今回の旅では、ルーラルスケープ、つまり田舎の景観を追いかけることはしなかった。それでも車窓から時折見える田舎の風景を撮していた。最初に気がついたのは、屋根の色が淡いオレンジ色で 比較的よく統一されていることだ。それは屋根材が同じとする事情もあるが、瓦、スレート、トタンと種類はあっても、色だけは揃えられている。
都市に景観規制があることは容易に理解できるが、さて地方はどの程度の規制があるのか、ないのか、WEBで調べた程度ではわからなかった。建物自体が昔からの石造建築を改修してモルタル塗りとしているものもあれば、現在の素材でつくられた建築もあるだろう。車窓からはみわけがつかないが、一定の景観的なまとまりはありそうだ。
こうなると、現地のガイドと通訳とタクシーを調達してルーラル・ワーク・サーベイをするほかないが、例えばフランスのプロバンス地方のような、多分古い建築群のある集落はポルトガルにも存在するだろう。そのあたりのことはポルトガルの書店にゆけば、なにかしらの情報が得られるかもしれないが、今回は本屋に足を運ぶ時間はなかったですね。
今手元には、フランス国立美術館が刊行した、"L'architecture ruale francaise "がある。ここにはフランス全土の地方の集落全体の配置図、個々の民家の平面図や立面図、さらには丸瓦の形状や屋根端部の収まりなどといった細かいことも記録され、写真と合わせてルーラルスケープなどの研究書籍となっている。
ポルトガルは、ヨーロッパの影響を受けているから、この本から建築のディテールを類推はできるが、事実かどうかはわからない。多分ポルトガルにも、こうした本はあるかのだろうか。
我が国にはこうした国土全部を扱った本は地理学として地誌の記録は刊行されているが、建築図面として空間を記録した本が存在しないということである。精々大学の研究室が特定の集落や街を抽出して大変緻密に調査したものとしては、「宮脇檀:日本の伝統的都市空間-デザインサーベイの記録」があり、世界に提供できる優れた史料でもあるが、全国の集落を網羅した空間上の調査は行われてこなかった。そうこうしているうちに古い集落がなくなってしまった、というのが現実である。
集落空間の調査というのは、まさに人海戦術なのである。すべての建築の寸法を実測して図面化するという、大変根気のいる仕事だ。本来ならば国立美術館などがそうした事業を行えばよいのであるが、まあ空間までは手が回らなかったということだろう。日本人は、文字としては記録するが、空間として記録することに全く関心がない民族だと思われる。
今、唯一ルーラル空間を探ろうと思えば、伝統的建造物群保存地区に指定されるときに空間の調査を行い報告書をだしているので、この報告書に主な民家の図面はある。ルーラルが記録されているのは、私の記憶では、それぐらいかな。
だから日本のルーラルスケープは、史料なんかないです!、といってもよいだろう。もうないのよ!、昔の日本の田舎の空間も記録も。だから、現代風に改装された単体の古民家などをみて昔の空気が懐かしいなんていわれても、私は首をかしげるけどね。民家が複数集まった空間、つまりルーラルな環境は、もうありませんということ。ないのに京都の祇園を徘徊されても勘違い解釈だから、まあ京都人としては悩ましいですね。
さて翌朝のポルトの朝飯を探してサン・ベント駅まで歩いて行ったが、大きなマクドナルドは閉まっているし、ようやく駅構内のカフェにありついた。味はよいけど、なんかドトール珈琲みたいな朝飯だな。明日は、もう少しましな朝飯屋にしよう。
追伸
昨日、8月10日は、ついに京都市内の気温も39°に達した。エアコンを効かせて部屋にこもるほか手立てがない暑さだ。午前中出かけたが、その道中だけで、ぐったりする疲れ方だ。そろそろ盆休みに入る頃だろうし、希望は中型台風10号クローサが西日本を伺っているコースだ。目下のところ5日後に広島通過と予報には出ている。この中型台風という程ほどの規模なので雨で都市を大いに冷やして欲しいと願う。だが、僅かだがコースが西へ西へと変わりつつある。もしかして日本列島をかすめるだけなのか。あと3日もすればわかるが、雨を待ちきれない暑さが京都の街で続いている。
EOS1Ds mark3,EF28-300mm/F3.5-5.6
トップ)シントラ:ISO800,焦点距離50mm,露出補正0,f/10,1/250
2)リスボン-オビドス:ISO1600,焦点距離70mm,露出補正-0.33,f/11,1/250
3)リスボン-オビドス:ISO640,焦点距離28mm,露出補正-0.33,f13,1/400
4)ギマランイス-ポルト:ISO800,焦点距離28mm,露出補正0,f/18,1/640
iPhone7
ISO32,焦点距離3.99mm,露出補正0,f/1.8,1/33