デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

モーター・シティ・シーン

2007-11-18 08:23:09 | Weblog
 大ヒットした映画「大空港」の原作者で知られるアーサー・ヘイリーが、30年以上前に書いた小説に「自動車」がある。モーター・シティと呼ばれたデトロイトを舞台にした作品で、高度成長期の自動車産業の内幕を描いていた。業界のトップであり続けるための売れる車の研究開発、ライバル他社を出し抜く性能向上、それに伴うスパイの暗躍等、緻密な取材による内容はフィクションとは思えないほどリアルだった。

 ペッパー・アダムスとドナルド・バードが、ニューヨークでレギュラーを組んでいた頃、アダムスがバードに切り出す。「俺たちデトロイト出身者だけでアルバムを作ってみないか」、「いいねぇ、トミー・フラナガンとポール・チェンバースはデトロイトだぜ」、「ケニー・バレルも同郷だな、あとはドラムか」、「ルイ・ヘイズがいるけれど、レコード会社の契約が違うな」、「変名という手もあるぜ」、「電話してみようか・・・ヘイ、ルイス、一緒にやらないか」、「変名はヘイ・ルイスで決まりだな」 本当のような嘘の話である。

 こうしてデトロイト出身者だけで、「モーター・シティ・シーン」ができ上がった。オープニングはバードのワンホーンで「スターダスト」、次のアダムス作のブルースが素晴らしい内容だ。バリトンというと、どうしても都会的なジェリー・マリガンの名が浮かび、アダムスは後塵を拝した感があるが、ブルースナンバーの粘りつく音は土の温もりのような自然の優しさがある。デトロイトはR&Bのレーベル、モータウン発祥の地でもあった。ブルース感覚を体で感じ取っていたのかもしれない。

 先日発表されたトヨタ自動車の中間決算は13兆円で、2位のゼネラル・モーターズを大きく引き離している。品質への評価の高いトヨタ車は世界的に売れ、低燃費のハイブリッド車も好調のようだ。小説が書かれた30年前には日本車の台頭など予想だにしなかっただろう。
コメント (25)
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