◎にっぽん泥棒物語(1965)
植木照男、がんばったね。
昭和40年の作品だからカラー化が勧められてはいたもののまだまだ未熟なところもあったし製作費も嵩む頃なんだけど、この作品については、白黒が活きてる。松川事件のニュースがほんの一瞬挟み込まれるときに、なんの違和感ないからだね。
ま、それはそれとして、当時の松川あたりをおもえば夜ともなれば真っ暗だったろうし、泥棒の林田(三國連太郎)が9人の真犯人とすれちがったときに顔がわからなくするためには画面を暗くしておく必要があったのかもしれないんだけど、やっぱり暗くてよく見えない。くわえて福島弁がわからないから、台詞がかなり聴き取れない。でもまあ、この二重苦がありながらも、おもしろかった。さすが山本薩夫。
三國連太郎が花沢徳衛の仕入れてきた松川事件の容疑者が10万円の保釈金で出られたっていう情報に喜んだときの場面で、
「本来ならば、みんな無罪になっとるとこだ」
「無罪?それがなしておめにわかるだ?」
「おら、このまなこで、ず件の現場、はっきり見てんだ」
このひと言から物語が俄然おもしろくなる。