デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ジャズ楽器としてのアコーディオン

2013-12-01 09:41:12 | Weblog
 今は廃刊になったスイングジャーナル誌で、毎年ジャズメン読者人気投票が行われていた。今頃発売される12月号で集計が発表されたと思う。海外と日本、さらにトランペットや、テナー・サックス、ピアノ、ドラム等、楽器別に投票されるものだ。順位からはこの1年間の活躍ぶりがみえるし、推しメン否、好きなジャズメンが上位にくると嬉しい。その楽器別の最後に「その他の楽器」という項目があった。

 何とも曖昧な基準だが、ミュージシャン数が少ない楽器が対象になる。年代で違うが、例えばオルガンのジミー・スミスや、オーネット・コールマンのヴァイオリン、ハーモニカのシールマンス、パーカッションのムトゥーメ等が選ばれていた。もし今この部門があるなら間違いなくランクインするのはアコーディオンとバンドネオンを弾きこなすフランス人のリシャール・ガリアーノだろう。バンドネオン奏者の巨匠として知られるアストル・ピアソラ自ら後継者に指名したほどのテクニックを持っており、シャルル・アズナブールをはじめ数多くのシャンソン歌手の伴奏を務めたことでシンガーの信頼も厚い。

 アコーディオンでジャズを演奏したのは古くは「Jazz Accordion」というタイトルのアルバムを作ったジョー・バジルや、甘めの演奏でファンも多いアート・バヴァン・ダムがいたが、本格的にジャズに取り組んだのはガリアーノがはじめてである。ゲイリー・バートンをはじめロン・カーター、またそれこそ「その他の楽器」の寺井尚子やエディ・ルイスと共演しておりジャズプレイヤーとの付き合いも幅広い。「ルビー・マイ・ディア」はラリー・グレナディアのベースとドラムのクラレンス・ペンと組んだトリオ編成ということもあり、型にはまらない自在なアドリブと、オーケストラのような多彩な音に出合える。

 来日公演でファンも多いガリアーノに影響されてこの楽器の魅力に触れた方もおられるはずだ。プロ仕様はゆうに100万円を超え、弾きこなすのが難しいといわれるので、そう簡単に手を出せる楽器ではないが、いつの日か「その他」でない独立したジャズ楽器になるかもしれない。NHKのど自慢や、スター誕生で横森良造さんのアコーディオンを聴いてこの楽器に目覚めた人は多いという。
コメント (14)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする