デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

新主流派とはボビー・ハッチャーソンのヴァイヴ・スタイルをいう      

2016-09-11 09:18:19 | Weblog
 先週訃報をお伝えしたルディ・ヴァン・ゲルダーのスタジオで1966年に「Happenings」を録音したのは、8月15日に亡くなったボビー・ハッチャーソンだ。ライオネル・ハンプトン、ミルト・ジャクソンに次ぐヴァイヴ奏者の代表作であり新主流派の傑作でもある。日本でリリースされたのは翌年だったろうか。当時のブルーノート盤は直輸入盤で、それに帯と日本語のライナーノートを付けて東芝から発売されていた。

 田舎ゆえ入荷が遅かったがそれでもリアルタイムで聴いたレコードの1枚だ。まだジャズの聴きはじめで50年代のハードバップもそう多く聴いていない耳にもそれは斬新だった。それ以来全部ではないがハッチャーソンの新譜は出ると同時に聴いている。それだけに訃報は一つのジャズの時代、もっと言うなら自分の青春が失われたようで寂しい。足跡を追う如く聴いた1963年の初録音であるマクリーンの「One Step Beyond」、次いで64年のドルフィー「Out to Lunch」、アンドリュー・ヒル「Judgment」という作品群は、モーダルなヴァイヴがひときわ異彩を放っており、ジャズの方向性、またブルーノートの路線までをも示唆している。

 1970年代に入り新主流派ジャズそのものに陰りが見えたころフュージョン的な作品を発表していたが、80年代以降は多くのプレイヤーがそうであったようにストレートにスウィングするアルバムが多くなる。81年にコンテンポラリー・レーベルに吹き込んだ「Solo / Quartet」はタイトルそのままの内容で、A面はヴァイヴの他にマリンバやチャイムを使った多重録音、B面はマッコイ・タイナー、ハービー・ルイス、ビリー・ヒギンスというメンバーで「My Foolish Heart」に「Old Devil Moon」というスタンダードを演奏している。故郷での録音ということもあり古巣のブルーノートよりリラックスしているが高い音楽性は変わらない。

 最初に共演したマクリーンはセシル・テイラーがヴァイヴを叩いようなサウンドだったと絶賛していた。今聴き返しても新鮮なのはそこにある。サイド作を入れるとアルバム数はゆうに60枚を超えるが、新主流派のジャズ・ヴァイヴは生涯変わることはなかった。セシルと同じでスタイルを貫き通した信念のプレイヤーである。新主流派とはボビー・ハッチャーソンのスタイルを言うのかも知れない。享年75歳。次世代のヴァイヴ奏者といわれた人は今もこれからの世代にも名を遺す。

コメント (13)
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