デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ウッズのブランド

2007-04-15 08:00:15 | Weblog
 当地のイオングループ生活百貨店にCD店があり、ジャズコーナーも充実していることから良く利用する。昨日ついでにとばかりに食料品の買い物を頼まれ、めったに行かない売り場を覘いてみた。土曜日の午後という混み合う時間帯でいくつかあるレジも行列だ。並びながら奥様方のバッグをウォッチングするとヴィトン、シャネル、エルメス、実にブランド品が多い。ご近所らしいエプロン姿の奥様も財布はしっかりグッチだったりする。

 凡そブランド品には縁がないが、ピエール・カルダンは小生も持っている。ブランド自慢といきたいところだが、こちらはレコードの話。フィル・ウッズとヨーロピアン・リズム・マシーン(ERM)の「Live at Montreux 72」はピエール・カルダン・レーベルの「Chromatic Banana」に次ぐ2作目で、72年のモントルージャズ祭のライブ盤だ。角を円くカットしたジャケットはカルダン・ブランドに恥じない洒落たデザインになっている。ライブらしく1曲25分に亘る組曲が収録されていて、複雑な演奏ながらソロリレーは見事な展開で、この年のグラミー賞最優秀ジャズグループに初めてノミネートされたことも頷ける。

 50年代はパーカー派のアルトとして歩んできたウッズであったが、60年代にヨーロッパに渡り新境地を開くことになる。温かく迎えたくれたパリの風土が合っていたとみえ、実に伸びやかで、この地で結成したERMはウッズにとって理想的なバンドといえよう。68年の「アライヴ・アンド・ウェル・イン・パリス」は、アメリカ時代不遇なビッグバンド仕事の不満を一気に飛ばす力演だった。かつての線の細いパーカー・スタイルにかわって、力強く逞しい。この音こそウッズ・ブランドである。

 保守系右派の論客として知られるマークス寿子さんは、著書「とんでもない母親と情ない男の国日本」で、ブランド品に狂う日本人を痛烈に批判していた。小学生の子どもにまでブランド品を着せ、給食費を払わない母親は論外だが、少なからずブランド品への依存は否定できない。フランスではヴィトンのバッグを持つ女性は電車に乗らないそうだが、ヴィトンを提げ長ネギを覗かせたスーパーの買い物袋を持つのが日本のブランドかもしれない。
コメント (26)
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