デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

「ビ・バップをいつやるの?」 「今でしょ!」とバードは言った

2013-12-08 08:42:21 | Weblog
 先週、今年の世相を映した言葉を選ぶ新語・流行語大賞が発表された。4語が同時に選ばれたのは異例だそうだが、どの言葉も家庭や職場、飲み屋等で耳にしたことがあるだろう。このなかで小生がよく使ったのは、大手予備校講師の林修さんの決めゼリフ「今でしょ!」で、家人からの頼まれ事をいつまでも手を付けないときに、「いつやるの?」と言われ、つい「今でしょ!」と誘導尋問に乗ったものだ。

 この「今でしょ!」を1945年に言ったのはチャーリー・パーカーだというのをご存知だろうか。そんなバカな、と疑いの眼差しを向けられそうだが、パーカーのバイオグラフィーを1920年にカンザス・シティで生まれてから順に追っていくと、1945年に「Now's The Time」発表とある。ビ・バップの時代到来を意味する曲名だが、意訳すると「今でしょ!」だ。短いフレーズが繰り返されるリフが印象的なFのブルースでジャム・セッションに欠かせない。革命児パーカーらしさが顕著に現れた曲で、前年に発表されたガレスピー作の「チュニジアの夜」と並んでビ・バップを象徴する曲といっていいし、ジャズシーンがどんなに変わろうと演奏される曲でもある。

 パーカーを信奉するプレイヤーばかりか、アルト・サックスを手にした人なら一度は演奏する曲なので録音は多い。当然の如く女性バードと呼ばれたヴァイ・レッドも62年の「バード・コール」で取り上げているのだが、これが「じぇじぇじぇ」と驚く。ラス・フリーマンの趣味の良いピアノのイントロに導かれて女性らしい優しいアルトが出てくると思いきや、何と歌っているのだ。59年にエディ・ジェファーソンがこの曲に詞を付けて歌っていたが、それとは違うので即興で思いついたのだろう。さすがにワンコーラスでやめてアルトを吹いているが、ロイ・エアーズやカーメル・ジョーンズとのセッションは熱い。

 流行語大賞のなかに五輪招致のスピーチで注目を集めた「お・も・て・な・し」も選ばれていた。五輪といえば2020年東京オリンピック開催を仕切ろうとする人が、某医業グループから5千万円もの資金提供を受けていたという。本人は「個人的な借金だった」と釈明しているが、「倍返し」とは言わないまでも何の見返りも期待せずに大金を貸してくれる人がどこにいるだろうか。「お・も・て・な・し」を返すと「う・ら・も・あ・る」になる。
コメント (14)
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