デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

21世紀のテナーコンビ、アレン&ハミルトンを聴いてみよう

2016-03-13 08:57:01 | Weblog
 絶滅危惧種のテナーコンビを2週に亘って話題にしてきたが、どっこい21世紀にも生きていた。ハリー・アレンが尊敬するスコット・ハミルトンに呼びかけて結成したチームだ。2003年に名門ジャズクラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードに出演して大成功を収めたのを機に数枚のアルバムを作っている。バトルというより協調性重視のアル&ズートに近い。

 ハミルトンがコールマン・ホーキンスを彷彿させるスタイルでデビューしたのは右も左もフュージョンの1970年代中ごろだ。当時、ハミルトンは20代前半だったこともありそのオールドスタイルに違和感があったが、歳を重ねるにつれ音楽が付いてきた印象がある。一方、アレンが日本に紹介されたのは20世紀も終わりに近い1999年にジョン・ピザレリと組んだ日本タイトル「Dear Old Stockholm」だった。曲名からもスタイルからもスタン・ゲッツ、フレーズによりレスター、時々ズートという感じだ。そんな二人の組み合わせは程よくバランスが取れている。

 タイトルもジャケットもイカしている「Swing Brothers」は、今は廃刊になったスイングジャーナル誌のリーダーズ・リクエストによる作品だ。この類の企画はスタンダード・オン・パレードになりがちだが、ブローテナーの定番「Flying Home」が選ばれているのに感心した。ライオネル・ハンプトン楽団の十八番で、1942年にイリノイ・ジャケーをフューチャーしたバージョンは古典中の古典である。ここではともにペースを守りながらも次第に熱を帯びていく展開が面白い。この曲を吹くとどうしてもジャケーや後任のアーネット・コブを意識するようだ。

 このアルバムには日本盤だけのボーナストラックという形で「見上げてごらん夜の星を」が収められている。坂本九の大ヒット曲だ。さすがに軽くフェイクさせるだけでアドリブの発展はみられないが、いずみたくが作ったメロディーは各段に美しい。今やテナーコンビはかろうじて肉眼で見える6等星ほどに暗いが、ジャズの伝統が消えぬよう願うばかりである。
コメント (6)
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