「最初は、どうしたら滑らかなフレーズが弾けるのか、それに苦労した。しばらくすると、そんなことに努力をしても無駄なことに気がついた。自分のスタイル、誰の真似でもないスタイル、それを身につけたい。それなら、逆に滑らかでないフレーズとアクセントで自分を表現しようと思った」 小川隆夫著「ブルーノートの真実」(三一書房)に人生哲学ともいえるインタビューの答えが載っている。
「うちはフリージャズしかかけないよ」とか、「ジャズヴォーカル・オンリーだから」という店は別にして、ジャズ喫茶世代なら通い始めて早いうちに出会うレコードがある。名盤と呼ばれるものは毎日のようにリクエストがあるからだ。この「Us Three」もその1枚で、たとえリクエストがなくてもかかる。大抵の店はオーディオ機器に力を入れているので、自慢のスピーカーを鳴らすためだ。まず背骨がピーンと伸びるような太いベースにやられる。そこにドラムが駆け足でやってくる。そして後頭部にガーンとくるピアノだ。ジャズ喫茶という閉鎖的な空間に緊張が走る瞬間だ。
そしてただでさえ暗い店を真っ暗にする黒い連打がボディを攻める。初めて聴いた人は必ずといってよいほどレコードプレイヤーを見る。見えない位置にあっても目で追う。もし見えたとしてもカートリッジの先端など見えるはずもないのだが、針飛びしているのではないかと確認したくなるのだ。頻繁にかかるレコードなので、程よく傷がついていて、プチ、バシ、とノイズが入る。うまいことにフレーズの繰り返しの部分にそれが入るものだから針飛びしていると勘違いするのだ。サラ回しや常連客はそんな初心者を通い始めの自分に重ねて温かい目で見ている。
同書にライオンの言葉があった。「ブルーノートには、同じようなタイプのホレス・シルヴァーやソニー・クラークがいたし、スリー・サウンズのジーン・ハリスもこのタイプだ。常識的に考えれば、この手のピアニストは必要なかった。でも、わたしはパーランのプレイが好きだから、レコードを作り続けた」と。2月23日にハンディを克服したピアニストが亡くなった。享年86歳。1960年に録音された名盤はジャズ喫茶がある限りかかるだろう。
「うちはフリージャズしかかけないよ」とか、「ジャズヴォーカル・オンリーだから」という店は別にして、ジャズ喫茶世代なら通い始めて早いうちに出会うレコードがある。名盤と呼ばれるものは毎日のようにリクエストがあるからだ。この「Us Three」もその1枚で、たとえリクエストがなくてもかかる。大抵の店はオーディオ機器に力を入れているので、自慢のスピーカーを鳴らすためだ。まず背骨がピーンと伸びるような太いベースにやられる。そこにドラムが駆け足でやってくる。そして後頭部にガーンとくるピアノだ。ジャズ喫茶という閉鎖的な空間に緊張が走る瞬間だ。
そしてただでさえ暗い店を真っ暗にする黒い連打がボディを攻める。初めて聴いた人は必ずといってよいほどレコードプレイヤーを見る。見えない位置にあっても目で追う。もし見えたとしてもカートリッジの先端など見えるはずもないのだが、針飛びしているのではないかと確認したくなるのだ。頻繁にかかるレコードなので、程よく傷がついていて、プチ、バシ、とノイズが入る。うまいことにフレーズの繰り返しの部分にそれが入るものだから針飛びしていると勘違いするのだ。サラ回しや常連客はそんな初心者を通い始めの自分に重ねて温かい目で見ている。
同書にライオンの言葉があった。「ブルーノートには、同じようなタイプのホレス・シルヴァーやソニー・クラークがいたし、スリー・サウンズのジーン・ハリスもこのタイプだ。常識的に考えれば、この手のピアニストは必要なかった。でも、わたしはパーランのプレイが好きだから、レコードを作り続けた」と。2月23日にハンディを克服したピアニストが亡くなった。享年86歳。1960年に録音された名盤はジャズ喫茶がある限りかかるだろう。