デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

オスロのセロニアス・モンク研究家

2013-08-11 09:26:07 | Weblog
 先日の地元紙に札幌ジュニア・ジャズスクール出身者を中心に組んだ小中高生による少女7人のジャズバンドが、初参加した昨年に続いてオスロ・ジャズ・フェスティバルに出演するという朗報が載っていた。札幌とオスロはウィンタースポーツを通じて交流があったが、ジャズでより絆が深まることになる。少女たちが「海外でも認めてもらえるように頑張る」と練習に励んでいる様子は頼もしい。

 ノルウェーといえばクヌート・クリスチャンセンというピアニストがいる。あまり知られていないノルウェーのジャズシーンにあって、クリスチャンセンはセロニアス・モンクの研究家として著名な人だ。「Monk Moods」は代表作といえるアルバムで、タイトル通り「ラウンド・ミッドナイト」をはじめ、「ルビー・マイ・デア」「アイ・ミーン・ユー」等、モンク・スタンダードを中心にオリジナル曲を配した構成になっている。モンクのあの意表を付く独特の世界を表現するため、曲によって編成を変えているのはさすがだ。一本調子だとモンクの強烈で刺激的な魅力を引き出せないことを知っているのだろう。

 注目すべきは「ブリリアント・コーナーズ」で、モンクのなかでも特に難曲といわれているものだ。モンク自身の演奏は56年の同タイトルアルバムに収められているが、不協和音を効果的な形で使った前衛ジャズの先駆けといえるもので、モンクがいかに進んでいたのかがよくわかる。その進歩的傑作に挑むクリスチャンセンは、モンク同様ホーンを配しているが、これがソプラノ、アルト、テナー、バリトンの4本のサックスとトランペットが2本という強烈なもので、立体感を見事に構築している。厚みのあるテーマは幻想的でありながらユーモアさえ感じさせるが、このユーモアこそモンクの意図するところかもしれない。

 オスロ・ジャズ・フェスのプログラムにはボブ・ドローをはじめファラオ・サンダース、ジョシュア・レッドマンというビッグネイムもみられるが、多くは地元のジャズプレイヤーであり、内容はシンセサイザーを駆使したバンドもあるが、ディキシーからフリーまで全てジャズである。地元のジャズメンの出演は一組もなく、ロックやフォークのプレイヤーを呼んでは過去最高の動員数を記録したと喜んでいるどこぞのジャズフェスはジャズという冠を外したほうがいい。
コメント (10)
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