オショロコマの森ブログ5

渓流の宝石オショロコマを軸に北海道の渓流魚たちと自然を美麗画像で紹介します、

イトウ放流時代におもう  その弐

2020-07-24 18:24:47 | ニジマスによる被害
イトウ放流時代におもう  その弐


ここでニジマス放流の話は避けて通れません。



今現在、ニジマスは法律的には何故か自由な放流が可能だが、それによる多大なる生態系破壊に関しては行政も、所謂学識経験者とされる方々も、釣り人たちも、揃いもそろって完全に見て見ぬ振りを決め込んでいるのが現状だ。



もしくはその現状を知る機会がないか、まったくの情報不足(無知)の可能性もある。




その理由を、いまさらあれこれ掘り起こすのはあまりに大人げないので、今回は一切おこないません。





ただ 釣り人からの多少の経済的見返り ? を期待して、絶滅危惧種VU オショロコマ の生息水域に今なおドボドボと養殖ニジマスを放し続けている信じられない地方自治体もあるのはとても残念におもいます。





そのためサクルー川水系に豊富に生息していた渚滑川独特の虎虎オショロコマは各支流で絶滅ないし激減して虫の息の状況に陥っていました。(2014年の私たちの調査による:2020年現在では一体どうなっているのか心配 です。)




大量のニジマスの継続的放流で絶滅の危機に瀕している渚滑川水系特有の斑紋の所謂虎虎オショロコマ。





北見市近郊M川の美しいオショロコマ。




TYR川のミドリオショロコマ。




SOS川のオショロコマ。




PSK川の銀ぴか遡上型オショロコマ。



SKR川のオショロコマ。




これは知床半島TI川のオショロコマ。虎虎オショロコマとは別種みたいに見えます。




知床半島 SS川のオショロコマ。




石狩川水系I川のオショロコマ。




このようにオショロコマは枚挙にいとまがないほどに、渓流ごとの変異が目立ちます。放流され野生化したニジマスは、その水系独特ののオショロコマをたちまち駆逐・消滅させてゆきます。





ニジマスによる目を覆うような被害を憂うる一方で、かねてよりニジマス釣りも大好きな私は、一見矛盾するようですが、現在の北海道においてのニジマス放流を全面的にすべて否定するものではありません。




もはや取り返しがつかないほどニジマスがはびこってしまい、オショロコマがわずかに生き残っているような渓流ではニジマス駆除の意味はなく自然経過をみてゆくしかないのは、癌と外科手術適応との関係にも似ています。




さらに、すでに在来魚が消えてしまって久しい水域では、当然ながらこの期に及んでのニジマス駆除は無意味であることは言うまでもありません。




ブラウンやカワマスについても同様で、法律的に新た放流することは厳に禁じられていますが、かって道南や静狩川で行われたような安易・軽率なブラウントラウトの駆除活動については種々の問題があり、ケースバイケースで慎重に検討すべきと思います。




道東のカワマス。独特のごく狭い特異な水域にのみ、それなりの生態系を作って長年棲息している。




このカワマス個体群は放流後すでに80年を経過し世界的にみても、いまや貴重な種苗だとおもいます。




















空知川水系にもカワマスは広く浅く広範に独特の生態系をなして存在しています。

空知川水系支流のカワマス。道東産とは外見的にやや異なり区別可能です。






空知川水系では実はカワマス狙いの釣り人がとても多いことを最近知りました。





十勝川水系のブラウントラウト。在来の生物がほぼ消えた特異な環境に、独特の生態系を作って長年にわたって棲息・繁栄している。地元はもちろん、道内外からの釣り人は多い。




















このほか道内でブラウンはカワマスよりは遙かに広範に分布しており洞爺湖や支笏湖で特に大型化したものはアングラーたちの憧れのターゲットになっている。






1938(昭和13年)の湖底火山の爆発で湖水が強く酸性化し魚族が絶えた道東の湖に復活し、現在、独特の生態系で棲息、繁栄しているヒメマス。わが国における Native のヒメマスは阿寒湖とチミケップ湖の2か所のみが原産地。このヒメマスはどこの種苗が移植されたものでしょうか ?。



北海道の湖にはヒメマスが棲息するところが多いが、本来 native のヒメマスは阿寒湖と北見市近郊のチミケップ湖のみで、これ以外の湖のヒメマスはすべて放流によるものです。


