
このブログで掲載してきた写真をはじめ、出版や講義や講演会で使用する写真は、プロに頼めるほどの予算がないことと、自分のデザイン感性で見たいとする二つの理由ですべて私自身が撮影しています。第三者の前で発表することを前提とする以上、プロには及ばないものの、せめてプロ並みを目指して撮影努力をするのが、研究やデザインを行う者の姿勢だと私は思います。それだけに、撮影対象に対する理解とともに、取材や調査などを想定し撮影機材の選択には、熟慮せざるを得ません。そんな後者の熟慮の一端を、幾つかまとめました。
私は、ニコン・システムを使い続けて36年になります。取材等の目的に応じた撮影をするためには、取材対象やTPOに応じたボディやレンズやフィルムといった機材のシステム化と選択を熟慮しなければなりません。特にフィールド調査の場合は、あらゆる被写体に応じた撮影ができると同時に、全ての機材を一人で担いで何日でも歩ける程度の重さであることが重要です。この時点でプロユースの4×5といった、大型機材は対象外となります。
1972年頃、ライフ写真全集の撮影ガイド[注1]では、ニコン28mm広角レンズ、同50mm標準レンズ、同105mm望遠レンズ、ニコンFフォトミック・ボディによるシステムが掲載されていました。記事は、何時、何処でも、どんな被写体であっても、大半の撮影ができる信頼性ある基本システムとして紹介されたものです。撮影機材はシステムだとする私の認識は、ライフの知見に従ったものです。私が最初にシステム化した機材が以下でした。
■一眼レフボディ:Nikon F(後期モデル)
○広角レンズ:Nikkor-H,Auto,F3.5/28mm(後にAi改造)
○望遠レンズ:Nikkor-P・C Auto,F2.5/105mm(後にAi改造)[注2]
■レンジファィンダーボディ: Canon 6L(既存品代用)
○標準レンズ: Canon F1.4/50mm(既存品代用)
当時二十代の若者が持つシステムとしては分不相応でしたが、ニコンの耐久性のよさには代え難いものがありました。冬の菅平高原にマウンテンバイクを持ち込み、雪道を走り回りながら多用しつつ、外気温零度以下でも無調整で作動しました。雪原は平面に見えても時折1m位の空洞があるので、時々突然バイクとカメラ毎空洞に落ち込むといった具合に、使い方は荒かったです。イタリアでは、28mmレンズ1本だけで連日数多くの撮影をしましが、目立たなかったので、当時泥棒天国のイタリアで、ひったくりにも遭わずに撮影できました。プロデュース企業では、フィールド調査で多用し、時折鞄毎落下させ、ボディの一部が凹むなどしましたが、一度も故障やオーバーホールをすることなく、今でも使用できます。
キャノンのレンジファィンダーボディは、予算の都合で手元の機材を代用しました。レンズは優れていましたが、ファィンダーは暗く大変使いにくいものでした。現在のAFプロダクト、例えばEOS1Vのファィンダーも、ピントが合わせにくい点では、当時の再来に思われます。私はキャノンという企業は、ファインダーのような手間やコストのかかる部分には、関心がない。他方そうした欠点を補完すべくオートフォーカス技術開発、機材自体の自動化等に先駆けてきたのだと推測しています。キャノンの合理性なのでしょう。
こうしたバッテリー不要の初代システムは、フルマニュアルによる不便さを我慢すれば、現在でも十分機能します。
最初から、お宅談義になりましたが、新年番外地編で、私が意図していることは、機材の日進月歩やデジタル・デバイドへの疑問ですので、数回ほどおつきあい願いたい。
注
注1.タイムライフブックス編集部編:ライフ写真講座;1~15,タイムライフインターナショナル,1972.に付属していた撮影ガイド.
注2.フィンランドのフォトグラファーでありニコンフリークのB.ルースレート氏のホームページでは、デジタル&フィルム用のボディを用い、ニコンレンズの性能を5段階で使用評価しており、私もレンズメーカーが公表するMTF値などと共に結構楽しんでいる。その中で、彼はニコンレンズのBest of Bestを掲載している。最新の高性能レンズとともに、デジタルカメラが登場することなど予想されなかった1950年代に製造されたニッコール105mmレンズが、これにリストアップされている。また彼も評価している上記の広角28mmレンズは、リバーサルフィルムでは発色が悪かったが、デジタル一眼レフボディで使用すると、プログラムの力で、ニコンらしいクールな写りが蘇った。古いニッコールレンズは、Ai改造してさえあれば今でもニコンデジタル一眼レフの一部機種で使用可能であり、現在の高性能ズームレンズと同等かそれ以上の描写をする名レンズもある。こうした名レンズが中古市場では、1万円以下で入手できる。
http://www.naturfotograf.com/index2.html
画像撮影データ
Nikon COOLPIX990,SB24
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