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イワナ、北海道と本州の違い
イワナ (アメマス) が群れで移動した?北海道天塩川水系支流の思い出
田中 篤
日本各地に生息するイワナはそれぞれの環境で隔絶されて生息しているため、地方によって変異が大きい、つまり見た目で違う姿をした個体群が多い。
北海道のアメマス( エゾイワナ ) は大きな白点が特徴だが、中部太平洋側に棲むヤマトイワナは大きな白点がなく通常は体側に着色班がある。
ただ、稀に道南の一部の渓流には着色斑のあるアメマスもいるようだ。
このような外見の違いは釣り上げてみればすぐわかるものだが、棲む環境が違えばそれぞれに生態の違いもありそうだ、生態の違いは長期の観察が必要なのでこれを把握することはなかなか難しい。
私の経験では北海道のイワナと本州のイワナで生態に違いが感じられるエピソードがあったので、下記に紹介したい。
私の実家は北海道の天塩川水系の1支流の近くにあった。その川で子供の頃からウグイやヤマメを釣ったりしていた。
しかし家の近くにはアメマス (エゾイワナ) はいなかった。
私の祖父の話では、この川の支流にヤマメ釣りに入ってかなり釣り登った所でアメマス (便宜上、以下イワナとします) を釣ったと言っていた。
ちなみに本流は魚が居なくなるまで遡行したがイワナはいなかった、でもモウセンゴケの群生地は見つけた。
私が大学生の頃、この支流に新たに林道がついて奥に行けるようになった。林道の入り口には鎖がかかっていたが、原付バイクでくぐって奥へ行った。
すると最奥の橋の所でイワナを爆釣した。
もう川もだいぶ細くなっているが、さすがに誰も入っていない川の魚影はすごかった。その魚影の濃さに釣られてここに何度も通った。
時期的には大学の夏休みなのでほぼ8月の事だと思う。
まずこの支流は本流から分かれて500メートルくらいで砂防堰堤がある。 なのでその上流はヤマメがいない。
祖父が釣りをした時はヤマメがいたのでダムはその後にできたと思われる。なので基本的に川には魚がいないので釣り人も入らない川だった。
イワナはこの支流の上流部のみに生息し、堰堤の上に生息しているので大河川や海にくだるアメマスではなく陸封型アメマス(エゾイワナ)と言える。
最奥の橋から入って釣り登るとガンガン釣れた。しかし帰りは川通しに戻ってくるしかなかった。
ビクも満杯で重かったので大変だった。
なので次の日は橋から300メートル位下流に入渓した。 釣り登って橋のところから退渓するつもりだった。
しかし全く釣れない、あれほど魚影の濃い川なのに魚が全くいない、川を歩く時の逃げる魚も全く見えない。
不思議に思ってすぐ川を上がり、こんどは橋の50m下流に入渓した。すると昨日と同様にガンガン釣れた。 細い川の小さなポイントなのに一か所から2~3匹ずつ釣れる、
過密とも言える生息密度だ。
林道は川沿いに通っているので下流部を転々と釣ってはみたがイワナは全くいなかった。なぜかこの最奥の橋の周辺から上流にしかいなかった。
一度だけ10月に実家に帰った時、この川を釣った。
しかし橋の近辺にはイワナはいなかった。
水温が下がったのでもっと下流に移動したのか、と思ってあちこち探したが全く釣れなかった。 おそらくもっと上流に移動したのだろうか?。
本州の川のように釣り人の多い川ならば、誰かに釣られたのだろうと思いますが、この川にイワナが生息する事は私しか知らない川、他の釣り人の影響は考えられない。
つまりイワナが移動したとしか思えないのである。
あと不思議だと思ったのは魚のサイズがきっちりと揃っている事だった。
釣れるイワナは13cm、18cm、24cm、30cmでそれぞれが、2年魚、3年魚、4年魚、5年魚だと思う。
釣れる割合としては18cmが一番多く6割位、そして13cm、24cm、30cmと続き、30cmの大物は約50匹に一匹だったと記憶している。
なぜこんなに育ち方が揃うのか、恐らく群れで移動している事と関連があると思われる。
この川のイワナはなぜか川に分散しない、過密な状態で群れで移動しているようだ。
餌を取る事を優先させればライバルのいる過密な群れの中よりは分散したほうが有利だ。
つまり彼らは餌取りを最優先にはしていない。
なので群れで移動しながら争うことなく仲良く均等に餌を得ているのであろう。
だから餌争いで負けて成長の遅れる個体がいなくて年齢毎にサイズがきっちりと揃うのではないだろうか?。
一方の本州のイワナ、長野県水産試験場の調査によると県内のイワナはかなり定着性が強くて、大水などがあってもあまり移動することはないようだ。
私の経験でも尺イワナを釣って2週間後に全く同じポイントで同じイワナが釣れた事がある、写真を比べると同じ紋様である事がわかる。
つまり強い魚は有利な場所は占有してそこから動かないようである。
本州のイワナは観察していても縄張り争いが良く見られ、時には共食いする事も知られている。
つまり強いものが有利な場所を独占して、より多くの餌を得るわけだ。