現在の屈斜路湖のヒメマスは 1994-1995にかけて、釧路川に遡上したベニザケ親魚由来の稚魚放流がおこなわれたが、これが起源とされています。これは、屈斜路湖で育ちスモルト化したものが降海・遡上型となりベニザケ資源になることを期待したものとおもうが、残念ながらそうはならず、淡水の屈斜路湖内で世代交代を繰り返す湖沼型個体群( 尾叉長28cm前後と小型 )となり現在に至っているのです。



2009年の調査では 採捕された 573個体中1匹のみだが 尾叉長 63.6cm、体重3.12Kg と大型で 耳石の Sr. : Ca 比の検討から降海・遡上型と思われる個体が捕獲されており、きわめて稀にだが降海・遡上型もみられることがわかっています。








このように現在の北海道で 50〜80年前に移植・放流された種々のトラウトたちは、長い経過を経て在来のトラウト同様それぞれ独特の生態系をなして今現在、生息し、これからも生きていきます。




今となっては、これら外来のトラウトたちの存在を全面的に単純完全否定すべき根拠はありません。




生態系とは自然、人為、いずれかの影響問わず常に大きく変動してゆくもので、ことの善悪・損得は人間の歴史と同じくその都度、その時代独特の特殊な背景をも考慮して総合的な判断をしてゆくしかないと考えられます。





しかし、いまだ良好な在来の生態系が残っている数少ない貴重な水系 ( 例えば絶滅危惧種 VU オショロコマ生息域 )には決して外来魚(現実的に問題となるのはニジマス)を放流しないよう、このブログなどで長年、強く強く執拗に執拗に訴え続けてきました。




当初は、私が発する ニジマス放流禁止、問題ニジマス駆除 といった単なる言葉尻のみをとらえて、信じられないような超過激な反発を示し、物事の真意にはまったく耳を傾けようとしない狂信的 ? ニジマス釣り愛好家の方がいることに困惑・驚愕し、現実の世界のきびしさを痛感したものです。




これは根気強く熱心に説明すればすぐわかってくれるなどという甘い考えのみではどうにもならない事象があることを強く思い知らされる結果になりました。生態系がどうとか生物多様性条約がどうとかいった問題ではなく何か大きな利権がかかわっている可能性も大きい。ちょっと大げさですがこの世に戦争が絶えないことと根は一つでしょうか。しかし、こういった状況であっても粘り強い話し合いを続けていくべきであることは言うまでもありません。




かってブラックバス放流禁止の法案に猛反対し100万人もの署名を集めた狂信的バス釣り愛好家たちのすさまじいパワーがこれであることに思い至った次第です。




ちなみに狂信的とは必ずしも悪意をこめているわけではなく、私自身もいくつかのジャンル( たとえば蝶 )においては明らかに狂信的なところがあります。




さすがに10年もニジマス問題をこのブログで発信し続けていると、これらの誤解はかなりとけているかに感じていますが、今でもオショロコマ棲息水域心臓部に放流ニジマスを見かけた場合は徹底駆除(がんばって食べる)をこころがけています。




いまや私以外にも同様な考えで問題となるニジマスを駆除し続ける、 ニジマスバスターズ みたいな釣り人はそうとう増えており、稀少なオショロコマ個体群絶滅を先送りする心強い方々です。




先送りという意味は低水温を好むオショロコマが今のままの地球温暖化がすすむと、源流域の先にはもはや逃げ場が無く絶滅する可能性があるということで、これがオショロコマが激減していることに加えて、絶滅危惧種 Very Urgent(VU) とされる最も大きな理由です。




ニジマス放流に関するこのスタンスは最近では多くの方々にも理解・支持されるようになり、むしろ一般的な外来種(ニジマス)対策の一環として当然のこととも見なされて、大きな手応えを感じています。




在来魚類が良好な生態系を保っているところにはニジマスを放流しないという、最近のニジマス放流に関する十勝ルールは、まさにすばらしいとおもいます。




私が長年、発信しているニジマス放流禁止、ニジマス駆除とはそういう意味ですので、くれぐれも誤解のないようにお願いします。




ちなみに私自身は子供のころからニジマス釣りは大好きで、もはやニジマスしかいなくなって久しい水域、野生化ニジマス一色で既にニジマスがそれなりの生態系をなしている水域では普通にキャッチアンドリリースのニジマス釣りを楽しんでいます。



































         この項、続く。






最後まで見ていただきありがとうございます。できましたらランキングポイントアップのために下記の 渓流釣りバナー をワンクリックしていただければ幸いです。






にほんブログ村 釣りブログ 渓流釣りへにほんブログ村



にほんブログ村 釣りブログ 渓流釣りへにほんブログ村
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする