NHK-FMで10月の体育の日に放送していた「オールデイ・ジャズ・リクエスト」は、タイトル通り視聴者からリクエストを募り、ライブも中継しながら丸一日ジャズを楽しめるラジオ番組であった。いつの放送だったか忘れてしまったが、番組の最後でリクエストを集計したベストを発表したことがある。「モリタート」、「レフト・アローン」、「ワルツ・フォー・デビー」等々、満場一致の名演が並ぶ。さて、1位は・・・
「ファイヴ・スポット・アフターダーク」だった。蝶が羽根を広げているようにも見える女性ダンサーをあしらったジャケットを見る、いや、思い浮かべるだけで音が聴こえてくるカーティス・フラーの「ブルースエット」の冒頭を飾る曲である。アルバムにも参加しているベニー・ゴルソンの作で、哀愁を帯びたメロディと、トロンボーンとテナーが織り成す甘美なハーモニーは夕暮れの感傷を呼び起こすものだ。ファイヴ・スポットはニューヨークにあるジャズクラブで、フラーとゴルソンが一年契約の専属バンドとして出演していたことがある。毎晩熱心に聴き入るお客と、腕を磨いた場であるファイヴ・スポットに捧げた曲で、タイトルでクラブへの感謝と愛着を示したのだろう。
多くのトロンボーン奏者がいるが、フラーほど美しい音色は聴いたことがない。フラーはデトロイトからニューヨークに進出した57年に5枚のリーダーアルバムを録音している。期待の大きさが窺えるものだが、その後の活躍をみても期待を裏切ることはなかった。57年のプレスティッジ、ブルーノート盤は若干22歳という若さゆえの硬さがあるもののリラックスした味わいがあり、その落ち着かせる音色は59年のこのアルバムで更にゴルソンのアレンジにより引き立っている。管の柔らかいハーモニーを活かせるフラーは、ハードばかりがジャズでないことを教えてくれるものだ。
リクエスト番組でトップの曲は、当然ジャズ喫茶でもよくかかったが、このアルバムがかかると席を立ちかけた人も座りなおし、この曲の途中で席をあとにするお客もいなかった。名曲、名演、名盤の力である。
「ファイヴ・スポット・アフターダーク」だった。蝶が羽根を広げているようにも見える女性ダンサーをあしらったジャケットを見る、いや、思い浮かべるだけで音が聴こえてくるカーティス・フラーの「ブルースエット」の冒頭を飾る曲である。アルバムにも参加しているベニー・ゴルソンの作で、哀愁を帯びたメロディと、トロンボーンとテナーが織り成す甘美なハーモニーは夕暮れの感傷を呼び起こすものだ。ファイヴ・スポットはニューヨークにあるジャズクラブで、フラーとゴルソンが一年契約の専属バンドとして出演していたことがある。毎晩熱心に聴き入るお客と、腕を磨いた場であるファイヴ・スポットに捧げた曲で、タイトルでクラブへの感謝と愛着を示したのだろう。
多くのトロンボーン奏者がいるが、フラーほど美しい音色は聴いたことがない。フラーはデトロイトからニューヨークに進出した57年に5枚のリーダーアルバムを録音している。期待の大きさが窺えるものだが、その後の活躍をみても期待を裏切ることはなかった。57年のプレスティッジ、ブルーノート盤は若干22歳という若さゆえの硬さがあるもののリラックスした味わいがあり、その落ち着かせる音色は59年のこのアルバムで更にゴルソンのアレンジにより引き立っている。管の柔らかいハーモニーを活かせるフラーは、ハードばかりがジャズでないことを教えてくれるものだ。
リクエスト番組でトップの曲は、当然ジャズ喫茶でもよくかかったが、このアルバムがかかると席を立ちかけた人も座りなおし、この曲の途中で席をあとにするお客もいなかった。名曲、名演、名盤の力である。