デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ジャズ喫茶「GROOVY」に飾られた3枚

2023-01-22 08:34:04 | Weblog
 札幌円山のジャズ喫茶「GROOVY」では、レコード棚の上部に月変わりで3枚のレコードジャケットが飾られる。月毎に共通したサムシングを並べたもので演奏内容ではなく、視覚に訴えるジャケットのデザインからマスターが厳選した3枚だ。常連客にとっては月初めに訪れたときの愉しみの一つだ。「これできたか」と唸ったり、「これがあったか」とニヤリとする。

 今年の1枚目はジョージ・ウォーリントンの「The Prestidigitator」だ。アトランティックの傍系レーベル「East-West」からリリースされたもので、J.R.モンテローズが一段と光る。注目すべきはズート・シムズやジェリー・マリガンと共演歴のあるジェリー・ロイドの参加だ。一聴トロンボーンかと思いきやバストランペットだ。低い音色で軽快に飛ばす。次にビヴァリー・ケニーのデッカ三部作の一番人気盤「Sings For Playboys」。エリス・ラーキンスとジョー・ベンジャミンのバックが可憐でハスキーな歌声を盛り立てる。必要以上の音を使わない歌伴の匠とはこれだろう。

 そして、ポール・スミスのタンパ盤「Fine, Sweet And Tasty」。オリジナルはスカイラーク・レーベルの10吋盤「Paul Smith Quartet」だが、タンパのオリジナル、レッドワックス盤も魅力がある。ルーシー・アン・ポークのバックで洒落たフレーズを刻んでいたトニー・リッツィに、トミー・ドーシーのトロンボーンを盛り立てたサム・シェフィッツのベース、レッキング・クルーのオリジナル・メンバーのアーヴ・コットラーのドラム。そして親分のピアノがいい。絶妙なタイミングで入れる一音、溢れる歌心、さり気ないフレーズ、エラ・フィッツジェラルドが選んだトップ伴奏者の妙技を聴ける。

 もうお分かりだろう。今年の干支に因んだ3枚である。オープンして25年になる「GROOVY」に通いだしてまだ1年足らずだが、同じ時代に同じ空気を吸い、ジャズの洗礼を浴びてきただけにマスターとは気が合う。それもそのはず、50年前、中野のジャズ喫茶「ジャズ・オーディオ」で小生が落とした不味いコーヒーを飲んだ人だ。50年経った今、マスターが淹れたコーヒーは各段に美味い。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする