デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

バップ・クラリネット・トニー・スコット

2007-04-08 07:57:07 | Weblog
 ニューオリンズ・ジャズやスウィング期に欠かせない楽器にクラリネットがあり、ジョージ・ルイス、ベニー・グッドマン、アーティ・ショウ、クラリネット奏者は当時の花形であった。木管楽器特有の柔らかい音色はどこか飄々とした感じで心地好いが、サックスに比べ音のぬけが悪く、音量も小さいせいかモダン期に入り急速にクラ奏者は激減している。バディ・デフランコというモダン・クラリネットの第一人者もいるが、サックス奏者の持ち替え楽器程度にしかきかれないのは寂しい。

 デフランコと並びモダン期に活躍した人にトニー・スコットがいて、共にチャーリー・パーカー直系のバップをクラリネットで表現したプレイヤーだ。デフランコは一時グレン・ミラー・オーケストラのリーダーを務め、伝統を継承するスタイルを築いているのに対し、スコットはヨーロッパ、アフリカ等海外で暮らし、ジャズの表現力に幅を広げた。60年代初頭には日本に滞在し、禅に魅せられ、尺八の山本邦山氏とも共演している。ジャンルを超えた音楽性は斬新であったが、ベースはパーカーでありバップの延長上にあったと思う。

 写真は56年7月のカルテット、テンテット、オーケストラのセッションを収録したもので、スコットの流麗なソロが素晴らしい。数多いスコットのアルバムでは目立たない作品なのだが、意外に人気がある。その人気はスコットではなく、サイドで参加しているビル・エヴァンスによるものであろう。56年7月と記したのは、同年9月にエヴァンスの初リーダー作「ニュー・ジャズ・コンセプション」を録音しているからであり、僅か2ヶ月前となるとエヴァンス・ファンならずとも気になる。栴檀は双葉より芳し、エヴァンスの美しいタッチはさすがだろう。録音年、月、時には日も重要な意味を持ってくるのがジャズの魅力でもある。

 パーカー生誕80年にあたる2000年に日本チャーリー・パーカー協会主催の「Bird 2000」が開かれ、講演と演奏のため長い髭を蓄えたスコットが来日したのは記憶に新しい。3月28日にトニー・スコットが85歳で亡くなった。そして跡を追うようにパーカー協会会長、辻バードさんが2日後の30日に75歳で旅立たれた。パーカーを愛したおふたりのご冥福をお祈りします。
コメント (26)
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