この縄張り争いは体の大きなものは有利になるので、大きいものはより大きく、成長の遅れたものはより成長が遅れる事になり、本州のイワナのサイズはバラバラになるのである。
生息環境が厳しければ厳しいほど餌優先で縄張り争いをしなければ生き残れない。生存競争に脱落したものは共食いの対象にさえなる。
こうして環境に見合った生息数に自然調整されるのかもしれない。これが本州のイワナ。
一方の北海道のイワナは、過密な群れで移動し、争う事もなく仲良く餌を取る。
この生活様式ならば脱落するものもなく多くのイワナが生き残る。
また近くに仲間がいるので鳥などの敵の攻撃なども回避しやすいのかもしれない。
ただしこのような生態は比較的餌が豊富にないと成り立たないので、寒い北海道ですが川の中は意外と豊かなのかもしれません。
北海道の河川様式も比較的ゆったりとして落差少なく標高も低く移動しやすい。
一方、川の標高が高く、川の落差も激しい本州の河川よりは環境は良いのかもしれない。
また北海道のイワナは陸封型になっていても群れで移動するというアメマスの性質を残しているのかもしれません。
普段釣りをしていても魚が移動しているのか定着しているのかなんて、なかなかわからないのが現実である。
北海道では他の川も釣りましたが、イワナが移動して良く釣れた所が全然いなくなるなんて経験は他にはないので、もしかするとこの川だけの特殊な事例かもしれません。
以上、はるか昔の天塩川水系支流での田中篤さんの経験が述べられています。一般的に北海道の渓流ではオショロコマもアメマスも8月ころから上流をめざして移動を開始します。夏場の水温上昇を嫌ったり、田中さんの考察のような移動の可能性もありますが、私はこれらは秋から初冬の産卵へむけての行動ではないかと考えています。移動しながら婚姻色がはっきりしてくる個体も多くなり、やがてオショロコマは最源流の産卵場所に集結して10月中旬から11月初旬にかけて産卵します。アメマス(エゾイワナ)も同様な移動を開始して、一般的にオショロコマよりは少し遅れて産卵をはじめます。道東太平洋側の川ではウミアメマスが大挙して遡上し源流域でしばしば大集結し、いつきのアメマスも一緒になって産卵します。遡上する群れをは日々、刻一刻と移動しますが、その移動速度や源流域に集結する時期は年によってかなりの変動があります。多数のアメマスの群れが翌日には、はるか上流へ移動したりするのでしばしば群れを捕捉するのに難渋することがあります。
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イワナ、北海道と本州の違い
イワナ (アメマス) が群れで移動した?北海道天塩川水系支流の思い出
田中 篤
日本各地に生息するイワナはそれぞれの環境で隔絶されて生息しているため、地方によって変異が大きい、つまり見た目で違う姿をした個体群が多い。
北海道のアメマス( エゾイワナ ) は大きな白点が特徴だが、中部太平洋側に棲むヤマトイワナは大きな白点がなく通常は体側に着色班がある。
ただ、稀に道南の一部の渓流には着色斑のあるアメマスもいるようだ。
このような外見の違いは釣り上げてみればすぐわかるものだが、棲む環境が違えばそれぞれに生態の違いもありそうだ、生態の違いは長期の観察が必要なのでこれを把握することはなかなか難しい。
私の経験では北海道のイワナと本州のイワナで生態に違いが感じられるエピソードがあったので、下記に紹介したい。
私の実家は北海道の天塩川水系の1支流の近くにあった。その川で子供の頃からウグイやヤマメを釣ったりしていた。
しかし家の近くにはアメマス (エゾイワナ) はいなかった。
私の祖父の話では、この川の支流にヤマメ釣りに入ってかなり釣り登った所でアメマス (便宜上、以下イワナとします) を釣ったと言っていた。
ちなみに本流は魚が居なくなるまで遡行したがイワナはいなかった、でもモウセンゴケの群生地は見つけた。
私が大学生の頃、この支流に新たに林道がついて奥に行けるようになった。林道の入り口には鎖がかかっていたが、原付バイクでくぐって奥へ行った。
すると最奥の橋の所でイワナを爆釣した。
もう川もだいぶ細くなっているが、さすがに誰も入っていない川の魚影はすごかった。その魚影の濃さに釣られてここに何度も通った。
時期的には大学の夏休みなのでほぼ8月の事だと思う。
まずこの支流は本流から分かれて500メートルくらいで砂防堰堤がある。 なのでその上流はヤマメがいない。
祖父が釣りをした時はヤマメがいたのでダムはその後にできたと思われる。なので基本的に川には魚がいないので釣り人も入らない川だった。
イワナはこの支流の上流部のみに生息し、堰堤の上に生息しているので大河川や海にくだるアメマスではなく陸封型アメマス(エゾイワナ)と言える。
最奥の橋から入って釣り登るとガンガン釣れた。しかし帰りは川通しに戻ってくるしかなかった。
ビクも満杯で重かったので大変だった。
なので次の日は橋から300メートル位下流に入渓した。 釣り登って橋のところから退渓するつもりだった。
