デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

スウィング時代のリーダーを育てたアイシャム・ジョーンズ

2015-10-11 09:05:59 | Weblog
 先週、月を話題にしたせいか、つい夜空を見上げる。月をテーマにした曲を思いつくだけ並べたあと、どうしても頭を巡るのは星だ。星となるとそれこそ曲は星の数ほどある。その中で一番輝いているのは「スターダスト」で、1965年にリーダース・ダイジェスト誌が、読者の最も好きな歌を調査したときトップだった曲だ。1927年に発表されてから現在まで録音が切れることがないので、バージョンはおそらく1000種を超えると思われる。

 では、最初にこの曲をヒットさせたのは誰だろう?作者のホーギー・カーマイケルが速いテンポで28年に録音しているが、これは話題にならない。その2年後に原曲の持ち味に注目し、ややテンポを落として大ヒットさせたのはアイシャム・ジョーンズ楽団だった。この曲をバラード・ナンバーとしてイメージさせたお手本と言っていい。アイシャムは1920年から30年代に活躍したバンドリーダーだが、演奏は聴いたことがなくても作曲者のクレジットで間違いなく目にしている。ダイナ・ワシントンの「Dinah Jams」、小川のマイルスと呼ばれている「The New Miles Davis Quintet」、ロリンズの「Way Out West」、ゲッツとバロンの「People Time」・・・

 そしてホレス・パーランのブルーノート初リーダー作「Movin' & Groovin'」。曲は「There Is No Greater Love」だ。サム・ジョーンズとアル・ヘアウッドという名手をバックをミディアム・テンポで閃きのあるフレーズを重ねている。パーランは5歳のときポリオにかかったため右手の自由が利かないが、それを克服して独自のスタイルを身に着けたピアニストだ。鍵盤で指のリハリビに励み、工夫して弾くことでグルーヴを生み出す。アルバムタイトルは努力の人、パーランに敬意を込めてライオンが付けたという。そのライオンの期待に応えるかのように僅か3か月後に「Us Three」という超弩級の名盤を残している。 

 アイシャムの「スターダスト」のアレンジをしたのは、先の録音でヴァイオリン奏者として参加しているヴィクター・ヤングだ。ハリウッドに移って映画音楽でヒットを飛ばす前のことである。また、この楽団には後に編曲家として大成するゴードン・ジェンキンスやベニー・グッドマンもいた。アイシャムは引退するとき将来有望なウディ・ハーマンにバンドごと譲っている。スウィング・ジャズの繁栄はアイシャムなしではありえない。
コメント (8)
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