Creator's Blog,record of the Designer's thinking

毎月、おおよそドローイング&小説(上旬)、フィールド映像(中旬)、エッセイ(下旬)の3部構成で描き、撮り、書いてます。

新年番外地編 Tool’s 5.デジタルデバイドのパラドックス

2008年01月05日 | Photographic Equipment



 フィルムからデジタルに変わって何が変化したかと考えれば、真っ先に私の仕事が増えたことである。従来ならば、プロラボにフィルムを投函すれば、20本程度でも2時間で仕上がるので、その間カフェで本を読んだり原稿を書いたりできた。デジタル化されて、現像行程も自前で処理しなければならない。これに要する時間(36枚×フィルム20本=720カット)は、2時間ではすまない。さらにそのためのPC機材も自前調達である。
 次に前述したように画像情報量が減ったこと。現在のデジタル画像は、画素数や色調においてリバーサル・フィルムには及ばない。
 個人の時間を食われたあげく、少ない情報しか生成できない。つまり生産性が低いというのがデジタル化です。それでは何が長所だったかを考えてみます。
 コストがかからない。本当にそうでしょうか? 撮影機材を除外し画像4万枚の現像・画像処理をフィルム派とデジタル派の場合で経費の試算をしました。
■フィルム派
36枚撮りフィルム代800円×1,112本×2(現像代800円/本)=177.9万円
○デジタル派
30MB×40,000枚=1.2TB=10.8万円(外付け型HD2TBの価格)
※オーバー分はCFカードの経費に充当
ここまでの経費は確かに、デジタル化したほうが安い。

次の現像に要する時間に応じたあなたの人件費を加えます。
■フィルム派
あなたの人件費は外注のため=0円
○デジタル派
1カットのRAWデータ処理時間を1分と設定。
1分×4万カット=667時間=95日(1日労働時間7時間と算定)
もしあなたの日当が1万ならば、95万円分の支出。
95万+10.8万円=105.3万円
大分近づきましたが、まだデジタルの方が安いですね。

ところで、デジタル派のあなたが画像処理をしている間、フィルム派は、別の仕事をして稼ぐことができますから・・・同種の他の仕事をすれば収入となり、経費は低減されます。
マイナス計上分1万円×95日=95万円

結果
■フィルム派
経費177.9万円-人件費95万円=82.9万円
○デジタル派
経費10.8万円+人件費95万円の損失=105万円(PC機器償却費もかかります)
 つまりコストも、デジタル派は画像処理でPCの前で時間拘束され、他の仕事ができず結果はフィルム派が22.1万円安いことになります。よく考えれば、アウトソーシングしたほうが、コストは安いというのは経営の常識です。
 フィルムに比べデジタルは、生産性が低い、画像情報が少ない[注]、経費・人件費でコスト増となります。金額的メリットはありません。メリットがあるのは、むしろ社会の方です。例えばデジタル化によって編集作業が短縮したといった具合です。デジタル化とは、個人の時間負担を増やすことで、他方社会の時間負担を軽減し、且つ情報機器などの消費経済に貢献したことです。これが経済的視点からみたデジタルデバイドのパラドックスの一面です。


写真雑誌では、いたずらに画素数を増やさないことを良しとする意見が多いのですが、製造メーカーの販売戦略に荷担した、擁護論にすぎません。筆者のように後日印刷に使用することを考えると、印刷線数の関係もありますが、大は小を兼ねるの論理に従えば、画素数が多ければ情報量も増えるのですから、当然多いほど良い。フィルムですと約3,000万画素相当の情報があります。最近発売されたニコンD3は、価格50万以上とすこぶる高く、逆にフルサイズフォーマット(FX)であるにもかかわらず総画素数約1,200万と著しく低い。D3について前述したB.ルースレート氏のD3レビュー「FXvsDX」に関する比較において、画素ピッチと画素密度による分解能には疑問を呈しており、描写等への影響を指摘していると理解できます。彼が指摘するD3が新聞週刊誌用であり、展示・印刷向きではないとする判断は、開発ポイントをついている思われます。つまりマスコミ用の方が需要が高いということでしょう。1画素サイズが大きいことは感度が高くなります。他方同フォーマットサイズであれば、画素数の多いほうが、画像情報が多いのは自明のことでしょう。作品や印刷の場合はここが重要な点です。ニコンD2Xの1画素のサイズを、そのままFXフォーマットに拡大した場合約3,600万画素となり、従来機種でも十分フィルムの解像度をしのぐことができます。肝心なところで技術の出し惜しみをしないで、ニコンにはもう少し頑張ってもらいたい。

http://www.naturfotograf.com/index2.html

画像撮影データ
Nikon COOLPIX990,SB24

アナログ復活に向けてキープしているシステム
■LeicaM4-P CANADA
■HEXAR RF
○ELEMART F2.8/28mm CANADA
○SUMICRON F2.0/35mm WETZLAR (8element)
○TELE-ELMARIT F2.8/90mm CANADA

そろそろ脱却したいシステム 
■EOS kiss Digital
○EF F2.0/50mm
○ SIGUMA F3.5-5.6/18-125mm
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