冷戦が続いたりときわめてきな臭い時代で、もちろんそういう時代の風はかれが過ごしていた南フランスのプロヴァンスにも吹きつけていたんだろうけど、そういう匂いはほとんど感じられない。

 ほんと、うらやましいわ。

 ちなみに、南に海を抱えた海辺の町というのがどういう感じのところなのかっていうことくらいは、ぼくにはわかる。ぼくは形だけはイタリア半島にちょっと似ている知多半島っていうところに生まれ育ったんだけど、このマルセル坊やのような家庭ではなかったな~。感想といえば、それくらいなものだ。

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マイライフ・アズ・ア・ドッグ

2015年09月23日 02時40分48秒 | 洋画1981~1990年

 ☆マイライフ・アズ・ア・ドッグ(1985年 スウェーデン 102分)

 原題 Mitt liv som hund

 英題 My Life as a Dog

 監督 ラッセ・ハルストレム

 

 ☆1950年代、スウェーデンの海辺の町と山間の村

「人工衛星に乗せられて死んでいったライカ犬より僕の人生の方がまだ幸せだ」

 ということで、その「ぼく」を取り巻いているさまざまな人々の点描と、中でもいちばんは成長期を迎えてしまった少女との日々が淡々と慈愛深く描かれるわけだけれども、こうしたしみじみした映画は作れるようでなかなか作れない。でもまあ、あまりにもよく知られた物語をここで繰り返したところで仕方がない。

 まあ、なんというのか、誰でも懐かしい少年の日々というのはあるもので、それがたとえ恵まれない境遇であっても真摯に生きていればなんらかの救いと癒しの手が差し伸べられると信じていたいし、たぶん、まちがいなくそうなるだろう。と、ぼくはおもう。

 おもってみれば、ぼくの少年時代はどうだったんだろう?恵まれていたかどうかはよくわからないけど、たぶん、それなりに恵まれていたのかもしれない。でも、ぼくは身体が弱く、肺炎になったり、気管支喘息だったりして、都合3回、入院した。50メートル走っても息は苦しくなってくるし、小学校時代のあらかたは咳をして過ごしてた。まあ、寄る年波かこの頃でも息はすぐに苦しくなるんだけど、それはさておき、駈けっこだけは誰にも負けない自信があったのに走るとすぐに呼吸困難になるっていうのは、まあそれなりに辛いんだ。

 ただ、ぼくの場合、スプートニク・ショックはなかったものの、アポロ11号のショックは凄かった。前にも書いたかもしれないんだけど、ぼくの実家のすぐ近くの四つ角に、夜になると串焼きの屋台が出た。そこに、よく、お皿を持ってドテを買いに往った。そのとき、酔っ払いがくだを巻いていた。アポロ11号のニュースがショックだったとみえて、あんなものは月になんかいってねえんだ、そこらで撮影したのを放送しとるんだと、まるで『カプリコン1』みたいな話をしてた。ぼくは屋台から外に出て、月をあおいだ。満月だった。その夜のことは忘れられない。

 まあ、そんなようなことで、宇宙を見つめて何事かをおもう少年時代ってのは誰にでもある。

 けど、アントン・グランセ リウスとメリンダ・キンナマンのような出会いは滅多にあるもんじゃない、よね?

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レナードの朝

2015年09月03日 19時48分18秒 | 洋画1981~1990年

 ◎レナードの朝(1990年 アメリカ 121分)

 原題 Awakenings

 監督 ペニー・マーシャル

 

 ◎1969年の夏の奇蹟

 嗜眠性脳炎の患者にパーキンソン病向けの新薬L-ドーパを試したところ奇蹟な回復を見せたがやがて元通りになってしまったという1960年代の実話が元になっているらしんだけど、いったいどういうことから患者の一時的な回復が見られたんだろうね。

 それについてはほとんど解明されていないみたいだし、映画で語られることもないから、ぼくたちは、人付き合いは下手だけれどもきわめて優しい医師ロビン・ウィリアムズの誠実な治療と、自分が元に戻っていくさまを撮れという犠牲的な患者ロバート・デ・ニーロの友情譚を見ていくしかない。

 でも、きわめて清々しく撮られているのは、さすがペニー・マーシャルとしかいいようがない。もちろん、主役ふたりの演技もあるんだけど、そのほかの患者たちも実にうまい。アメリカはどういうわけか、ときどき、精神病棟をあつかった映画を撮るけど、そのとき患者たちを演じる役者はみんな上手だ。演技者の層がきわめて厚いんだろうね。

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センチメンタル・アドベンチャー

2015年08月21日 02時23分45秒 | 洋画1981~1990年

 ◇センチメンタル・アドベンチャー(1982年 アメリカ 122分)

 原題 Honkytonk Man

 監督 クリント・イーストウッド

 

 ◇息子と共演

 息子カイルが甥の役で出演しているんだけど、後にカイルはジャズミュージシャンになることをおもうと、なんとなくそういう運命を匂わせるような気もする。

 なんていうのか、イーストウッドの現実味のあるしみじみした映画は日本でもリメイクできそうなものが多いんだけど、ところが、たとえばこんな筋立ての映画なんて作っちゃった日にゃあ、目も当てられないほどお涙頂戴のくだらない作品になること請け合いだ。ところが、イーストウッドだとそうじゃなくなっちゃうんだから、やっぱりさすがだ。

 ただ、世界恐慌の時代を舞台にしているところが味噌で、これが現代だったらちょっとばかりグレードは下がる。イーストウッドという人はそういうところをよくわかっていて、グランド・オール・オプリに出ることが歌手として最大の登竜門だったという時代背景がなんとも上手に組み込まれてるんだよね、たぶん。

 もっとも、世界恐慌の時代はイーストウッド家にとっても大変な時代だったようで、父と子が共演するには自分の人生において忘れられない時代に、つまり、自分がカイルの年齢だった時代に舞台を設定したかったんだろう。つまり、ここでカイルの演じている子供はイーストウッドの幼き日の見立てってことになるんだろう。

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ストリート・オブ・ファイヤー

2015年08月10日 19時20分39秒 | 洋画1981~1990年

 ☆ストリート・オブ・ファイヤー(1984年 アメリカ 93分)

 原題 Streets of Fire

 監督 ウォルター・ヒル

 

 ☆リッチモンドの寓話

 要するに三船敏郎『用心棒』のロックンロール版なんだよね。

 けどそんなことを片鱗も匂わせないのがウォルター・ヒルの凄いところで、まあそもそも『用心棒』だって西部劇からヒントを得てるわけだから、たいがい無法の町にひょっこりと得体の知れない男がやってきて悪い奴をやっつけるっていうのが基本だ。そこに色恋があったり美人のかどわかしがあったりするんだけど最後には民衆の立ち上がりっていうか目覚めみたいなものがあったりもする。そういう物語の定番を音楽映画に仕立ててるところ脱帽しちゃうけどさ。

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