デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ブルーノート盤に着物美人登場

2017-01-08 08:50:55 | Weblog
 山崎貴監督の映画「海賊とよばれた男」が話題になっている。VFXや主演の岡田准一の特殊メイクが素晴らしいという。そうと聞くと直ぐにでも観たいのだが、本屋大賞を受賞した百田尚樹の原作本を読んでいる最中だ。読んでから観るか、観てから読むか、そんなフレーズが頭をよぎる。出光興産が大企業にまで成長する過程を描いたもので、創業者の出光佐三をモデルにしている。

 出光から「sunrise」、「sunrise」から「The World Is Waiting for the Sunrise」か「Softly, as in a Morning Sunrise」と思ったのだが、ここはホレス・シルヴァーの「The Tokyo Blues」を取り出した。先に挙げた曲も新年に相応しいが、この着物のジャケットも正月らしい。録音は1962年7月だが、この歳の正月に初来日している。正月尽くしだ。日本の印象を音で表現したアルバムで、タイトルもジャケットも徹底して日本というのが嬉しい。向かって左側の美しい女性をご存知だろうか。佐三氏の娘、出光真子さんである。撮影された場所はニューヨークの日本庭園で、留学中にシルヴァーと知り合った真子さんに白羽の矢が立ったようだ。

 来日時によく耳にした言葉を曲名にしており、「Too Much Sake 」に始まり「Sayonara Blues」、タイトル曲「The Tokyo Blues」、「Cherry Blossom」、「Ah! So」で終わる。タイトルの背景はジャーナリストの川畑篤彦氏のライナーノーツを参照していただくとして曲調はこれぞファンキーというものばかりだ。来日時と同じメンバーの録音ということも手伝って、酒、サヨナラ、東京、桜、あっそうという日本人がいつも耳にしている言葉のイメージがそのままに曲になっている。シルヴァーから見た初めての日本の印象が日本のジャズリスナーと重なるのはジャズという共通語によるものだろう。

 ピーター・T・リーソンの著書に「海賊の経済学」(NTT出版)がある。海賊という例を用いてインセンティブをはじめプリンシパル・エージェント問題、ガバナンス問題、フリーライダー問題等々、経済学の概念を説いている。これらの問題解決の糸口をつかみ、大損をしても社員を見捨てることがなかった出光佐三は、映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のモデルになった寛容で慈悲深い海賊ジョン・ラカムに重なる。
コメント (15)
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