デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

イリノイ・ジャケーの身長

2013-11-17 09:50:42 | Weblog
 以前、スタン・ゲッツを話題にしたとき、マイケル・シーゲル著「サキソフォン物語」(青土社刊)を参考にした。サックス奏者の秘話は面白い。そのなかでイリノイ・ジャケーが登場し、「師であり、自分のサウンドを生んだ手本のひとつと仰ぐ」とジャケーが名前を出したのはレスター・ヤングだ。ジャケーの熱心なファンには周知の事実かもしれないが、テキサス・テナーをあまり聴かない人には意外である。

 ライオネル・ハンプトン楽団時代に残した「フライング・ホーム」の豪放磊落なソロや、JATPに於ける派手なブローからはヤングの繊細さは微塵も感じられないが、ジャケー本人が語るのだから間違いではないだろう。この事実を検証すべく、レコードを探してみると「デザート・ウインズ」という格好なアルバムがあった。メンバーはケニー・バレルをはじめ、トミー・フラナガン、ウェンデル・マーシャル、レイ・ルーカスと一流が並ぶ。そしてコンガを入れて賑やかにするあたりはジャケーらしい。選曲は「スター・アイズ」や「カナダの夕陽」、「ユー・アー・マイ・スリル」というお馴染みのものに加え・・・

 何と、この検証に最も相応しいと思われる「レスター・リープス・イン」が収録されているではないか。ご存知レスターが書いた曲で、度々演奏した代表作でもある。その曲をジャケーはどのように演奏しているのか。ブラインド・テストで出題されたら、レスターではないことはわかっても、ジャケーと言い当てる人は少ない。大音量でサックスを吹くことからホンカーと呼ばれるジャケーが、楽器をいたわるように優しく音を出しているのだ。曲名に自身の名前を入れていることからレスターの愛着ぶりもわかるが、師と仰ぐ人の曲を演奏するときもまたかけがいのない愛着が生まれるのだろう。

 同書で初めて知ったのだが、ジャケーの身長は155センチ前後だったという。テナー奏者はよく大きな男でないと大きな音が出ないといわれているだけに驚きだ。ハンプトン楽団には当時ジャケーよりも数ヶ月年下のデクスター・ゴードンが真横の席いた。ゴードンといえば2メートル近い大男だ。レコードでは音量の比較はできないが、二人が立って交互にソロを取るシーンを想像すると微笑ましい。
コメント (12)
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