しかし全く釣れない、あれほど魚影の濃い川なのに魚が全くいない、川を歩く時の逃げる魚も全く見えない。
不思議に思ってすぐ川を上がり、こんどは橋の50m下流に入渓した。すると昨日と同様にガンガン釣れた。 細い川の小さなポイントなのに一か所から2~3匹ずつ釣れる、
過密とも言える生息密度だ。
林道は川沿いに通っているので下流部を転々と釣ってはみたがイワナは全くいなかった。なぜかこの最奥の橋の周辺から上流にしかいなかった。
一度だけ10月に実家に帰った時、この川を釣った。
しかし橋の近辺にはイワナはいなかった。
水温が下がったのでもっと下流に移動したのか、と思ってあちこち探したが全く釣れなかった。 おそらくもっと上流に移動したのだろうか?。
本州の川のように釣り人の多い川ならば、誰かに釣られたのだろうと思いますが、この川にイワナが生息する事は私しか知らない川、他の釣り人の影響は考えられない。
つまりイワナが移動したとしか思えないのである。
あと不思議だと思ったのは魚のサイズがきっちりと揃っている事だった。
釣れるイワナは13cm、18cm、24cm、30cmでそれぞれが、2年魚、3年魚、4年魚、5年魚だと思う。
釣れる割合としては18cmが一番多く6割位、そして13cm、24cm、30cmと続き、30cmの大物は約50匹に一匹だったと記憶している。
なぜこんなに育ち方が揃うのか、恐らく群れで移動している事と関連があると思われる。
この川のイワナはなぜか川に分散しない、過密な状態で群れで移動しているようだ。
餌を取る事を優先させればライバルのいる過密な群れの中よりは分散したほうが有利だ。
つまり彼らは餌取りを最優先にはしていない。
なので群れで移動しながら争うことなく仲良く均等に餌を得ているのであろう。
だから餌争いで負けて成長の遅れる個体がいなくて年齢毎にサイズがきっちりと揃うのではないだろうか?。
一方の本州のイワナ、長野県水産試験場の調査によると県内のイワナはかなり定着性が強くて、大水などがあってもあまり移動することはないようだ。
私の経験でも尺イワナを釣って2週間後に全く同じポイントで同じイワナが釣れた事がある、写真を比べると同じ紋様である事がわかる。
つまり強い魚は有利な場所は占有してそこから動かないようである。
本州のイワナは観察していても縄張り争いが良く見られ、時には共食いする事も知られている。
つまり強いものが有利な場所を独占して、より多くの餌を得るわけだ。
この縄張り争いは体の大きなものは有利になるので、大きいものはより大きく、成長の遅れたものはより成長が遅れる事になり、本州のイワナのサイズはバラバラになるのである。
生息環境が厳しければ厳しいほど餌優先で縄張り争いをしなければ生き残れない。生存競争に脱落したものは共食いの対象にさえなる。
こうして環境に見合った生息数に自然調整されるのかもしれない。これが本州のイワナ。
一方の北海道のイワナは、過密な群れで移動し、争う事もなく仲良く餌を取る。
この生活様式ならば脱落するものもなく多くのイワナが生き残る。
また近くに仲間がいるので鳥などの敵の攻撃なども回避しやすいのかもしれない。
ただしこのような生態は比較的餌が豊富にないと成り立たないので、寒い北海道ですが川の中は意外と豊かなのかもしれません。
北海道の河川様式も比較的ゆったりとして落差少なく標高も低く移動しやすい。
一方、川の標高が高く、川の落差も激しい本州の河川よりは環境は良いのかもしれない。
また北海道のイワナは陸封型になっていても群れで移動するというアメマスの性質を残しているのかもしれません。
普段釣りをしていても魚が移動しているのか定着しているのかなんて、なかなかわからないのが現実である。
北海道では他の川も釣りましたが、イワナが移動して良く釣れた所が全然いなくなるなんて経験は他にはないので、もしかするとこの川だけの特殊な事例かもしれません。
以上、はるか昔の天塩川水系支流での田中篤さんの経験が述べられています。一般的に北海道の渓流ではオショロコマもアメマスも8月ころから上流をめざして移動を開始します。夏場の水温上昇を嫌ったり、田中さんの考察のような移動の可能性もありますが、私はこれらは秋から初冬の産卵へむけての行動ではないかと考えています。移動しながら婚姻色がはっきりしてくる個体も多くなり、やがてオショロコマは最源流の産卵場所に集結して10月中旬から11月初旬にかけて産卵します。アメマス(エゾイワナ)も同様な移動を開始して、一般的にオショロコマよりは少し遅れて産卵をはじめます。道東太平洋側の川ではウミアメマスが大挙して遡上し源流域でしばしば大集結し、いつきのアメマスも一緒になって産卵します。遡上する群れをは日々、刻一刻と移動しますが、その移動速度や源流域に集結する時期は年によってかなりの変動があります。多数のアメマスの群れが翌日には、はるか上流へ移動したりするのでしばしば群れを捕捉するのに難渋することがあります。
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