◇種まく旅人くにうみの郷(2015年 日本 111分)
監督 篠原哲雄
出演 栗山千明、桐谷健太、三浦貴大、谷村美月、根岸季衣、山口いづみ、永島敏行、豊原功補
◇伝統作業“かいぼり”の復活
なんだかこの作品は「種まく旅人」シリーズとかってなってるらしい。松竹はシリーズが好きだね。農林水産省の職員が地方に派遣されてその土地土地の名物や名産や風習や伝統やらといったものを知り、味わい、体験し、そして感動することで地方から日本を見つめるとかいった感じなんだろうけど、まあ女性版の寅さんみたいなものかしらね。
かいぼりってのは、灌漑のために掘られた溜め池の池の水を抜いて、底に堆積してる草木や土砂を取り除くことをいうんだそうな。これをやると、山の栄養が海に流れ込んで、海水にミネラルが満ちて、これを食べた魚を獲って食べることで畑に栄養が還っていくっていう循環をうながせる。だから、山と海の両方が得をするってことになるんだけど、なかなか面倒だからこんにちではあまりやられてない。それをやろうって物語だ。
で、物語のへそになってるのは山彦海彦の神話みたいな兄弟で、山彦が桐谷健太で、海彦が三浦貴大ってわけだね。女寅次郎の栗山千明を地方へ派遣するのが永島敏行で、地方でそれを受けとめるのが豊原功補という面子になってて、まあ、おさまりはつく。ただまあ地域調査官という設定だからここに残るわけにはいかないし、そうした分、地に足のついた主人公は求められない。こういうほんわかした話には必要ないんだろうけど、どうしてもヒロインが第三者になっちゃうんだよね。シリーズ物の探偵とおんなじで、こればかりは宿命だから仕方がないね。